(つづき)
〇和田道庵宅玄関前・外
新しく立て直された建物の門前で沖田が佇んでいる。
梓が道具を抱えて背後に近づく。
梓「何をぼんやりしておられるの沖田さん。私が刺客なら殺されていますよ」
沖田「刺客なら殺気でわかります」
梓「それにしてもご無沙汰でしたね。体は大丈夫なのですか」
沖田「薬はちゃんと飲んでおります」
梓「山崎さんがいつも薬をとりにいらっしゃって、手伝ってくれるので助かります」
沖田「山崎もいろんなことを学べると喜んでいます。道庵先生いらっしゃいますか」
梓「いますが、今日は私に診させてください」
沖田「私は道庵先生の患者ですから」
沖田が当惑した様子。
梓「これでも私は長崎で沖田さんの病気の治療を学んできたのですよ」
玄関から道庵が出てくる。
和田「おい、梓、そんなところで沖田さんをいじめていないで上がってもらいなさい」
〇道庵の部屋・中
上半身裸の沖田に梓が聴診器を当てている。
梓「外見は立派ですけど、中はかなり弱っていますね。この肺でよく剣術の稽古など しておられますね」
沖田「よくなっておりませんか」
梓「貴方の肺はひびの入ったお茶碗のようなものです。大事にそっと使えば割れないま ま保てるし寿命はのびるのです」
沖田「私の仕事は京都の治安を守ることです。自分の体を腫物を扱うようにできません」
梓「では、新選組をおやめになったら。今のままではひびの入った茶碗を金づちで叩く ような生活をしておいでですよ」
梓が熱心に言う。
沖田「手厳しいですね」
梓の剣幕に沖田が少しわらう。
梓「笑い事ではありません。ご自分の体のことですよ。真剣に考えてください」
梓が沖田をみる目から涙が溢れ出る。
沖田が戸惑った顔で梓をみる。
(つづく)
幕末・女医と剣士(3) 2017.07.17
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