October 28, 2013
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カテゴリ: 映画
Viva!イタリア特集上映の2作目。「もうひとつの世界」にもましてすばらしい映画だった。魂の映画であり、この映画を観る前と後では世界がちがって見える。

映画には「鑑賞」すべき映画と「体験」すべき映画がある。前者の方が圧倒的に多いので、映画を「体験」できる人は少ない。タルコフスキー映画のように「体験」すべき映画を「鑑賞」してしまう人のなんと多いことか。

アルキブージ監督の2009年作品であるこの映画も、主人公の男性のうちひとりの不幸な末路に同情したり、登場人物のキャラクターに快・不快を感じたり共感したりとふつうに「鑑賞」してしまう人が圧倒的に多数だろう。

映画が終わったとき、あちこちから特に女性のすすり泣きがきこえたが、「鑑賞」してしまうとそういう結果になる。

「もうひとつの世界」は見習い修道女とクリーニング店主の友情を描いたものだが、この映画は二人の男の友情を描く。

ストーリーは「最高の人生の見つけ方」に似ている。

心筋梗塞で同じ日に入院し隣り合わせのベッドになったのは独身貴族の脚本家とやり手の自動車修理工場経営者。世代も環境もちがうのになぜかウマが合い、スランプにおちいった脚本家は彼の家をたずね迎え入れた彼の家族との共同生活が始まっていく。

この脚本家が陽性かつ知的なキャラクターで、容姿容貌はさえないのに、出会う人たちの心を開き、いい影響を与えていく。この成功した、しかし孤独な脚本家が繰り出していく「言葉の力」にうならされているうち、物語は予想された悲しい結末にいたる。

わたしは、この映画で「泣く」ことはできなかった。働き盛りの、子どもと妊婦の妻のいる男の死は重たく辛いが、しょせん映画なのだ。それに、こんな気のきいたセリフを散りばめた作品の監督が、メロドラマを作るとも思えない。



同じ景色を、この映画を観る前に見ていた。そのときは、今年の紅葉は平年よりきれいだとか、ピークまであと3日くらいだとかといった月並みな感想しか持たなかった。言ってみれば「左脳優位」の状態で風景を見ていた。

しかしこの映画を観たあと同じ景色を見ると、すべてがちがって見えたのだ。いまこの瞬間、生きてここにあることのかけがえのなさ、すばらしさを感じて感動が電流のように全身に走ったのだった。

これがこの映画の力であり、優れた芸術作品だけがもつ力である。

この映画を「鑑賞」してはいけない。「体験」しなければならない。そうしないとこの作品のほんとうのすごさはわからない。

人間の魂を刷新する映画を10本あげろと言われたら、必ずその中に入る。

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最終更新日  October 30, 2013 10:29:18 PM
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