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March 20, 2006
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カテゴリ: 教授の読書日記

野球観戦にほとんど関心がないワタクシ。WBCと言われても、ついボクシングのことかと思ってしまいます。ですから、我が日本がこのWBCの決勝に進出したと聞いても、へぇ~ってなもんですなぁ・・・。

それにしても、「日本が負けた」というニュースばかり聞かされたような気がしていたので、てっきり日本チームは敗者復活戦で3位決定戦に進出するのかと思っていたら、そうではなくて、決勝進出なんですってね。一体どういうルールだと、そういうことになるのでしょうか。それに野球王国のアメリカが決勝には出ていないようですが、ほんとにアメリカ・チームは大リーグの一線級を投入したドリームチームで参加したのですか? 審判団も2流だったようですし、こんな大会に勝って「野球世界一だ!」なんて言えるんですかね・・・。イチロー選手だけは、なんだかやけに気合が入っていますが・・・。

ま、それはいいです。

さて、今日も私は一応、お勉強の予定。ここのところ割と真面目に原稿を書いていますが、シンポジウムまであと1ヶ月なので、尻に火がついた状態なんです。そういう時は仕事嫌いの私も、さすがに仕事するんですね。

でも、そこはそれ、机に向かっていれば原稿が必ず書けるというものでもなし、何にせよ息抜きは必要なんです・・・と、適当に理由をつけて、原稿とは関係ない本も読んでいたりするんですが、そんな中で昨日、今村楯夫さんという方の書かれた『ヘミングウェイの言葉』(新潮新書)を読み終わりました。今村さんというのは東京女子大の教授で、昔からヘミングウェイ一本槍。たしか日本ヘミングウェイ協会か何かの会長さんだったと思います。ヘミングウェイ関係の学術書・教養書も既に何冊かお書きになっていたはず。

ですから、この本は、いわばそんな今村さんが手練の主題について、気楽に書き綴ったエッセイといった風で、読む方としても、同じように気楽に読めばいいようなものなんですね。

で、本の構成としては、ヘミングウェイの作品や書簡などから名言・名セリフをとってきて、それを枕にして、というか、話のきっかけとして、今村さんがヘミングウェイのことをエッセイ風に語るという趣向になっています。基本的に見開き2ページで一話完結ですし、個々のエッセイには特に強い関連性もないので、読者としてはどのページから読んでも構わないわけ。時間の切れ端で読書をするのにはもってこいの本です。

もっともこの本は、ヘミングウェイのことをあまりよく知らない一般読者に彼の人柄や人生や作風を紹介する、という側面がありますので、その内容は割と常識的な路線に沿っていて、長年ヘミングウェイに親しんでいる方にとっては、さほど珍しい事実なり見解なりがこの本の中に見出せるというものでもありません。その意味では、エキサイティングな読書を期待してこの本を読むと、少しがっかりしてしまうかも知れない。

しかし、さすがにヘミングウェイは大したもので、今村さんが紹介している「ヘミングウェイの言葉」を読むと、たとえそれが既知のものであったとしても、改めて感動することが多いのも確か。



また小説の執筆について彼が言ったという「2Bの鉛筆を一日七本丸くできれば、その日は調子がいい日だ」なんていう言葉を読むと、ヘミングウェイだってそのぐらい仕事をしたら後は遊んだのだから、私ももう仕事は止めにしよう、という気にもなります。(いつも、そうじゃん!)

ちなみに、この本を通じて私が一番感銘を受けたヘミングウェイの言葉は、下に挙げる2つでした。

「神聖、栄光、犠牲というような言葉や空々しい言い回しには、いつも気恥ずかしさを覚える。聞くに耐えない言葉が多すぎるので、しまいにはただ地名だけが威厳のあるものになる。・・・栄光、名誉、勇気、神聖などという抽象語は、村の名か、道路番号、川の名、連帯番号、年月日など具体的なものと並べると不潔だ」

「ワインを直接ボトルからがぶ飲みしたことがあるかどうかはわからないが、あたかも女の子が生まれて初めて水着なしで泳ぐときのように、スコット(フィッツジェラルド)にはそれがすごく刺激的らしかった」

前者の「地名のように具体的な言葉だけが神聖だ」という言葉は、虚飾を排した文体で知られるヘミングウェイの感性そのものを言い表しているようですし、また後者に関しては、「女の子が初めて水着なしで泳ぐときのように」という表現が、ものすごくいいと思うんです。

やっぱり、ヘミングウェイってすごいよな、ということを改めて確認できるこの本、興味のある方にはおすすめ!です。

ところで、私、ヘミングウェイが生まれ育ったシカゴ郊外のオークパークという町を何度か訪れたことがあります。閑静な高級住宅街でね。アメリカを代表する建築家、フランク・ロイド・ライトのスタジオがあったところでもあって、ロイドやその弟子たちが作った名住宅が軒を連ねており、建築に関心のある方にとっても、すごく楽しめるところです。

で、そのオークパークに、小さな「ヘミングウェイ記念館」というのがありまして。ま、とりたてて何があるというわけでもないほんの小さな記念館でしたけど、そこで私が感銘を受けたのは、ヘミングウェイが高校生の時に書いたという「声明文」。そこには、こう書いてあったんです。

「私の生涯の目標は、うんと旅行し、うんと書くこと」。

高校生の時に立てたこの目標を、ヘミングウェイは十分に実行したんですなぁ・・・。

ヘミングウェイ。もちろん私が生まれる前に亡くなった作家ですが、何だか自分のおじさんででもあるかのような気にさせられる人ですね。



これこれ!

ヘミングウェイの言葉
ヘミングウェイの言葉





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Last updated  March 20, 2006 01:53:40 PM
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ヘミングウェイ  
星野遙  さん
長ーい英文読解から開放された頃に授業で出会った、ヘミングウェイの、簡潔で畳みかけるようなリズムのある文体は新鮮でした。「知ってるつもり?」で子供の頃、女装をさせられていたというエピソードを聞き、豪快な人生からは想像がつきにくかったですが、おそらく繊細な方だったんでしょうね!「パパ・ヘミングウェイ」はアマゾンのマーケットプレイスにありました!上下巻なんですね~ (March 21, 2006 02:51:02 AM)

Re:ヘミングウェイ(03/20)  
釈迦楽  さん
星野遙さん
そう言って下さる星野さんは相当に本が読める方でして、今どきの学生にヘミングウェイを読ませると、まったくチンプンカンプンだと言います。ほんとに人間の微妙な喜怒哀楽とか情緒、そういった心の綾が、若い人にはまったく分からないのだということが分かって、ぞっとすることがよくありますよ。 (March 21, 2006 10:28:06 PM)

「日はまた昇る」は  
cellozo  さん
自分の最も愛読する本のひとつです。何度も読み返しました。スペインのフィエスタのシーンや釣りの光景はとても瑞々しく、好きなページです。また、ジェイクの生き様がとても切なく感じます。
「パパ・ヘミングウェイ」読んでみたくなりました。 (March 21, 2006 10:55:29 PM)

Re:「日はまた昇る」は(03/20)  
釈迦楽  さん
cellozoさん
そうですね、『日はまた昇る』、とてもいい作品ですよね。私も長編の中では一番好きです。最初の長編ですから、「作家は処女作に向かって成熟する」の言葉通り、ヘミングウェイがその後到達していく様々な側面の萌芽がそこには沢山盛り込まれていると思います。例えばユダヤ人のコーンに対する奇妙なまでの皮肉な書き方とか、一体、なんでそこまで悪辣に書くのだろう、なんて不思議に思ったりもしますが、そういう不思議なところも含めて、見どころが多いです。『パパ・ヘミングウェイ』は、晩年、作品が書けなくなって、ノイローゼに陥っていくヘミングウェイの姿など、切ない本ですよ。ぜひ探して読んでみて下さい。 (March 22, 2006 12:35:36 AM)

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