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March 14, 2006
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カテゴリ: 教授の読書日記

昨日のブログで「明日は我が家にビッグニュースあり」なんて予告しちゃいましたけど、残念ながらこのニュースは明日まで延期になってしまいました。すみません、この件については、またあ・し・た。

今日は我が愛車、プジョー306の1年点検の日。午前中にディーラーに入れたのですが、今日の代車はなんと同じプジョー306。ただし一つ前のモデル(N3)の3ドア車で、外装はフレンチブルー。これが実にいい色で、本当は私もこの色が欲しかったのですが、新世代(N5)になって無くなってしまったんですよねー。ですから、サスが少しくたびれてきて、ややドタバタする代車でしたけど、駐車場に止めてから思わず惚れ惚れと眺めてしまいましたよ。


さて、それはともかく、今日予定していたあるイベントが明日に流れてしまったので、昼食後はひたすら読書。で、数日前から読み始めた本を読み終わってしまいました。読んでいたのは、Cecilia Konchar Farr という人が書いた『Reading Oprah』という本です。

アメリカで超人気のTV司会者に、オプラ・ウィンフリーという黒人女性タレントがいまして、彼女が10年ほど前、自分の持つトーク番組の中に「ブック・クラブ」を設立し、月に一度ほどのペースで現代小説について一般読者やその本の著者と共に語り合う、という企画を始めたんですが、これがものすごく話題を呼び、視聴率は鰻登り。彼女がブック・クラブのための本を選定すると、途端にその本がミリオンセラーになる、という現象が生まれたんです。で、私が読んでいた本というのは、このオプラのブック・クラブの人気の秘訣を学術的に分析するというものなんですな。

で、著者のファー教授によりますと、あらゆるものを民主化してきたアメリカにおいてすら、「文学」の分野には依然として「権威」というのがあって、どの小説が優れているかの判断は、すべてその「権威」がやっているところがある、というんです。たとえば数年前、アメリカのメディアが世紀末にちなんで「20世紀で一番優れた英語小説は何か?」なんて話題を取り上げ、その結果ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』が1位になったとか、ならないとか、そんな話が日本にまで届きましたけれど、ことほど左様にアメリカでは「エライ人」が、「優れた小説のリスト」を作るというのが当たり前になっていて、一般の読者はそれに対して口を挟む場がなかった。

その一方で、アカデミズムとは関係なく、楽しみのために現代小説を読んでいる人も、アメリカにはそれなりの数いるわけです。しかし、彼ら・彼女らは、それを一人で読んでいるのであって、読み終わった感想などを話し合う場がなかった。なんとなれば、「権威」がそれらの現代小説を「語るに落ちる」と考えているから。それらは一律に「価値のないもの」とされてきたわけです。

で、人気TVホストのオプラ・ウィンフリーがやったのは、それまでばらばらの状態であった「一人で楽しみのために(価値がないと言われている)現代小説を読む、一般(中流階級)読者」に、彼らの好む本について語り合う場を与えたことである、というのが、ファー教授の主張なんですね。

オプラ・ウィンフリーのブック・クラブのモットーは、"getting America reading again"、すなわち「アメリカに読書習慣を取り戻そう」です。ここで重要なのは、もちろん、「取り戻す」という部分。そもそもアメリカは、建国当初から個々の国民が自由に本を読み、自由にものを考えることを許す気風があり、そういう自由な読書と思考の中から旧体制打破の世論が出てきて、それが独立革命の機運を作り出す元となったという歴史がある。しかし、先程言いましたように、そういう読書の自由がいつの間にか失われ、「読むべき本はエライ人が決める」という風になってきてしまった。オプラの「読書革命」は、まさにこの硬直化したエリート的な読書習慣を壊し、好きな本を読んで、それについて好きなように語り合うという、「元の形」に戻したのだ、というわけです。

しかし、このオプラのブック・クラブとその成功を称賛する人もいる反面、この企画に対する辛辣な批判というのも結構あって、そういう人たちに言わせると、「オプラは、読書という行為を大衆化し過ぎた」ということになる。オプラの薦める本は、いわばマクドナルド・ハンバーガーみたいなもので、それを多くのアメリカ人が好んで読むように仕向けることは、国民の趣味を落とすようなものだ、というわけ。何百万も売れるベストセラー小説に、ろくなものがあるわけがない、という一面の真理がここにはあります。



でも、ま、一般の素人読者(オプラが想定している「素人読者」というのは、昔、高校の国語の時間に課題で読まされて以来、小説なんか読んだことないという人、あるいは、大学時代には一時期熱心に小説について語り合ったことはあるが、その後結婚したり子育てがあったりして、なかなか本など読む暇が無くなってしまった主婦、などなんですが・・・) が再び本を手にするようになり、それを読んで互いに感想を言い合ったりするのは、いいことだと思うんですよ。少なくとも、悪いことであるはずがない。

それに、こういう素人読者に、いきなり『ユリシーズ』を突きつけて、「これは20世紀で一番優れた小説だから読みなさい」って言ったところで、あまり意味ないと思うんですよね。本なんて(特に小説なんて)、本来、楽しんで読むべきものなんだから、その人の身にあった小説を楽しめばいいと思うんです。その中で、たまに、少し骨のある小説を読むなどすれば、もっといい。

ま、私も大学で文学を教えるものとして、ついつい『白鯨』とか『緋文字』なんて日本人学生に読ませてしまうのですが、そういう古典中の古典って、アメリカ人だって読んでいないのだろうな、って考えることがあります。日本人だって、『源氏物語』を通読したことのある人が、今どのくらいいるかを考えれば、ねぇ・・・。『源氏物語』どころか、鴎外・漱石・谷崎だって怪しいもんだ。

そういう風に考えれば、日本におけるアメリカ文学研究だって、あまりにも古典にシフトし過ぎているなあ、という気がします。もちろん、上に書きましたように、万人に愛されるベストセラーに良書なし、ということはある程度真理なのであって、では大衆的に人気のある現代小説のベストセラーを学術的に論じる価値があるのか、と言われると答えに窮しますが、要はその辺のバランスなんですよね。

たとえば、経済学の分野で、アダム・スミスを論じるべきことは分かる。しかしそれと同時に、ビル・ゲイツやホリエモンについて考えることも必要だと思うわけですよ。で、だったらそれと同じことが、文学研究にも当てはまるべきではないか・・・。

ま、難しいんですけどね、時の試練を経ていない本、価値が定まっていない小説を論じるというのは。

それはともかく、ちょうど今、4月に行なわれるシンポジウムの下準備で、「一般読者と文学」の関係、ということを考えているものですから、文学の価値って誰が決めるのだろう、とか、文学を研究するという場合、どういうものを対象に据えるべきなのだろう、とか、そんなことを、この本を読みながらつらつら考えてさせられてしまった今日の午後だったのでした。





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Last updated  March 14, 2006 05:06:21 PM
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文学の価値  
そりゃ、決まっているじゃありませんか




 作者自身ですよ~ (March 15, 2006 03:07:43 AM)

Re:文学の価値(03/14)  
釈迦楽  さん
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yanvalou@ Re:『スペクテイター』44号、「ヒッピーの教科書」を読む(07/14) ヒッピーの語源ですが、「ヒップスター」…
釈迦楽@ Re[1]:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 津田正さんへ  ええ゛ーーーー。そうだ…
津田正@ Re:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 田山力哉さんですが、私もその時代に授業…
釈迦楽@ Re:明けましておめでとうございます。(01/01) ゆりんいたりあさんへ  やあ、先日は楽…
ゆりんいたりあ @ 明けましておめでとうございます。 釈迦楽さん、いつも楽しいブログ記事あり…

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