プレリュード

プレリュード

2006年07月15日
XML
カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

7/15

昨夜は私のページをリンクしていただいています すららさん が所属する、関西フィルハーモニー管弦楽団の第186回定期演奏会を聴きに行ってきました。

プログラム

ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53 ヴァイオリン 大谷玲子

                 ー休憩ー



  ソプラノ 雑賀美可  バリトン 藤村匡人

                指揮 飯森泰次郎

午後7時開演の前にこの楽団の常任指揮者でこの演奏会のタクトを振る飯森泰次郎がマイク片手にステージに現れて、今夜のメインプログラムのオペラ「青ひげ公の城」についてプレトークが20分ほどありました。 これは非常にいい企画でした。 オペラと言えばイタリア・オペラ、モーツアルトのオペラなど人気オペラの数々が浮かび、聴衆もそこそこに作品には馴染みがあると思うのですが、ことバルトークの唯一のオペラ「青ひげ公の城」 となるとそれほどポピュラリテイーがなく、しかも歌らしい歌がなくて ほとんど「青ひげ公」と新妻との対話に近い形式でドラマが進むだけに、飯森のガイドは初めて聴く人にはとても参考になったと思います。

さて昨夜の演奏会ですが、オペラの前に演奏されたドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲。 「メロディー・メーカー」と呼ばれたドヴォルザークのスラブ的な美しくもノスタルジアいっぱいの旋律に、熱っぽい激しいリズムを駆使したこの曲を独奏者大谷玲子は見事に弾きこなして第1楽章から終楽章までたっぷりとヴァイオリン音楽の魅力を聴かせてくれました。 とても澄んだ美しい音色が残響2秒のホールを包む込むかのように響き渡るさまは圧巻でした。 じつに美しい音色を奏でる奏者でした。 

休憩を挟んでベラ・バルトークのオペラ「青ひげ公の城」。 

現代音楽最初の心理的オペラと言われるこの作品は、モーツアルトやイタリア・オペラのような「歌」を楽しめることを期待すると、まったくあてが外れてしまいます。  

「青ひげ」伝説としてヨーロッパでは知られているこの物語は、ペローの童話「マ・メール・ロワ」の中に含まれているのを、台本化されており男と女の互いに違う、それぞれの異性への思いや欲望などの、心の奥深い宿命的とも言えるな男女の出会いから別れにいたる心の深層を扱っていて、相手を傷つけたり、自身を傷つけたり、或いは二人して深い罪を背負ったりという構造的心理を鋭くえぐったドラマです。

心楽しく歌の世界を楽しめるオペラではないのです。

城にやってきた新妻ユディットが、大広間にある7つの扉を開けて暗い古城を明るくしたい公に言います。

第1の扉 「拷問部屋」
第2の扉 「武器の部屋」

第4の扉 「花園の部屋」
第5の扉 「公の領地の部屋」
第6の扉 「湖の部屋」
第7の扉 「3人の先妻の部屋」

これらの扉を次々と開けさせていくユディット。 それぞれの部屋には血が塗り込められています。 



こうした男女の心の深層をえぐった対話のようなユディットと青ひげ公の歌と、バルトークが多彩な管弦楽法を駆使して、光と影の心理ドラマが展開しますが、音楽は力強く、詩的にも響きますが、どこまでも青白い響きのままで私には突き刺さってくるような、そんなオペラ音楽です。

このオペラを聴いて、バルトークは男と女の何を語ろうとするのか? 各部屋の「血」は何を意味するのか? 問題は聴く人に投げかけられたままです。

この演奏会で素晴らしかったのは雑賀美可のユディットでした。 リリコ・ドラマティック・ソプラノとしての声量と澄んだ美しい声、それに難しい感情表現をスケール豊かに見事に歌いきっていました。 メゾソプラノとしても歌えるのではないかと思わせるほどの安定した音程の広さがあり、大柄な体は舞台映えのする魅力的なソプラノでした。 この演奏会の成功は雑賀美可の歌唱によるところが大であったように思います。

青白さのあるバルトークの音楽を時には詩的に、時には力いっぱい、しかもバルトークの代名詞のような「精緻な」響きでオーケストラを鳴らした飯森泰次郎は、やはりオペラでは非凡な力を発揮する指揮者だと感じました。

昨日の大阪は猛暑でした。 仕事のために着たくもない背広と長袖のワイシャツ、ネクタイという姿で会場に行き汗びっしょりでしたが、帰りの相変らず生暖かく蒸し暑い夜気も気にならないほど、2つのプログラムで心は満たされて家路に着きました。

このオペラの愛聴盤 ピエール・ブーレーズ指揮 シカゴ交響楽団 ラースロー・ボルガール(Br)、 ジェシー・ノーマン(S)

UCCG3449 1993年12月録音 7/15
(ドイツグラモフォン原盤 ユニヴァーサル・ミュージック UCCG3449 1993年12月録音)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日の音楽カレンダー

1857年 没  カール・ツェルニー(作曲家・ピアノ教師)
1933年 誕生 ジュリアン・ブリーム(ギター奏者)
1942年 初演 ヴィラ=ロボス 「ブラジル風のバッハ第4番」
1959年 没  エルネスト・ブロッホ(作曲家)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ともの『 今日の一花 』           ノカンゾウ


IMGP8474ノカンゾウ.jpg
撮影地 大阪府和泉市





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年07月15日 07時38分33秒
コメント(6) | コメントを書く
[クラシック音楽] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

とも4768

とも4768

お気に入りブログ

悲惨な連休。 New! 魔神8888さん

ファミレス通いは、… New! kororin912さん

スカイミュー μ ミューさん
クラシック音楽は素… 会長0804さん
のほほん オケイ6306さん

コメント新着

http://buycialisky.com/@ Re:ドニゼッティ 弦楽四重奏曲/オキザリス(08/31) cialis in der apotheke ohne rezeptcost …
http://viagravipsale.com/@ Re:ドニゼッティ 弦楽四重奏曲/オキザリス(08/31) interacoes medicamentosas viagra <a…
shoko@ Re:デュカス ピアノソナタ/初雪草(08/29) 初めまして。 デュカスのピアノソナタを聴…
ifJU8X Really enjoyed this blog article.Much thank@ ifJU8X Really enjoyed this blog article.Much thanks again. Great. ifJU8X Really enjoyed this blog article…
ONY72s I cannot thank you enough for the post. Wil@ ONY72s I cannot thank you enough for the post. Will read on... ONY72s I cannot thank you enough for th…

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: