October 17, 2009
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カテゴリ: クラシック音楽
メンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」が始まった瞬間、なんと美しい響きだろうと思った。

音程のぴったり合った、オーケストラが奏でる弱音のハーモニーというのは本来美しいものだが、札響のそれは特別に感じた。LINNのスピーカーの音のように冷涼で、清潔で混じり気がない。純粋だが、蒸留水のような味気なさではなく、湧水や伏流水のようなみずみずしさがある。

一瞬で、メンデルゾーンの、さして傑作とはいえない曲の、しかし敬虔な世界に引き込まれる。

今年87歳のゲルハルト・ボッセが指揮すると、不思議とオーケストラの音程がよくなる。音程が整うと、響きに芯ができ、音が立ってくる。

続くハイドンの交響曲第101番「時計」も、颯爽としたテンポと軽快なリズムが特筆される、随所から流れ出す歌に満ちた快演。メーンのベートーヴェン「交響曲第7番」でもそうだったが、楽章間にほとんど休みをとらず、全体の統一感を意識した演奏だった。

そのベートーヴェン「交響曲第7番」は、最も演奏頻度の高い人気曲。札幌でもすでに数十回は演奏されていると思うが、最近では1989年4月の山田一雄指揮札響、1990年7月のバーンスタイン指揮ロンドン交響楽団による演奏が記憶に残っている。

しかし、今回の演奏は、それらの演奏をしのぐ名演。何より適切なテンポ、大向こうの受けを狙わない誠実な表現で等身大のベートーヴェンが描かれていく。ここでもリズムの軽快さとオーケストラの音程のよさが特筆大書される。

早めのテンポなのに決して音楽が走らず、みずみずしさだけが浮き彫りになるさまを見るのは、心が浮き立つような、かけがえのない体験だった。

ひとつだけ不満だったのは、特にフィナーレでティンパニがおとなしかったこと。この曲では「ティンパニ協奏曲」のようにティンパニを強調した演奏が好きなためだが、ゲヴァントハウス管弦楽団の元コンサートマスターの音楽はそうした耳に残る刺激を避けていた。



あと何回、ボッセのベートーヴェンを聴くことができるだろうか。来シーズンの札響定期に登場予定がないのは残念だが、世界的にみても現在聴くことのできる最高のベートーヴェンのひとつだったことは間違いないと思えるコンサートだったし札響の底力に驚いた。





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最終更新日  October 25, 2009 01:00:20 PM
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