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2022.10.10
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カテゴリ: 旅行


国産ワインといえば、昔は山梨・甲府界隈がメジャーブランドでしたが、気候変動による温暖化もあってか、近年はワイン用ぶどうの栽培適地も変わってきているようです。また、政府のいわゆる構造改革で、酒税法の特例措置によって指定された特区(たとえば亭主の住むつくば市も該当)では最低製造数量が緩和されたこと(つまり大手醸造メーカーでなくても参入できる)、さらには日本国内で栽培されたぶどうを100%使用して日本国内で醸造されたワインのみが「日本ワイン」と名乗れるように法律が整備されたことなどに後押しされて、日本の各地で新たなワイナリーが産声を上げています。この辺の事情は、2017年に出た「厳選日本ワイン&ワイナリーガイド」(鹿取 みゆき他、世界文化社)に詳しく紹介されています。



今回は近場ということで、まずは「千曲川ワインバレー」を代表する老舗、マンズワインの小諸ワイナリーを訪問。マンズワインの主力はやはり甲府の勝沼ワイナリーのようですが、小諸の方も1973年に設立ということで既に半世紀近い歴史を刻んでいます。残念ながらコロナ対策ということでワインセラーなどは見学できませんでしたが、ワイナリーに併設された「万酔園」という日本庭園やぶどう畑は散策できました。特に面白かったのがさまざまな醸造用ぶどうを試験栽培している畑で、これまで名前でしか知らなかったぶどうの実がなっている様子を観察できます。




さらに、ワイナリー内ではテイスティングもOKということで、メニューにあった赤ワイン6種類をすべて試すことに。(その結果、「小諸メルロー」が好大いに評を博し1本お買い上げとなりました。)




その後、「千曲川旅情の歌」で有名な明治の文豪・島崎藤村の記念館がある懐古園を訪問。記念館では藤村が若い頃に6年ほど教師として勤めた私塾「小諸義塾」の様子などを伝える資料を眺めて回りました。ここで亭主の目を引いたのは、塾講師の一人として名前が上がっていた鮫島晋(さめじましん)で、彼は東京帝大理学部の仏語物理学科に学んだ最初期の学生。以前に読んだ「物理学校―近代史のなかの理科学生」(馬場錬成著、中公新書ラクレ)で、東京理科大学の前身であった「物理学校」の創設者の一人として、その型破りな人生が紹介されていたことを思い出しました。(とはいえ、彼が物理学校を辞めていくつかの学校を転々とした先の一つがこの地だったという点には全く思い及ばず。この機会に改めて亭主の脳裏に刻まれることに。)




ちなみに、懐古園はかなりの規模を誇る小諸城址を中心にした庭園施設で、苔むした石垣群が戦国時代からの長い歴史を偲ばせます。「千曲川旅情の歌」は中学校の国語で丸暗記させられたことをよく覚えていますが、その冒頭「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子(いうし)悲しむ」の古城がどういうものだったのか、半世紀余りを経てようやく実感することができたという感じでした。




その後、冷たい雨が降る中、懐古園を後にし、少し山麓を登ったところにある菱野温泉に一泊。泉質は単純アルカリ泉で、湧出温度も低め(温泉には加温して使用)とのことでしたが、昔ながらの温泉宿の雰囲気を保ちつつも内装は適度にリニューアルされており、気持ちよい宿でした。

ところで、小諸まで来たところでネットで調べたところ、かの玉村豊男氏が開いたヴィラデストワイナリーが近所(東御市)にあることが判明。翌日さっそく訪問することに。

亭主が玉村豊男氏のことを知ったのはちょうど大学初年のころで、出たばかりのエッセー「パリ・旅の雑学ノート」(1977)を読んでヨーロッパ旅行に憧れたことを思い出します。その後も軽めの随筆で一世を風靡しますが、いつの間にか軽井沢、さらには東部町(現在の東御市)へと移り住み(1990年代初め)、そこでワイン醸造をめざしてぶどう畑を始めたといった消息を何かで読んで以来、随分長い間ご無沙汰していました。

訪ねてみると、ヴィラデストは大いに繁盛しているようで、いまや2万坪という広大なぶどう畑を有し、自家栽培のぶどうのみを用いたワインを醸造・販売しています。




ここでもテイスティングができるということで、早速カフェレストランに陣取って3種類のオリジナルワイン、およびグラッパを試飲。ここでもやはりメルローが人気を博しましたが、もう一つ好評だったのがピノ・グリを用いた白ワイン。いずれにしても、外国産のブランドワインと十分に渡り合える感じで、大いに感銘を受けました。




最後に、ネット上で見つけた彼のエッセー(家庭画報.comに掲載、2022/08/09)から引用。
小さい頃から、将来は何になりたいか、考えたことのない子供でした。大人になってからは、とりあえず今の状況をうまく切り抜ける、その過程を楽しむのが人生だろう、と思うようになりました。
 人は、自分から望ましい状況をつくり出すことはできません。水の流れに身を任せ、目の前に木が流れてきたらつかまえる。行き先は流木に訊かなければ分からないが、その木を選んだのは自分の決断です。
(中略)
 過去に達成したことには興味がなく、遠い未来にも関心はない。ただ、今日は一日よく働いた、残った仕事は明日にしよう、と言って目の前の食事とワインを楽しむ時間が幸せです。
 これは農業で学んだことですが、精一杯やってもやるべき仕事が明日に残る、というのが大事です。そうやって、日々の暮らしは続いていく。
 私は毎晩描きかけの絵のことを考えながらベッドに入りますが、もしそのまま目が覚めなければ、その日の夕食が最後の晩餐になる……だから私たち3人の老人は、「毎日が最後の晩餐だね」と言って笑いながら食卓を囲むのです。
元ネタはこちら








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最終更新日  2022.10.10 23:15:41
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