読んだり飲んだり走ったり

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2017年12月19日
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テーマ: 闘病日記(3857)
先日、「退院オリエンテーション」というものがありました。
退院が秒読み段階に入ったというわけでは必ずしもなく、退院後の生活はかなり大変だから、早めに準備するなりしてね、という意図のようです。

退院後 あれダメこれダメ 注意せよ さもなきゃ 苦労が 水泡に帰す

病院が作成した小冊子に基づいて、約二時間。細かな点にまで注意が及びますが、とりわけ食べ物に関してはグレーゾーンが広く、苦労することになりそうです。

そうした問題意識を得られただけでも十二分に意義のある時間だったと思いますが、実はちょっとした不満も感じていました。

提示されたのは、早い話、移植を受けた身体の「取説」であり、小冊子はまさにそれです。
マニュアルとして役に立ちそうですが、しかし、それだけでいいのか。

禁止事項 よくよく読めば 見えてくる 丁寧な暮らしを 心がけよと

例えばこの「丁寧な暮らしを心がける」こと。これはいわば「心得」であり「理念」みたいなものですよね。そうしたものの提示が欠けていたのではないか、と。



改めて「身体」とは何か。かつて「身体論」が広く議論されていた季節がありましたが、ここでは極く単純に。

人間が「心」と「身体」で構成されているとするなら、「身体」は「心」を体現化し、その思いを実現するための道具のような存在と言えるでしょう。
「心」を目標、欲望、いろいろ言いかえてみればわかりやすいと思います。100mを9秒台で走るために必要なのは、それを実現する道具としての身体の、徹底したトレーニングです(もちろんメンタル面も大事ですが、今その問題は省略します)。あそこにあるものを取りたいと思ったとき、動かすのは身体です。また身体のありようそのものが自己目的化した例(身体を、自分の欲望に合わせて加工可能なものとして捉えた例)として「ダイエット」「アンチエイジング」などが挙げられるでしょう。

道具だからこそ、刺激を与え、鍛えることができる。酷使することができる。無理強いをすることができる。

「がん」は、もしかしたらそうした事の積み重ねの中で、こんな生活、もう耐えられないと言い出した細胞が、どんどん前後の見境を失い、破壊能力だけを研ぎ澄ませ、増殖を始めるようになったものなのかもしれません(あくまでも文系人間の粗末なイメージです)。

だとしたら、その「身体」とのつきあい方を本質的に変えることを促す出来事として、「がん」はあるべきではないか、と考えました。

身体をば 使って生きるわけじゃなく 身体とともに 生きていくのだ
身体とは 生きるための 道具じゃない 唯一無二の 最良のパートナー

「身体」とは自分の欲望を実現するための道具ではなく、「自分」を構成する物理的条件であり、かつ、一生涯つきあい続けるパートナーであると捉え直すこと。

そうした意識を持てれば、自ずと身体との対話が始まります。身体があげる声に耳を傾け、欲望をコントロールできるようにもなるはずです。

もちろんこれは理想にすぎませんが、とりわけ移植後の身体については、そうしたイメージをもって接することが重要なのではないかと思います。



もちろん、目標実現のための道具として身体を捉えることを止めろというつもりはありません。それは欲望を捨てよという主張につながり、その先はたぶん宗教になりそうです。
そうではなく、パートナーとしての身体という捉え方を、ごくたまにでいいから、やってみたらどうだろう、ということです。
退院がいつになるかはわかりませんが、少なくとも私は、そうしたことを心がけていきたいと思っています(うまくいくかどうかはわかりませんが)。

なお、上に述べたような感想を看護師さんの一人に伝えたところ、看護師サイドでも問題意識として持っているという答えが返ってきました。この病院を選んでよかったと思ったことはいうまでもありません。

と共に、その流れで、びっくりするような現状を教えてもらいました。こうした、移植を受けた患者にとってはとても大切なレクチャーの機会を設けていない病院もあるとのこと。禁止事項や注意事項を列挙した紙一枚でもいいから、絶対に必要だと思うのですが、そうしたものも、ない。数日前に記した「病院間格差」は、例えばこのような形でも存在しているようです。



実話に基づく映像化ですが、最初のシーンから名品の予感が漂います。そして、その予感は最後まで裏切られませんでした。テーマは重いですが、映画そのものに重苦しさはありません。いい映画を見せてもらいました。

明日もまたいい一日でありますように。





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最終更新日  2017年12月19日 20時48分59秒
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