プレリュード

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2010年10月13日
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「名曲100選」    リスト作曲 ピアノ・ソナタ ロ短調

フランツ・リスト(1811-1886)は数多くピアノ曲を書き残していますが、ピアノ・ソナタはこの1曲だけのようです。 その理由は定かでないようです。

リストを語る時には必ずといっていいほど名前が出てくる一人の女性、カロリーネ・フォン・ザイン・ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人です。 リストはこの女性と音楽史に残る大恋愛を繰り広げています。 彼女と出会った当時のリストは、ヨーロッパ中を演奏旅行をして華麗な技巧をを披露するピアニストでした。 その頃は作曲家としてでなくピアニスト、フランツ・リストだったようです。

侯爵夫人との恋愛が進むにつれて、ピアノを弾くことよりも作曲をしきりに勧めたのが、この侯爵夫人であったと言われており、二人の愛の城でリストはさかんにピアノ曲を書くようになっていったそうです。

もう一つは、ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ(1782-1840)の超絶技巧演奏を聴いて、自分もピアノ曲で誰も書いていない超絶技巧を要するピアノ曲を書こうと思い立ったとも言われています。 

今日リストが書き残している音楽の数々を聴くたびに、この二人に我々は大いに感謝しないといけないかも知れません。

こうして生まれ出る作品は、リスト自身のピアノ演奏で初演されていき、その華やかで技巧的な音楽がいっそうリストのピアノ演奏を引き立てたと言われています。

この「ロ短調」ソナタを、私が初めて聴いたのはもう40年前くらいの学生時代でした。 誰の演奏だったか覚えていないのですが、音楽が鳴り出すと私は「え、これがピアノ・ソナタ?」と首をかしげていました。 それまでのモーツアルト、ベートーベンのような古典派音楽、シューベルト、シューマン、ブラームス、ショパンなどのロマン派のピアノ音楽とは違うのです。

それまで聴いていたピアノ作品は美しい旋律に彩られており、古典派なら造型のしっかりとした様式の上に、流れるような美しい旋律が散りばめられており、ロマン派のピアノ音楽は自由な発想と共にロマンティックな情緒の華麗・流麗・哀歓・哀愁といった趣きが、どれも美しい旋律と共に楽しんでいたのです。

ところがこの「ロ短調」ソナタにはそうした過去のピアノ音楽の美しさを感じ取れなくて、大いに当惑して聴いていましたが、結局好きになれないピアノ・ソナタの最右翼となっていました。



社会人になって確かアラウの演奏だったと思いますが(LP盤)、改めて聴いてみてやっとこの曲の素晴らしさを理解できるようになったのです。

古典的なソナタの概念から相当かけ離れた曲であること。 この曲が「幻想風ソナタ」とか「幻想曲」とかのタイトルになっていれば、もっと聴き方も変わっていたかも知れません。 

普通のソナタのように旋律的な主題があって、それが展開されていって再現部に入ってコーダで終わるという形式からすれば、随分と複雑な音楽であることが聴き手を混乱させるのかも知れません。

断片的な主題の要素が多彩に変容していきます。 ゆっくりとした断片的な楽句、爆発するようなエネルギッシュな楽句、そして小刻みに刻まれる和音といった断片的な楽句によって、単一楽章という形式ながら、全編のなかで主題、展開部、再現部という様式によってこれらの楽句が統一されているのです。

一度この曲の美しさに触れてしまうと、これらの複雑さを意に介せずに聴けるようになり、キラキラ輝くクリスタルのような肌触りのリスト独特の硬質なピアノの音色を、多彩に変化していく様とピアノの技巧的な魅力を発見します。 今ではリストのピアノ音楽の中で一番好きな曲となっています。



愛聴盤 

(1) クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)

431780 1990年録音
(ドイツ・グラモフォン 431780 1990年録音 海外盤)

この演奏でも下に書きましたアルゲリッチと同じように、ツィマーマンの指の動きに圧倒されます。 明瞭に鳴らされる音、粒立ちの見事さ。 音が最強になっても決して粗さを感じさせない見事なコントロール。 ぺダリングの上手さにも驚きます。 実に透明な音となって響いているのです。 表情はダイナミック、スケールの大きな「ロ短調 ソナタ」です。

18歳でショパン・コンクールで優勝した15年後の33歳の演奏・録音です。


(2) マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

456703-2 1960年録音


燃焼度の高く強烈な個性を輝かせるアルゲリッチの演奏は他のピアニストの音の響きも違うようです。力強く、時には透明度の高い、粒立ちが最高に磨き抜かれ奔放なまでの自在さ、他の追随を許さない技巧に圧倒されます。


(3) マウリッツィオ ポリーニ(ピアノ)


456937-02 1988年録音
(グラモフォン原盤 456 937-2 1988年録音 海外盤)

「20世紀の偉大なピアニストたち」の1枚 現代最高のピアニストとして人気の高いマウリツィオ・ポリーニ。幅広いレパートリーで演奏や録音を行なうポリーニの名演。この曲を健康的な雰囲気に包んで、明るく爽やかに聴かせてくれます。またぞくっとするような冷たさ、肌触りを感じさせるところもあり、とても知的に響くところがあります。精緻に扱われたピアノが生み出す魅力を堪能。


(4) クラウディオ・アラウ(ピアノ)

456 709-2 1970年録音


これも「20世紀の偉大なピアニストたち」の1枚
アラウの特徴は,やはり明晰で豊潤な音色でしょう。左手と右手のバランスが絶妙に聴こえてきます。低音が明瞭に聴こえてくるので、音楽の構造が非常に安定感あるもの聴こえてきます。そのためロマン派の流動美が極めて出色の音色となっています。










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最終更新日  2010年10月13日 00時30分25秒
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