June 27, 2014
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カテゴリ: 映画
ジャック・タチ映画祭の4作目。1974年、タチ66歳のときの作品で最後の長編(テレビ用)という。「プレイタイム」の失敗で破産したタチの事情を知っても知らなくても、どことなくチャップリンの「ライムライト」に通じるペーソスを感じる人はいるかもしれない。

ユロ伯父さんシリーズとは設定がまったくちがう。サーカス団の団長でサーカスの司会をつとめ、自分でも芸をする。こんなによくしゃべるタチは珍しい。

ドキュメンタリーかと思ってしまう作りがユニークだ。劇場の建物をうつし、最後もまたこの劇場をうつして終わる。何か素敵でわくわくするようなことが起こる場所・・それが劇場であり人生もまたそうあるべきだとタチは考えていたのかもしれない、そう思わせるオープニングでありクロージングであり、この時間が終わってほしくない、永遠に続いてほしいと思った子どものころの気持ちを思いだした。

それは、土曜の夜のテレビ番組だったり、花火大会だったり、クリスマスやお正月だったりした。家族で行った温泉旅行の帰りの写真がある。ふてくされて仏頂面をしているのは、この楽しい時間の終わりがたまらなく苦痛だったせいだが、エンターテイメント要素の大きいイヴェントを楽しんだあとには、この時間が続いてほしいと切に願ったものだった。

劇場の中ではサーカス団が舞台装置を作ったり描いたりしている。しかしその中にもタチ一流のギャグがあったりするので、観客も含めてこれはすべて綿密な計算で作られた劇映画だということがわかる。しかしドキュメンタリーかとか劇映画かとか、そんなことは些末に思えるほど。タチの世界に最も入りやすく万人が楽しめる一本だろう。

66歳のジャック・タチのパントマイム芸の見事さには舌を巻く。サッカーのゴールキーパーやボクサーなどスポーツものが多いが、舞台袖で仲間内の余興として見せる交通警官の形態模写も抱腹絶倒のおもしろさ。

こういう一流の芸を見ると、日本の芸人がいかに底の浅い芸しかできないか、そしてそれは何をおもしろいかと思う「知性」の問題だということがわかる。

サーカスなので動物が出てくる。考えてみれば、いつもタチの映画には動物と子どもが出てくる。この映画でも、他の映画と同じいたずらっ子が出てくるが、サーカスが終わり、観客がみな退場したあとも残って好奇心全開でいろいろないたずらをする。

童心に帰るという言葉があるが、この映画を観た人間のほとんどは、かつて一度も持ったことのない童心を自分の裡に見いだすことになるだろう。






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最終更新日  July 3, 2014 10:25:20 AM
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