ミステリの部屋

ミステリの部屋

2005年09月29日
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カテゴリ: 日本ミステリ


表紙を見ているだけで、懐かしく暖かいものが伝わってきて、手にとってしまいます。
加納朋子さんが好きだというのもありますが。

これはいつものような連作短編ではありません。
ミステリとファンタジーの間でゆれうごく霞のような不思議な雰囲気の短編集です。

「黒いベールの貴婦人」
廃屋となってしまったかつての病院には幽霊がでるという噂がありました。偶然足を踏み入れたユータがそこで見たものは・・・。

「エンジェル・ムーン」
そぼ降る雨の中、穏やかに佇む喫茶店「エンジェル・ムーン」にて、ある人の日記に書かれたできごとが再現されます。


留学した従妹の住んでいたマンションに住み始めた私。突然やってきた鳩の足につけられていた手紙には「コロサナイデ……」と書かれていました。

「天使の都」
娘を亡くした妻がタイに夫を訪ねて行き、出会った少女は……。「バンコクは…天使の都です」という言葉が印象的です。

「海を見に行く日」
「昔私もそこには旅したのよ。」突然帰省した娘に母が語る、若い頃の一人旅の思い出。

「橘の宿」
昔、男が一人山中で一軒の家に行きあたります。そこには鼻孔をくすぐる甘い香りが……。

「花盗人」
おばあちゃんが一人で住む家の庭には丹精込めた花畑があります。ある日その庭のすみにぽっかり穴があいていました。

「商店街の夜」
さびれた商店街が寝静まった時、そこに現れた景色……。


なぞなぞです。ふたつに切ったオレンジの半分にそっくりなものはな~んだ?

「沙羅は和子の名を呼ぶ」
引っ越した先の古い一軒の社宅で、和子は沙羅に出会います。誰しも持っている過去の人生における後悔とは。


一番心に残ったのは表題作「沙羅は和子の名を呼ぶ」です。
この題名は口に出すとやさしい響きです。解説によると呪文だそうです。

本当のところはわからないから色々想像するんですけど、もしもの世界をリアル見せられたら怖いでしょうね。
それを見て心が揺らいだら、その方がもっと怖いですけど。

一番好きなのは「商店街の夜」です。
どこにでもある平凡な商店街の夜、一人の男がシャッターに絵を描き始めますが、いつしか不思議なことが起こります。
これはミステリではなくてファンタジーですね。
こんな不思議なことも、きっとあるんじゃないかと信じてみたい日もあります。



沙羅は和子の名を呼ぶ  沙羅は和子の名を呼ぶ : 加納朋子









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最終更新日  2005年09月30日 19時42分34秒
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