August 28, 2009
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カテゴリ: クラシック音楽
会場の長野県松本文化会館は松本市のはずれ、浅間温泉の入り口にある。シューボックス型のホールで音響は素晴らしい。二階席中央最前列がベストだが、ほかの場所も大きく劣るということはない。一階の二階席の庇の下というのはたいてい無惨な音がするものだが、このホールはいい音がきちんと奥まで届く。

夕べは中心部にある小澤征爾行きつけという蕎麦屋で夕食をとった。松本二日目のきょうは浅間温泉に入り、昼寝のあと夜のコンサートというプラン。

この浅間温泉がひどかった。加水こそしていないものの、加温、循環濾過、殺菌の三重苦。ディスクロージャーがきちんとしているのは救いだが、もしかするとドイツ人とよく似たメンタリティを持つ長野県民は、それがよいことだと思ってやっているフシがある。こんにち、ホンモノの温泉に入るのは名曲の名演に接するのに比べて何倍も困難だ。

80分間、休みなく続く決してわかりやすいとは言えない音楽を集中して聴くには体力が必要。昼寝とカフェイン入り飲料を欠かすことはできない。

そうして万全の態勢で臨んだコンサートは、前日とは打って変わって素晴らしいものだった。

前日は少し萎縮したような感じがのこっていた小澤征爾の指揮が、まるで青年指揮者のように天衣無縫になっていた。そういうことはオーケストラの音にも出るので、すぐわかるものである。冒頭の陰鬱な弦楽のパッセージを聴いたとたん「これはすごいことが起きる」と思ったが、その通りになった。

「怒りの日」の爆発、「リベラ・メ」の息の長い高揚など、いま思い出しても鳥肌の立つ瞬間が多々あった。基本的には細部までよく磨かれ、整理整頓の行き届いたバランスのよいビューティフルな「戦争レクイエム」ではあるのだが、ちょっとしたアクセント、やりすぎではないクレッシェンド、そういうものの積み重ねが、美しさの奥からこの曲の深いメッセージをえぐり出し聴き手の内臓に突きつけてくる。

小澤征爾も神ではない。きのうの演奏は一時の不調だったのだ。

やってくれた。演奏もほとんど録音のような完璧さでミスらしいミスもなかった。音楽に没頭でき、ブリテンのメッセージに浸ることのできた80分。ブラボーの大爆発と長い拍手に、いったん退場したオーケストラがステージに呼び戻されるほど会場は興奮のるつぼと化した。





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最終更新日  September 2, 2009 09:30:31 AM
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