プレリュード

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2010年09月08日
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「名曲100選」 ベートーベン作曲 ピアノソナタ 第31番変イ長調 作品110

ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーベン(1770-1827)はピアノ・ソナタを32曲書き残しています。これら32曲のソナタを後世の人は「ピアノ曲の新約聖書」と呼ぶほどに、これらの32曲のピアノ音楽には、「楽しみ」から「威厳の確立」とも呼べる程に孤高の厳しさのにじみ出ている見事な音楽空間があります。

この第31番のソナタが作曲されましたのは1822年とありますから、彼の死の5年前で難聴は進み内臓疾患なども患っていた頃に書かれた作品です。 ベートーベンの作曲時期を3期(前期、中期、後期)に分けて論じられていますが、その意味では勿論この曲は晩年の作品であり、特に最後の30番、31番、32番は後期3大ソナタと呼ばれており、それまでのピアノソナタとは一線を画して論じられています。

32曲書かれたソナタのうち、この後期3大ソナタを聴きますとそれまでの作品とは明らかに作風が異なっています。それまでの音楽形式にとらわれず、最後のソナタ、第32番などは自由な形式で書かれていること、そうした形式・手法から生まれてきたベートーベン晩年の想いが、詩的な情感の豊かさにあふれています。

この第31番は美しい叙情性と終楽章に聴かれる深い精神的内面の吐露が交錯する清澄な音楽で、いっそう詩的な雰囲気・表情が漂っています。

自ら色々な病に冒されながら、ひたすら忍耐と立ち向かっていく気迫と悲哀の感情が、ベートーベン自らスコアに書いた「嘆きの歌」と呼ばれる終楽章のアダージョは、特に私は胸を打たれる思いで聴いてしまいます。

この楽章は「フーガ楽章」と呼ばれるベートーベンの独創的な形式で書かれており、長大な序奏のあとに、「嘆きの歌」と呼ばれる悲痛な想いのような旋律が奏されて、やがてフーガの部分となり、そのフーガのあと、もう一度「嘆きの歌」が戻ってきます。そして最後にフーガへと戻り、堂々とした音楽で曲を閉じています。

そうした音楽の終わらせ方にベートーベンが悲嘆にくれているのではなく、それに立ち向かっていく気迫のようなものを感じます。

辛い時、哀しい時など心が沈んでしまいそうな時に聴きますと、私は随分と励まされるピアノ音楽の名曲です。 

まさにベートーベンが登りつめた、第32番と共に孤高の境地の最高傑作だと思います。





(1) ウイルヘルム・バックハウス(ピアノ)

UCCD9163 1963年録音
(DECCA原盤 ユニヴァーサル・クラシック UCCD9163 1963年録音)


(2) ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)

UCCG2043 1987年録音
(グラモフォン原盤 ユニヴァーサル・クラシック UCCG2043 1987年ウイーン・ライブ)

両盤とも第30番、31番、32番の最後の3大ソナタが収録されています。






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最終更新日  2010年09月08日 00時47分44秒
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