プレリュード

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2007年09月23日
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カテゴリ: クラシック音楽
今日のクラシック音楽

ブラームス

私に誰かが「一番好きな音楽と作曲家は?」と問われると、ヨハネス・ブラームス(1833-1897)とすぐさま答えるかも知れないとても好きな音楽であり作曲家です。

彼の音楽を好きになったきっかけは中学3年生の時でした。 登校前の朝食では私はいつもラジオのNHK番組ー番組名は明確に記憶していませんがーで放送されるクラシック音楽を聴いていました。 ある日、私の心に飛び込んできたとてつもない大きな旋律に、朝食を摂るのも忘れて聴いていました。

こんな巨大な音楽を聴いたのはベートーベンの交響曲第9番以来でした。 ブラームスの交響曲第1番ハ短調の第1楽章の冒頭の音楽でした。 親から「遅れるよ!」と叱られながらも第1楽章だけを聴き終えて、あわてて家を飛び出して学校に向かいました。

以来この第1番全曲を聴きたいという願望で月日を過ごし、やっと高校1年生の時にモノラルLP盤(エドアルト・ヴァン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボー菅)を1500円で買って聴きこみました。 

そしてブラームスファンとなりました。 以来今日まで彼の音楽に傾倒したままで日を過ごしてきました。

ブラームスは38歳でウイーンに定住しています。 ウイーンの秋は落ち葉が舞い落ちて美しい風情をしっとりとした趣きで人を安らいだ気持ちにさせてくれる街です。 枯葉を踏みながら自然を愛したブラームスは散歩を楽しんでいたのでしょう。



ブラームスの曲の中で1曲だけ選べと言われると躊躇なく交響曲第4番を挙げます。 この曲はブラームス52歳(1885年)に完成していますが、この頃の彼には「孤独」がひしひしと忍び寄っており、ブラームス自身もそれを感じていたのでしょう。

ブラームスは生涯を通じて独身を貫き自分の家族を持たなかったので、その意味でも晩年は孤独であったろうと容易に想像できます。 この頃には押しも押されぬ「世界の大作曲家」としての地位を築いていましたが、自分を支えてくれる妻や子供もなく、それに加えて彼のまわりの人たちが他界していくのを見守るブラームスには「人生の秋」「人生のたそがれ」が、影のようにまとわりついていたのでしょう。

第1楽章冒頭の「ため息のモチーフ」と呼ばれるヴァイリンの旋律が如実にそれを物語っているように感じてなりません。 これこそがブラームスの「人生の秋」であり、孤独をしみじみ味わう諦観のような気がします。

1853年にブラームスはシューマン夫妻の自宅を戸を初めて叩き、シューマン家との交際がはじまりました。 この時から44年間にわたるシューマンの妻・クララ・シューマンへの憧憬が始まったのかもしれません。

今でもブラームス直筆の手紙が数多く残されており、クララへの愛がはっきりと書かれているそうです。 とりわけシューマンが精神に異常をきたしてライン河に身を投じた頃から(1854年)、献身的にクララを支えており、手紙の冒頭の「敬愛なるクララへ」から次第に「恋愛感情」に変わり、とうとう「愛するクララへ」となっています。

シューマンが亡くなって(1856年)からは7人の子供を抱えたクララを励まし、精神的な支えにもなっていたようですが、クララからはとうとうブラームスを受け入れる言葉を聞けなかったようです。 クララの日記にはこう記されています。

「子供たち、あなたがたの父シューマンははブラームスを愛し、尊敬していました。ブラームスは、悲しみを共に感じてくれる親友として、私たちの前に現れ、私の心を力のかぎり励ましてくれたのです。私は、彼の精神の新鮮さ、驚くべき才能高潔な魂を愛しています。ブラームスとの愛情は二つの魂の最も美しい調和なのです。 ‥‥愛する子供たちよ。この母の言葉を信じ、彼の友情を感謝の心で受けとめてほしいのです。 人々は、私たちの愛情を非難したり、話題にしたりしていますが、そんな嫉妬心に、決して耳を傾けたりしてはなりません。彼らには私たちを理解する心がないのですから」

しかし、ブラームスはクララの許を去っていきます。 それは作曲家としての自分の天命を果たそうとする責務のような想いからなのか、シューマンが亡くなって残された家族を引き受けるという現実に直面して、天職を危うくすることに危惧を感じたのか、シューマンの娘オイゲン・シューマンがこう書いています。

「ブラームスは無情にも、突然去って行きました。 果たさなくてはならない自分の“天職”と私の母に対する“愛情への献身”。 この両立は不可能であると、彼は悟っただろうと思う。 ── が、私たちのもとを離れるとき、彼は自分自身と激しく闘い、自責の念にかられたにちがいありません」と。

それが1856年10月、シューマンの死後3か月経った頃でした。

ブラームスが自ら「孤独への旅」を選んだのでしょう。



約1年後の1897年4月3日、ブラームスはようやく「孤独な旅」を終えてその生涯を閉じたのです。

私はこの交響曲第4番に込められたブラームスのメッセージは、クララと添い遂げられなかった彼の孤独と寂しさ、人生のたそがれを歌っているような気がしてなりません。 それも年を重ねるごとに感じ始めたことなのです。


愛聴盤

1.クルト・ザンテルリンク指揮 ベルリン交響楽団
10/25  Capriccioレーベル 10600
(カプリッチオ原盤 10600 1990年録音)

ザンテルリング

重厚で、どっしりと落着いた構えで、旋律を遅めのテンポでじっくりと歌わせ、弦楽器の響きが古色ががった、いくぶんくすんだような響きで、その上にまるでほどよくブレンドされたような管楽器が柔らかくかぶさり、ブラームス特有のロマンテイックな美しさを味わえる演奏・録音です。 私の一番好きな演奏です。

2.オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団

10/25 5627602
(EMI レーベル 562760 1957年録音)

クレンペラー

3.ジョン・バルビローリ指揮 ウイーンフィルハーモニー

10/25  HR 708222 Disky
(パレ原盤 EMIリマスター Diskyライセンス発売 HR708222)

バルビローリ

4.朝比奈 隆指揮 新日本フィルハーモニー

10/25
(フォンテック FOCD9206/8 2001年3月19日 サントリーホール ライブ)

朝比奈 隆

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今日の一花 」      ニラの花


ニラの花










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最終更新日  2007年09月23日 02時42分02秒
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