昨日から、体験温度が高い。
昨日の札幌市は、30度まで上がった。
今日は、さほど気温は上昇していないのに、やっぱり暑かった。
千葉のミュージシャンの宮野さんによると、体感温度は湿度と関係が深いんだと、Skypeの画面の向こう側で述べていた。
ムシムシとして、たしかに空気に水っ気が多いな、と思いながら、円山裏参道を歩いていた。
手伝いのAが、今度四歳になる弟の手を牽いて、空気中を泳いでマルヤマクラスの方向に平泳ぎのフォームで向かっていた。
俺は驚いた。
試しに上空に向かってイヌカキをしてみると、おれも泳げた。
『こりゃ、楽だ』
狸小路のヨガの道場に、向かった。
若い友人のヨガのか◯る先生から頼まれていたので、イヌカキしながら、すいすいと林立するビルの上空を泳いで、狸小路2丁目のヨガメデケーションアカデミー札幌の上空にたどり着いたら。
おれは透明なアーケードの板の脇の隙間から、工夫して、地面までもぐって、一階の扉を開けた。
振り替えると狸小路の通路を中国人なども、大きな荷物を抱えながら、グッピーの群れが移動するように、流れていく。
道場にはいると、や◯先生が受付していた。天井に足をつけて、逆さまの姿勢で、受付カードを受け取ってくれた。
教室にはいった。
デビュー後二回目の講義だと聞いていた美人のゆ◯先生が、ヨガマッドから、1メートルも浮遊しながら、座禅の姿勢でまっていた。
ゆ◯先生は、前から、
『綺麗な人だな』
と思っていた。
ヨガのポーズをとりはじめたら、いっそう輝いて見えた。狸小路から入ってくると光が逆光となり、しかもこの湿度の影響か、ゆ◯先生の背後に光の輪ができていた。女神かと思ってしまい、緊張した。
ゆ◯先生に見とれてるうちに、次はり◯先生のベーシックヨガの時間になった。
そこに、ここの指導者の村◯良◯先生が、泳ぎながら、入ってきた。いったん天井を蹴ってクルッと、回り、壁を押した反動でおれの側に泳いできて、
「松尾さん、肩の調子はどうですか」
と、言った。
「ウィルス性胃腸炎で痛い側の肩を下にして寝込んでいたせいか、悪化してしまいました」
すると、良◯先生は、やにわにおれの胸をグリグリと揉み始めた。
ビックリした。
イエス・キリストが泳ぎながらやって来て、霊力で治してくれたように思えた。
二階の窓の外を泳いで移動している人々も、何ごとかとこちらを見ている。
そして日付は変わり日曜日。
おれは柔術の大会の応援に出かけた。
おれはかなりの方向音痴なのだが、裏参道からいったん上空に50メートルくらい、ドッコラドッコラとバタ足で浮上すると、遠くに中島公園が見えてきた。
方向が分かったから、また下降して、ビルの壁を蹴りながら泳ぐと、あっという間にススキノ上空。
中島大会センター庭の一番高い杉の枝をつかみ、幹を蹴って玄関に流れていった。
廊下を泳ぎながら、色々な顔見知りに挨拶し格技室にはいった。
琴似のバーのマスターのユーキさんと美人の俺の友達のヒデミちゃんもきていた。誘っておいたから。
ユーキさんは身長が190センチもあるから、格技室を泳いで廊下から出入りする度に、他の人に手足があたり、平泳ぎの片手を時折アタマに当てて、詫びながら浮遊していた。時折、ハゲ隠しの帽子が外れるので焦ってもがきながら、キャッチしていた。
試合している人々もいつもと勝手が違う様子である。
なにせこの湿度であるから、戦いも当然、空中になる。
審判の良◯先生も、くるくると浮遊しながら、、
「はじめ」
のポーズ。
試合が全て終わった。
俺は試合もそっちのけで、ヒデミちゃんと話していた。色白で美形。いつもよりいっそう綺麗に見えたのは、たぶん、この暑さのせいばかりでもなかったろう。
帰り、4プラのゴリさんの店にいった。
来月、クラブのリビエラでまたファッションショーの出演を頼まれているから、色んな夏物を見て、研究していた。
来月くらいにはもう、このも落ち着くことだろう。
地面を歩く。
人間は二足歩行に限ると、しばらく泳いでみて実感できた。
北海道の短い夏が終わる。