August 4, 2012
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カテゴリ: 映画
ハリウッド映画の多く、それもアメリカ以外を舞台にした映画は、公開後何年かたつと急速に古びてしまう。というか軽薄に感じられるようになる。その原因のひとつはみな英語をしゃべるからだ。

第一次大戦(ヨーロッパ大戦)を舞台にしたこの映画は、イギリス軍とドイツ軍がフランスで戦う話だが、やはりみな英語をしゃべる。映画自体が新鮮なうちはさほど気にならないのだが、だんだん不自然に感じられてくるものだ。表現の商業主義への屈服と非難することは簡単だが、それはともかく、この映画はどうだろうか。

悪口から始めたが、さすがスピルバーグと感嘆させられる部分も多い映画だった。戦場を舞台に、一頭の馬と青年を主人公にした映画を作れと命じられてこれだけの映画を作ることのできる人物は世界を見渡してもいないにちがいない。

第一次大戦の時代、戦車はまだ少なく、戦争は主に馬を使って行われていた。主人公の青年が育てた名馬も戦地に連れていかれて数奇な運命をたどる。青年も愛馬との再会を夢見て軍隊に入る。

馬は荷物をひき、大砲をひき、鉄条網が巻きついて倒れる。戦火の中を駆け抜けていくこの馬のシーンが何と言っても見事で、馬をこれだけダイナミックに描いた映画はほかにないだろうと思う。

戦争の非情さもよく描かれている。一方、このころの戦争にはまだあった敵同士の「交歓」も描かれる。この馬を媒介としての交歓なのだが、苛烈な戦争の中にも残る人間性にスポットをあてた点は高く評価されていいし、そう来るかとわかっていても感動させられる。

ひとつ、面白い発見をした。あこぎな地主など、憎まれ役に限ってタバコを吸う人間なのだ。昔の映画とは逆だが、タバコに対して厳しい現在のアメリカ社会の価値観を意識的にか無意識にか、たぶん意識的だと思うが反映している。こうして、タバコを吸う人間にろくな人間はいないのだという刷り込みを行っていくのだろう。

この「奇跡の馬」は主人公の青年と奇跡の再会を果たし、物語はハッピーエンドで終わる。そうだろうと予測できる流れだが、それでもやはり感動させるあたり、さすがの手腕だ。

涙腺がゆるいらしい隣席の年配女性など、3分の2あたりからはずっと泣きながら観ていた。



こういう映画を観て、「いい映画だった」で終わるやつはバカでしかない。3・11以後の双葉町や浪江町の現実、原爆の一種でしかない原発によって生存環境を奪われた人や動物を連想できない人間など、馬に蹴られて死んでしまえ。





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最終更新日  August 9, 2012 01:32:16 AM
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