全23件 (23件中 1-23件目)
1
背後から声をかけられて、オーディンは振り向いた。 「あの……!」 暗めの栗毛の女の子が、ひどく切羽詰った顔をしている。 何だ? 何があったんだ? と彼は不思議に思った。服装からすると総務課だろうか、女の子は真っ赤になったまま、うつむき加減に口を開いた。 「あの…アルディアス様の部隊の方ですか? お…お聞きしたいことがあるんですが」 「はあ」 「アルディアス様って……普段何なさってるんですか」 「普段? ……知らねえなあ」 オーディンは濃いブルースピネルのような目を細め、指先であごを掻いた。彼女は何を聞きたいのだろう。 「ご趣味とか……」 「へ? 趣味? 仕事だろ?」 「いえ、その…今度何かご予定がありそうな雰囲気とか、ないですか」 「予定? 今度の作戦会議のことか?」 ますます混乱してオーディンは言った。 栗毛の女の子が、どうしたらいいものかと困り果てた様子をしている。しかし彼女の意図が見えず、どうしていいのかわからないのは、オーディンも一緒だった。 その夜彼は、ニールスの部屋で酒盃を傾けながらため息をついた。 「昼間、こんな変な女がいてよ。参ったぜ。今度准将の後方支援担当、変わったりするのか? あれこれ聞いて」 ニールスが明るい茶色の髪を振って、ああと顔をあげる。彼はオーディンよりも少し年下だったが、気が合ってよく二人で話していた。 元々後輩だったが、オーディンが昇進を渋っているため、階級に関しては今では彼のほうが上になっている。 「それ、准将狙いの子なんじゃないか? 今度ダンスパーティがあるだろう。春の予定が伸び伸びになって、もう秋になるけど」 「ああ、そうか、そんなのもあったな。お前よく気がつくな」 「当たり前だろ。准将みたいなルックスで、出世も華々しくて、しかも偉ぶらないときたら、独身の子たちが騒がないわけないよ」 春からアルディアスの副官として働いているニールスは、銀髪の上司を取り巻く女性たちの視線を思い出した。もっとも当の上司は、あれはきっと気づいてもいないのだろう。 女性に興味がないというわけでもないのだろうが、なんというか、やわらかな淡白というか。 もう以前になるが中佐昇進直後のパーティで一緒になったときは、わらわらと女の子に取り囲まれていた。 その後「可愛い子はいましたか?」と聞いたとき、「そうだねえ、色とりどりで賑やかで、キャンディの詰め合わせみたいだね」と笑っていたが……ほとんど気がないと言っているようなものだから、それを聞いたら女の子達はがっくりするだろうな、たぶん。 しかしそれは言わずに、ニールスはグラスを傾けた。 「で、准将はいらっしゃるのかな」 「知らねえよ、副官のお前が知らねえことを俺がわかるわけねえ。だがよっぽど気が向かなきゃ行かねえだろ、あんなところ」 「だよなあ」 ニールスはつまみのピーナツを口に放り込んでうなずいた。 だいたい、准将は今とても忙しそうだ。就任直後、新しく自分が預かることになった部隊の人員を確認しながら、ずいぶん引き抜かれたようだねと苦笑していた。 それまでの部隊長は年老いた少将だったが、他所からの応援要請を断ることができず、いつもあちこちに兵を貸していた。おかげでニールス達も引越しに付き合えなかったわけだが、他にもばらばらに動いている者も多かったのだ。 応援要請を出す側は、他の隊に優秀な人材がいれば引き抜きたいという下心を持って、来る人間を見定めようとしていることも多い。 部隊長からの招聘要請と当人の異動願いが重なればまず拒否はできないから、部下の人心をつなぎとめることができていなければ、部隊はどんどんと優秀な人材を引き抜かれてしまう。 新しいフェロウ隊は、将官の預かる部隊の人数としては軍内で一番少ないといってよかった。だからこそ新参の若い准将に任されたともいえるが、それをそのままにはしておけない。 人員の少なさを逆に武器とするべく、少数精鋭となるように訓練や演習に余念がなかった。アルディアスはそのすべてに顔を出し、的確な指示や模擬戦の相手をしている。 これはなるべく隊員の前に露出して顔見知りになり、これ以上の人材の流出を防ぐためでもあった。顔も戦いの腕も知らない上司では、より条件のいいほうに流れられても文句は言えないからだ。 同時にアルディアスは、秘密裏の捜査にも関わっている。先日のエル・フィンの件から自動的にそうなったのだが、会議や書類仕事もあって忙しいことこの上ない。 あれだけ働いているのだからプライベートも充実してほしいとは思うけれど、のんきにダンスパーティに出てる暇などないんじゃないかとニールスは思った。 リフィアは友人と一緒にショッピングモールを歩いていた。 いつものアンナとジェズが隣にいる。 春予定のダンスパーティが秋になってしまったから、何か小物でシーズンに合った感じにしようと思って、三人でパーティ用の品を扱う店に向かっていたのだった。 「リフィア、ここいいわよ」 そう薦められた店に入ろうとしたところ、やはり三人連れの後輩の子と入れ違いになった。互いに挨拶を交わしたものの、なんとなく様子が妙な感じだ。 立ち去りながら、振り返ってこちらをちらちらと見たりしている。 なんなのかしら、と思いながらストールを見ていると、自身もコサージュを物色しながらアンナが言った。 「接点無い後輩が抜け駆けしようとしたんですってぇ。部隊の人に質問したらしいわよ」 ああ、それでか。 リフィアは合点した。フェロウ准将のことだ。 軍部がギルドと関係をもちたいために、男性士官と総務の女性士官とを「くっつけようと」しているのは事実だが、だいたいパターンというものがある。 総務課で担当している青年士官達の中からだんだん親しくなる人が現れて、それでお付き合いが始まるか、パーティを利用して知り合うか、どちらかだ。 関わりがなくて、いきなり関係者に質問というのはかなり珍しい。 女性たちの中には一応暗黙のルールのようなものがあり、先を越されても横槍はNG、という空気がある。 だからリフィアがアルディアスとパートナーの約束を取りつけたときも、特に嫌味などを言われたおぼえもなかった。沈黙の中、音が出そうに凝視してくるような視線は感じたが。 「まあね、その聞いた部隊の人ってのが悪かったらしくて、口悪いしろくに話通じないしでさんざんだったらしいわ。名前はたしか、オーディンとか」 くっきりした赤いバラのコサージュを鏡であわせ、満足げに会計に向かいながらアンナが言う。すると、彼氏が軍以外なので買い物にはついてきただけのジェズが、急に形のいい柳眉を跳ね上げた。 「あの男、無礼よっ」 「そうなの? あ、ジェズその人の担当なのね」 リフィアもストールを求め、話は喫茶店でのティータイムに移る。 お茶とケーキを前にして、ジェズは不満げにさらさらした長い髪をかきあげた。 彼女はぶっきらぼうな物言いする人が好きではないらしく、しょっちゅうぶつくさ言っているのだ。逆に朴訥な感じの人にはとても丁寧なのだが。 それを知っているから、二人は笑って話を聞いていた。 アンナは男性受けのいい艶のある美人で、彼女から男性への文句はあまり聞いたことがない。今度のダンスパーティも誰かに申し込みされたとかで、その相手と出ることになっていた。 「ねえ、リフィアはなんで急に約束取りつけたの? あんまり参加する気なさそうだったじゃない」 自身の相手の話をひとしきりした後、アンナが振り向いた。 リフィアはしばしカップの湯気を見つめた。 「そうね。急に心に、言ってみようかな、と浮かんだのもそうなんだけど。踊ってみたいなと思って。……なんでって聞かれてもよく分かんない」 自分でもよくわからない、不思議な気持ちを追いながら答える。 だが、二人はそこまで深くは考えなかったらしい。 「素敵ですもんねえ」 「わかりやすく~ハンサムよね~」 「そうじゃなくて、いえ、そうなんだけどあの……」 「うん、気持ちはわかるわ~」 もはやリフィアの話を聞いてもいない。 そういう結論に落とすならわざわざ聞かなくてもいいのにと、わずかに頬をふくらませながらリフィアは紅茶をごくりと飲みくだした。 ------- ◆【銀の月のものがたり】 道案内 ◆【第二部 陽の雫】 目次 今年最後の更新ですw ぷろぢゅーさー様のご意向により、付き合うまでいきませんでした^^; でもここのところまとめて更新してますので、お正月の暇なときがありましたら上の目次からごゆっくりと楽しんでいただけましたら幸いです。ご感想も心よりお待ちしております♪そして新年一発目はお待ちかねダンスパーチーのお話ですから、皆様お楽しみにwww もう今年も残すところ20時間くらいですが、これから仮眠して帰省しまーす。 しばらくメールのお返事など滞りますが、お許しくださいませ。 本年中は色々とどうもありがとうございました。 おかげさまで色々と怒涛でしたが、実りも多い一年でした 笑 来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 それでは皆様よいお年を 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→ ☆ゲリラ開催☆ 1/1~1/3 はじまりの光~一斉ヒーリング1/5 地のエレメントの浄化ヒーリング
2009年12月31日
コメント(9)
さて、今年もあとわずか。もう日付が変わって大晦日になってしまったので、今日から帰省してしまいますから今のうちにw新年最初の恒例火曜ヒーリングは、「地のエレメントの浄化」にしようと思います♪ヨーロッパ系だと4大元素、チベット仏教だと5大元素などといいますが、宇宙のすべてを構成している元素のひとつです。地のエレメントは、不動やグラウンディングを司ります。去年の暮れにも実は一度やっていて、ちゃんとできたらしいので 笑まあ今回も大丈夫でしょうwwwはじまりの光、でスタートに立って、一歩一歩着実に進んでゆけるように。見えない世界で学んだことを、見える世界に生かしてゆけるように。来年もちょっぴりのお手伝いができたらいいなと思います♪よろしかったらぽちっとお願いします♪→★リアルタイム日時 2010年1月5日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~1月7日(木) 朝5:30開始までの間の1時間 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。 ☆ゲリラ開催☆ 1/1~1/3 はじまりの光~一斉ヒーリング
2009年12月31日
コメント(334)
あがってきた書類をざっと読んで、アルディアスはわずかに目を見開いた。 ずっと気になっていた軍内の暴行集団を、半殺しにした人とドラゴンのペアがいる。書類が回ってきたのは、その青年が彼が新しく預かった部隊の下方に属しているからだった。 エル・フィン=クレインヴァーというその青年の名を、彼は聞いたことがあった。 一度何かの任務で、小隊の記録係として見事な報告書を提出してきたことがある。事件の概要から鑑みるに喧嘩にも強そうで、まだ若いが文武に秀でているようだ。添付された顔写真に見覚えがないから、先日の祝賀会には出ておらず、また寮や所属中隊も違ったのだろう。細部を読み直し、事件があった昨日から丸一日、青年が独房へ、その守護竜が水晶の封印の間へ入れられていることを知る。 暴行集団のほうは入院中だが、命に別状はないらしい。こちらは追って沙汰が出ることになるだろう。 しばらく端末を操作してから彼は立ち上がり、執務室を後にした。 途中で規律委員の人間をつかまえ、そのまま地下の独房へと向かう。 看守に牢の鍵を開けさせると、暗い冷え込んだ空間に、かちゃん、という小さな音が響いた。 硬い寝台に横になっていたエル・フィン青年が起き上がってこちらを見る。 「釈放だよ、出ておいで」 扉を開けて言うと、金髪の青年は碧い目を見開いた。 「なぜ、貴方が……」 「一応私が君の部隊の最高責任者だからね」 微笑んで青年を手招きする。 青年が扉をくぐると、隣に立っていた規律委員が苦虫を噛み潰したような顔になっているのがわかった。 それを意に介さずに、青年を解放する旨もう一度承認させる。 「以降、彼の身柄は私が預かる。ご苦労さま」 体よく規律委員を追い払って、青年についてくるよう素振りで促し、長い銀髪をなびかせて彼は地下牢からの階段を登った。 「彼らは一応生きているよ。ただやはり事が事なのと、どうやら潜在被害者が男女ともに結構いるようで、彼らが降格もしくは除隊されるのは間違いないと思う」 道々立っている見張りが送る敬礼に軽くうなずきながら、後ろを歩く青年に説明する。 「君については、独房入りしたことでこれ以上の罰則はなしということになる。そもそも君は被害者だからね。調査委員もどうやら彼らのことは薄々気づいていて、どうするか考えあぐねていたようだから、結果的には諸手をあげて感謝したいようだ」 そう言うと、背後で軽いため息が聞こえるのがわかった。 気づけば、先に出た規律委員の背中がすぐ近くなっている。 こちらに聞き耳を立てているのが感じられるが、声の調子を変えるでもなく、彼は続けた。 「だが、半殺しにしたことは正直やりすぎだと思うのでね、しばらく地方に行ってもらうこととなる」 「シェーンは……一緒ですよね? 今何処ですか?」 エル・フィンは守護竜の名を口にした。 そもそも今回のことは、男女かまわず狙いをつける暴行集団が青年に言い寄ったことが発端である。 断った青年を逆恨みし、数にまかせて襲って暴行を加えようとした。喧嘩の最中エル・フィンが両腕をつかまれたところに、守護竜シェーンが通りがかり、かっとして怒りのままに力をふるってしまったのだ。 「今は水晶の封印の間に封じられているよ。残念ながら、彼のほうが罪が重い。一緒に行くことは難しいだろう。行き先が小さな街なのでね。連絡係としてこちらにとどまってもらうこととなるだろう」 地方の小さな街、というだけで左遷に間違いはないし、守護竜をもつものにとって、それと離されるのはとても大きな罰になる。 規律委員が内心ほくそ笑んでいるだろうことを予測しながら声に出すと、心話で続けた。 (私としては、あんな恥知らずどもは制裁を受けて当然だと思うし、君を表彰してやりたいくらいなんだけどね。これ以上君をかばうと、私を降ろしたがっている連中が喜ぶことになる。こんな地位には未練も執着もないが、次に座るのが彼らの身内というのはどうにも後味が悪い) 長い階段を登りながら、エル・フィンがびっくりしたような気配をみせた。牢のある地下エリアは、脱走を防ぐため強固なテレパシー防御結界が張ってあるはずだ。 しかし、軽い笑いの波動が青年の心をそっとくすぐってゆく。 (この程度の結界、私には何の意味もないよ。君の心話を受けることも問題なくできる。しかしそれには君へのアクセスが必要だから、嫌ならばイエスのときは右肩を、ノーのときは左肩を回すか叩くかしなさい。独房でなまった身体をほぐすふりをしてね) エル・フィンはとりあえず心話で答えてみた。 (貴方を降ろそうとする? 前を歩く規律委員もですか?) (そう。彼もあの一族さ。あの集団の前科と被害者をざっと洗い出して、君の釈放は承諾させてやったが、ひどく嫌々だったな) ようやく私の尻尾をつかんだと思っていたのだろうよ、とおかしげにアルディアスは続けた。 その心話のあざやかさに感心しながら、同時にエル・フィンは合点した。権力者の子弟であることをかさにきている連中が、あの集団の頭であることは知っている。 であれば前を歩く、周りの認める実力で地位を築いたこの人を目の敵にしている連中と繋がっていてもおかしくない。 なにしろ、下士官の人気は圧倒的に彼にあるのだから。 そして、下っ端とはいえ彼の部隊に属する自分が障害沙汰を起こしたのだから、連中にとってはまさに好餌だったのだろう。 執務室の前まで来ると、アルディアスは青年を招きいれた。 副官に目配せをし、椅子に座ると机の書類の山から束を抜き出して青年のほうに向ける。 受け取って文字を追うエル・フィンの目が険しくなった。 これが本当なら大変なことだ。 街の評議委員会は何をやっているのだろう。何も気づかず放置しておくほど無能ではあるまいに。 「残念ながらこれの裏付けはとれていないから、表だって動くことが難しい。だからといって放置しておくわけにもいかない。エル・フィン、やってくれないか?」 穏やかな瞳で彼は言った。上司の言葉であるから部下にとっては命令に違いないのだが、居丈高な言い方は好きではない。 「わかりました」 エル・フィンは謹んで一礼した。つまり左遷に見せかけた、これは秘密任務なのだ。シェーンと離れるのが寂しいが、実際に連中を半殺しにしてしまったのだから仕方がないとも言える。それにしても、別れを言うことくらいはできたらよかったのに。 「ありがとう。ではこれより、君は今日づけで私の直属の部下という扱いになるから、心得ておくように。それから部下を五人選んで連れていくこと。彼らも同様に身分を隠して街に潜入してもらいたい。 出来ればなるべく早く出発ができるように、至急の人選と報告を上げてほしい。期間はこちらの通達が行くまで何年でも。いいね?」 「わかりました。明日には出発できるようにします」 心中すぐにも動けそうな仲間の顔を数え、決意をこめた目で青年は答えた。 部隊の最高責任者が直接独房から釈放した下士官の自分。長くここにいれば、かえってこの人を叩くネタにされる恐れがある。 できるかぎり早く、「左遷した」という形をつけておくべきだった。 打てば響くような青年の返答を聞いて、銀髪の男はふわりと微笑んだ。 上下関係の厳しい軍籍に身を置きながら、部下に向かってこんなにも嫌味なく優しげに微笑む人間を、エル・フィンは見たことがない。 「助かるよ。では餞(はなむけ)として、シェーンと心話を繋いであげよう。直接中継するが、他の人には内緒だよ」 机に肘をつき、唇の前に軽く指を立てた上司に、金髪の青年は耳を疑った。 シェーンのいる、水晶の封印の間。 それは特殊能力の高いものやドラゴンを封じておく場所だった。その場を他から厳重に区切る結界強度は、地下牢などの比ではないはずだ……が、またもやすやすと、今度は聞きなれたシェーンの声が青年の心に届いた。 (エル・フィン。今回は悪かった) (いいんだ、シェーン。俺を守ろうとしてくれたんだから。だけど……すまない、少し離れることになってしまった) (知っている。だが、ほとぼりが冷めたらお前を追ってゆけるようにすると、その人が言ってくれた。一、二年はかかってしまうだろうが……ドラゴンにとっては、そのくらいはまばたきの間だ) 思わず目の前の執務机に座る人を見直すと、上司は藍色の瞳を片方、いたずらっぽく閉じてみせた。 なんて人だ。 愛する守護竜にしばしの別れを告げると、エル・フィンはもう一度深々と頭を下げた。変わらぬ穏やかな声が届く。 「では頼んだよ。期待している」 「はい、失礼します」 顔をあげて自分の上司となった人をまっすぐに見、それから青年は執務室を後にした。 仕事以上に彼の期待に応えたいと思いながら。 <ただの物語20 出会い> エル・フィンさんhttp://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-71.html------- ◆【銀の月のものがたり】 道案内 ◆【第二部 陽の雫】 目次 ついにエル・フィンさん登場ですwこの時代ではこれが初めての出会いですね。それまでも同じ部隊にはいたらしいのですが、会ったことがなかったという。。。ご感想ありがとうございます!すごーく嬉しいです♪単純なので、ほくほくして次書いてしまいますwww拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→ ☆ゲリラ開催☆ 1/1~1/3 はじまりの光~一斉ヒーリング
2009年12月30日
コメント(5)
「行っちまったなあ」 夕陽のさす寮の食堂で、オーディンは香草焼きの魚をつつきながら呟いた。 「そうだなぁ。俺達は引越しも手伝えなかったしな。せっかく一緒に昇進したのに、あの間抜け大佐が自分とこの作戦に貸してくれなんて言ってこなきゃ」 ニールスが仇敵のようにつけあわせの人参をフォークで突き刺す。ゼキルとかいう大佐の作戦に付き合わされたりしなければ、敬愛する上司の引越しをわいわいと手伝いに行けたのに。 「あのデブ大佐、アルディアス様のことも昔苛めたらしいぜ」 黒髪に日焼けた顔のクラウドが、大きな身体をちぢめるようにして声をひそめた。 「なんだって? じゃあ追い抜かれたのか。いい気味だな」 「そりゃ並べたら格が違う。部下を怒鳴るしか能がないんだから、あいつは」 硬めだった人参を大仰に噛み砕き、ニールスはフォークをふりまわした。 食事時間をかなり外れて他に人がいないのをいいことに、口々に言いたい放題だ。ちなみに一般家庭では夕食の用意をする時間帯だが、彼らが今食べているのは昼食、ということになる。 「准将になったら部隊を任されるだろ。俺達の部隊にならないかな」 「そうだよなあ」 最後は皆そう呟いて、彼らはそれぞれの部屋に仮眠に行った。 その夜更け、目覚めたニールスとオーディンが食堂で話していると、ひょっこりと銀髪の男がやってきた。 「あれっアルディアス様、どうなさったんですか?」 「うん、私の部隊が内定したから伝えにね……もう少し早い時間に来る予定だったのだけど」 掲げた片手に酒瓶の包みがある。引越しに会えなかった彼らに気を使ってくれたのだろうと思われた。 「恐縮です……せっかくだからお飲みになります? あ、クラウドもいますよ。起こしてきます」 ニールスが席を立ってゆく。オーディンはぼさぼさのままの頭をかいてぺこりと下げた。 部屋は誰のも片付ける暇がないということで、薄暗い食堂の片隅につまみとグラスを持ってくる。 「大佐、じゃない准将、あんたほんとにここでいいのか?」 「構わないよ。気を使わせるのも悪いしね」 アルディアスが微笑む。まがりなりにも二十四時間使えるようになっている食堂と違って、応接室の使用には守衛の許可が必要だ。とはいえ将官の訪問であれば、立派にその理由となるのだが。 アルディアスが上下関係に厳しくなく、形式を嫌うことは、近くにいた者は皆知っている。オーディンの同僚に向けるような口調も、彼はまったく気にとめていなかった。 昇進前も普通に食事に混じっていたし、事情を知らない者からはよく奇異の目を向けられていたものだ。 乾杯をした後で、おもむろにアルディアスは言った。 「私の部隊だけれどね、今までと同じになったよ。ほら、上司がもう年だったし怪我をしただろう。あれで異動希望を出して、私が代わりに預かることになった」 「やったぜ!」 クラウドがガッツポーズをとる。ニールスとオーディンは、にやりと顔を見合わせた。一度将官の部隊が決まれば、気心を通わせ隊の質を高めるために、よほどの理由がない限り、ずっとその名を冠するのが普通だ。 「みんな、よろしく頼むよ」 「もちろんです。こちらこそ」 「じゃあ、准将昇進の祝賀会をしましょうよ。俺、幹事やりますから。准将のお暇なときはありますか?」 ニールスが手を打った。彼にはアルディアスの副官という内示が出ているが、銀髪の男はそれを黙っていた。部隊が正式発表になったとき、同時に驚くことになるだろう。 アルディアスの予定が二日後なら空いているということで、ニールスは一両日中に参加者を募って店を予約すると言った。この青年はこういう手回しが上手く、将官の秘書役たる副官には向いた人材だといえる。 フェロウ部隊の祝賀会は、かなりの人数が出席して賑やかなものとなった。 小ぢんまりとした店ひとつを貸切にし、わいわいと騒ぐ。アルディアスは財布役を申し出たのだったが、ニールスは人数も多いことだしと会費制にして折半としてくれた。 「准将ばんざーい!」 酔った声で、何度目かの乾杯が行なわれる。 奥の壁際に普通に混じって座ったアルディアスは、グラスを片手ににこにことその様子を見ていた。 ニールスが探してきたのは大きな木の梁のかかった暖かい感じの店で、じっくり煮込んだシチューと大ぶりの野菜料理が看板だった。 和気藹々の中、盛り上がって赤い顔をし、ジョッキを片手に立ち上がって大声で喋っている者もいる。 だが新しい上司のにこやかな様子に似るのか、醸された気楽な雰囲気がそうさせるのか、部下達は陽気な酔っ払いばかりで、からんだりわめいたりする者はいなかった。 「ほんとにおめでとうございます、大佐」 「大佐じゃねえよ!」 間違えると即座に突っ込みが入り、あちこちで陽気な笑い声が起きる。 「どちらでもかまわないよ。私もまだ慣れていないからね」 「そりゃいけません。准将ですよ、じゅ・ん・しょ・う!」 赤ら顔の男が、ろれつの怪しくなった舌で唱えてくれる。笑いながらそれにうなずいていると、横でオーディンがグラスを干してぼそっと呟いた。 「周りのほうが喜んでるな。あんたもとっとと慣れるこった」 「おや、昇進は嫌だとだだをこねている君に言われるとはね、オーリイ。後輩が困るとニールスがぼやいていたが」 「俺はいいんだ、俺は。そんな器じゃねえもん。ニールスはいい奴だ。そこそこ腕もたつし、あいつも上に行ったらいい」 よく言うよ、とアルディアスは肩をすくめた。 その肩を軽くつついてニールスが耳元にささやく。そろそろお開きの頃合ということで、会費の徴収などもすべて終わって、店側との交渉も済んでいると彼は言った。 その手並みに感謝して席を立ち、残りの会計を済ませる。思ったより割安だったのはニールスの手腕と、店の好意であるらしい。 軍人は酒が入ると乱暴になる者が多く、宴会はできれば敬遠したい店が多いのだが、今夜のお客様がたは大変陽気で楽しゅうございましたから、と白い髪の老境にさしかかった店主は微笑んだ。 「どうぞまたおいでください。ご活躍をお祈りいたしております、准将」 「ありがとう。寄らせてもらうよ」 軍人らしからぬ風貌で、銀髪の男は微笑みかえした。 ------- ◆【銀の月のものがたり】 道案内 ◆【第二部 陽の雫】 目次 アルディアスの部隊のお話。 実戦本番以外は、えらい和気藹々とした部隊だったみたいですw 自分ではえー嘘だろーと思っていたら、複数証言が得られたので書いてみましたwww ヒーリング記事の計算を忘れていたので(爆 年内どこまで載せられるかなあ・・・・^^; ご感想いつでも大大大募集中です ぜひなんでも語ってくださいませ~♪ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→ 12/29 ご先祖様一斉ヒーリング ☆ゲリラ開催☆ 1/1~1/3 はじまりの光~一斉ヒーリング
2009年12月29日
コメント(5)
お待たせしました!っていうか30日とかにアップしようかと思ってたのですが、そんな日にしてると1月の火曜ヒーリングの記事が間に合わないことにさっき気がついたという。。爆というわけで元旦ヒーリングです♪お正月って寝る時間はもう予測できないと思いますので(笑)三が日のどこかで受けとっていただければいいかなあとwやるのは、年初らしく「はじまりの光」。これ、9月ごろにもやったことありますね~。以下、以前の記事を参考に書きますとwすべてが生まれた根源の光、です。光、と言ってますが、これは他に言葉がみつからないだけでw闇も同等に含まれます。光の三原色って、混ぜると白くなるじゃないですか。あんな感じで透明というか白く見えるから、光、って私は呼んじゃうのですけども透明な光、なのかな。はじまりに戻る、ということは、すごろくの振り出しに戻る、ではなくて。自分が何をしてきたか、何を得てきたかを知ることだと思います。はじまりに生まれてからここまで歩く間に、こんなにも宝物をあげたりもらったりしてきていたんだ、と知ること。そして新しい一歩を踏み出すこと。そのお手伝いができたらいいなと思います♪よろしかったらぽちっとお願いします♪→★ヒーリング期間2010年1月1日(金)0:00~1月4日(月)日本時間朝6:00まで 1回30分期間中、何度でも好きなだけコールインでお受け取りいただけます。 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限2010年1月4日(月)日本時間朝6:00まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。 12/29 ご先祖様一斉ヒーリング
2009年12月28日
コメント(429)
アルディアスの部隊が本国に戻ったとき、リフィアは群集の中に混じってそれを迎えた。 彼女の中にも、誰かがずっと傍にいるような、そんな感覚が続いていた。けれども彼がかけた暗示がまだ効いていることもあり、それが誰かはまったくわからない。 誰だろう、この感触は誰だろうと思いながら、季節がすぎていった。 寒気の下、群集の曇った熱気が息苦しいくらい淀んでいる。 艦のハッチが開かれ、銀髪をなびかせてすらりとした長身が姿を現すと歓声が沸き起こった。 リフィアはコートを着て手に息をふきかけ、背伸びをしながらそれを見ていた。 (凍った光みたい) 彼女は思った。寒気と熱気が入り混じる中、戦場から帰るアルディアスの周りだけ冴えざえと冷たくて、そのくせ燃え立つようで。 氷の焔。 光を跳ね返す氷は美しいが、人は時にその冷たさを無視する。 彼が身の内に何を抱えているかを感じ、リフィアはその凍気の中に手を伸ばしたくなった。 融かせなくてもそれに触れたいと思った。 「おかえりなさいませ、フェロウ大佐。寮でご不自由はありませんか?」 翌日、リフィアは仕事でアルディアスと連絡をとった。端末画面に映る彼は穏やかで、昨日の冷たさの片鱗はない。 「ありがとう。特に何も」 いつものように彼は微笑んだ。どんなに戦果をあげても何も変わらず、部屋を変えろとも言わなかった。 けれど今回は、軍のほうで住む場所を変えろと言うようだ。普通とは逆のその手順がおかしくて、リフィアはインカムに指を添えてちょっと微笑んだ。 「アルディアスさま、准将への内示が出ておりますわ。将官になられましたら、さすがに単身寮住まいは辞めていただいて、将官用の戸建て住宅に移っていただきたいと、上層部からのお達しです」 アルディアスは目をしばたたいた。自分が昇進するとはまったく思っていなかったという顔だ。 将官クラスになると人員の定数に問題が出てくるとはいえ、部下達がそれぞれ一階級上がっているのに、自分がないと思っていたというのも鈍いというか稀有というか。 「……このままではいけませんかねえ。戸建て住宅なんて、まったく必要ないのですが」 「そうはいきませんわ。将官が寮にいらしたのでは、周りの者が気を使いますもの」 「確かにそうですね。仕方ないか……」 嫌々アルディアスが呟いたので、リフィアはもうすこしで噴きだすところだった。なんて珍しいひとだろう。 「官舎はもう指定されております。設備機器の点検メンテナンスの報告も受けておりますわ。辞令が出しだい、お引越しの手配をさせていただきます」 「ありがとう」 リフィアとの通話を終えて、アルディアスは寮の食堂に向かった。昼は抜いてしまったから、そろそろ食べておかなければ。 食堂では、同僚や下士官達が気軽に声をかけてくる。 「よう、おかえり」 「アルディアスさまがいらっしゃらない間、寂しかったですよ。でも、もうすぐまた出られてしまうんでしょうね」 「なぜ?」 横に長いテーブルの片隅にトレーを置きながら彼は尋ねた。黒髪の下士官がため息をつく。 「そりゃあ。あれだけの武勲をたてて、准将にならないわけがないです。次の辞令で昇進して、ここからおさらばですよ。大佐でここにいらっしゃるのも珍しいけど、将官じゃいくらなんでも無理でしょう」 「……そうか」 サラダをつつきながらアルディアスは呟いた。なるほど、気づいていないのは自分だけだったらしい。 「さっき、支援係に昇進の内示が出ていると言われたよ。確かに、将官用の住宅に移るように言われた」 そう言うと、まわりが一斉にうなずいた。引越しの時期を聞かれて、辞令が出しだいだと答えると、その時待機中の者が手伝いにいくと盛り上がる。 「いや、総務で業者を手配してくれるそうだし……」 「何言ってんですか水臭い。俺達に手伝わせてくださいよ。ここにいらっしゃる間、ずいぶんお世話になったんですから、せめてもの恩返しです」 「世話なんて、何もしてないだろう」 「大佐に愚痴聞いてもらったりヒーリングしてもらったり、ここの連中は皆一度は世話になってますよ」 「そうそう。たまにはおとなしく世話されとけ」 部下と同僚が一緒になって銀髪の男を囲む。じゃあ頼むよ、と彼が笑うと、よっしゃやるぜ、と歓声があがった。 実際に辞令がおりての引越し当日。 寮の中で十人ほどの待機者が皆手伝いにきてくれて、アルディアスの仕事は指示を出すだけになっていた。 「大佐……じゃない准将、お荷物これだけですか?」 「ああ」 「ほんっとに少ないですねえ。じゃあ、掃除のほう徹底的にやりましょう。人多いですから」 「すまないね」 「いえ、せっかく来ましたから」 部下達はそれぞれてきぱきと動いてゆく。アルディアスの私物といえば、本の入った箱が四つと服その他の箱がまとめて二つ、それだけだった。 中央への異動からまだ日が浅いため荷物の大半は梱包されたままだったし、寮の部屋も狭いところに入っていたから、掃除もあっという間に終わってしまう。 調達した軍用トラックに荷物と一緒に乗り合わせて、それほど遠くない官舎に着くと、彼らはまずきれいに掃除をしてくれた。 家族用のそれなりの広さのある官舎だったが、十人でかかると見る見る間に、という感じだ。 アルディアスが感心している間に終わってしまう。 「はい、お終いです。ベッドなんかはご自分で入れられたんですか?」 いや、とアルディアスは首を横に振った。ずっと忙しくて、そういうことは覚えがない。寮と違ってほぼすべての備品が備えつけということもないだろうから、おそらくそのあたりはルーテウス伍長が手配してくれたのだろう。 見てみると、カーテンや照明、長身の彼でも使いやすそうな大きなベッドなど、簡素すぎず華美すぎない、趣味のいい家具が必要最低限度ほど揃えられていた。書斎に壁一面を埋める大きな本棚が入っているのは、アルディアスの本好きを知る彼女の心遣いだろう。 働いてくれた部下達に礼を言ってねぎらい、食事に連れてゆく。 引越しのために皆朝早くに集まってくれたから、帰ってきてもまだ日が高かった。 まだ勤務時間内であることを確認して、アルディアスは後方支援課に連絡をとった。 最近は引越しやら昇進やらで比較的頻繁に連絡をとっていたが、本の注文などは何かのついでがほとんどだったから、彼からというのは非常に珍しい。 リフィアは端末をつなぐと笑顔を見せた。 「こんにちは。お引越しは滞りなくお済みですか? フェロウ准将」 「おかげさまで。家具は伍長が入れてくださったんですか? 気づいていなかったので助かりました。ありがとう」 「はい、お忙しそうでしたので。お気に召さなければお取替えもできますのでおっしゃってください」 必要ありません、とアルディアスは笑った。 リフィアは微笑み、てきぱきとハウスキーピングの話なども進めていった。 忙しいアルディアスが戸建てを維持するのは難しいから、週一~二回ほどのハウスキーピングが必要だろう。聞くと、書斎以外はどこに入ってもかまわないという。使わない部屋は放っておこうかな、というので、それは蜘蛛の巣が張りますから、とリフィアは笑ってたしなめた。 それにクリーニングの回収・配達の手配と電子鍵の管理について。 食事はおそらく、艦や基地の士官食堂でとることになるのだろう。 「お庭はその地域の官舎が丸ごと管理されていますから、何もなさらなくても定期メンテナンスが入ります。逆に規制があって変えられない部分でもありますが。裏庭は、もうちょっとその時の住まう方の意向で変えられます」 「わかりました。それから、大きな本棚をありがとう。本だけはすぐにあふれてしまいますのでね。何かお礼をさせていただくことができますか?」 その毒気のないやわらかな笑顔を見て、このひと本当に軍人なのかしら、とリフィアは思った。階級の低い総務課の小娘相手にとる丁寧な物腰も、まったくそれらしくない。 「いえ、仕事ですから……ああ、でも」 急に思いついて、リフィアはごくりと唾を飲み込んだ。アルディアスが、促すような優しい目でこちらを見ている。でも、ずうずうしいと思われないかしら。 「その……来月の軍部主催のダンスパーティに、ご一緒していただけませんか。パートナーを探していて」 彼がパーティをあまり好きでないことは感づいていたから、後半はだんだん声が小さくなり、ごにょごにょという感じになってしまう。けれど銀髪の男は笑って、私でよければ喜んで、と答えた。 「ありがとうございます」 社交辞令でも嬉しくて、リフィアはぱっと笑顔になった。 釣られるように、画面の向こうの微笑も深くなる。 「では、お逢いするのを楽しみにしています」 笑顔とひとつの約束を残して、通信は切れた。 ------- ◆【銀の月のものがたり】 道案内 ◆【第二部 陽の雫】 目次 あいかわらずゆくーりな進展ですみません 笑 今年中に付き合うところまでいってほしいという声もありましたので、 とりあえずアップしてみましたw …このペースならなんとか…なる、かなあ。。 更新のタイミングもどっかのぷろぢゅーさー様の意向によりけりなので、 どうなるかは私にもわかりません~^^; ご感想いつでも大大大募集中です ぜひなんでも語ってくださいませ~♪ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪ 12/29 ご先祖様一斉ヒーリング
2009年12月27日
コメント(12)
つつがなく大祭を終えて、アルディアスは任地に戻った。 毎年二週間の夏休みといえば聞こえがいいが、その実は中央の大神殿で、大祭にあわせて断食潔斎の日々であった。 長い移動日をこえて遠方の任地に戻り、寮の自室でほっと息をつく。 休む間もなく、明日からは軍人として作戦に参加しなければならなかった。 空気を入れ替えるために窓を開けると、夏の夜風がここちよい。アルディアスは狭いベランダに立って欠けゆく月を見上げた。 そこには彼ひとりしかいないはずなのに、誰かがすぐそばにいるような、暖かな感触が続いている。 彼は胸に手を当てた。そこにかすかに触れる暖かさ。その先は……。 心当たりを思い浮かべて、アルディアスは銀髪の頭を振った。早とちりはいけない。 世の中にツインというものがいるのは知っていたが、それが自分にもいるかもしれないなどと、考えたことはなかった。 ツインソウル。 それは双子の魂とも、対の魂とも言われるもの。 その発生は、ひとつの魂を二つに割ったものだとも、対として生まれたものだともいい、互いにまったく同じ形質を持っていたり、逆に対照的な形質を持っていたりする。 すべての光と闇を共有しながら経験を積み、同じように共振する。その象徴が、ハートで繋がる特殊な金色のエネルギーコードだ。 大神官として、ツインの結婚式に立ち会ったことが彼には何度もある。彼らには確かに輝くコードがあった。 しかし、ツインコードを持たない二人の結婚式でも、それは変わらずに美しく幸福だった。 ツインでなくとも幸せな夫婦は星の数ほどおり、逆にツインであっても互いのエゴのために波動がずれ、離れていった者達も多いときく。 互いに同じ人間。 求めるばかりならば苦しくなり、相手を思いやりつつ歩こうとすれば、その道は暖かく照らされる。 ツインが見つかれば越したことはない。けれど、そうであるかどうかよりも、結局はそれぞれひとりの人間として、何を想い何を積み上げて生きるか、が大事なのだろう。 遠い星を眺めるアルディアスの銀髪を、夜風がかるくなぶってゆく。 一人が当たり前、という感覚が彼にはある。 それが幼少時に家族を喪ったことからきているのか、それともそれ以前からなのかはすでにわからないが、なぜか自分は一人でいるものだと、ずっと思ってきた。 実際に彼がしている生活が、誰かと一緒にいやすい性質のものではない、ということもある。 たとえば誰か好きな人ができたとして、自分のこの二重生活につきあってくれとは、とても言えない。 どちらか一方ならばまだともかく、軍人であるときも神職であるときも、相手を置いてどこかへ行ってしまうのだから……。 アルディアスはため息をついた。 だからといって、孤独を感じないわけではない。 帰属するところのない不安定感、宙ぶらりんな感覚はいつでも彼を追い立てる。 おそらくは、心底では希求しているのだ。 出会うことを。 ……愛することを。 しかしすぐに作戦が忙しくなり、そんな微細な感覚を追っている余裕はなくなっていった。 母国では冬のさなか、彼は戦場の只中にいた。 命令系統の混乱により、彼とその五人ほどの部下が敵艦に取り残されてしまったのだ。 血塗れた剣を振るって道を開きながら、全員の名を呼んでアルディアスは叫んだ。 「ニールス、オーリイ……皆、ついてきているか?」 「なんとか、フェロウ大佐」 「よし、それではそれぞれ二人一組で動き、機関室を目指す。ニールスは私と」 「はいっ」 細身の青年がアルディアスの斜め後に並ぶ。剣の腕も悪くはないが、他の四人に比べると若干落ちる。よく気がつき、どちらかといえば頭を使うほうが得意な青年だった。 押し寄せる敵兵を薙ぎ払いながら、彼らは機関室を目指した。 場所はわかっていたが、六人では一度にテレポートするには多い。だから地道に足をつかって距離を稼ぐしかなかった。 そして同時に、味方に取り残された死兵であると気取られてはならない。それに気づかれれば、あっという間に数を頼んで皆殺しにされてしまう。 作戦行動の一環として動いているように見せかけ、背後に味方の奇襲があると思わせて、つねにそちらに兵を割かせておかねばならなかった。 アルディアスは先頭をきって走った。愛用の長剣を右に左に薙ぎ払う。刃に魔法を乗せて衝撃波を発生させると、シルバーグレイのプロテクタに返り血が飛んだ。 「銀色の魔物、化け物め……」 敵兵のひとりが血を噴いて仰け反りながら、半分生気の消えた目で睨む。 なんだとっ、と飛び出そうとしたニールスを押さえ、アルディアスは一歩踏み出した。 「そう、私は化け物さ。恨むなら私に憑くがいい、逃げはしない」 命の切れる者の目をまっすぐ見やり、それから他の敵に向かって大きく踏み出し斬撃を放つ。 むきだしになっている長い銀髪が、それこそ悪魔の鎌のように鋭くひるがえる。刃でひとり、乗っていた雷撃で二人。瞬時に倒されて、敵の動きが明らかに鈍った。 「道を開けろ。降伏する者には手出しをしない」 凍てついた青い目が、及び腰になっている敵兵を見渡す。人数の上でははるかに優勢なはずの敵艦人員だったが、このときすでに銀色の魔物率いる部隊に圧倒されかけていた。 「できるかっ」 敵前列の青年兵が銃を構える。だが艦の壁に通っているライフラインを傷つけることを恐れ、乱射するわけにもいかない。 するとその銃を牽制として、脇から別の誰かがアルディアスの頭を狙って小刀を投げた。同時に青年兵も狙い定めて発砲する。 ギィン、という音が聞こえたかのようだった。 飛来した刃物と銃弾が、張りめぐらされていたバリアに阻まれ空しく床に落ちる。 間髪入れずアルディアスは身体を低くして走りこみ、青年兵を一刀の元に斬り捨てた。続いたニールスが、小刀を放った男の脇腹に斬撃を放つ。 二人が倒れると、敵兵の輪は明らかにひいた。潮がひくように、こちらが一歩踏み出すごとに後へ下がってゆく。 そうしてじわじわと無言の後退が行われ、ついに機関室の扉へと至った。 (機関室の中は三人のようだ。ニールス、制圧できるか) (了解) アルディアスがその長身を砦として前に立っている間に、ニールスは手首の携帯機器をロックに押しつけた。さすがにすぐには解除できず、他の仲間が持っていた重火器で強引に焼ききる。 そうしながら腰から小さな瓶を取ると、蓋をあけて片手に持った。左手で慎重に機関室の扉を細く開け、その瓶を投げてまたすぐ閉める。 (あと三秒です、アルディアスさま) (よし、十秒後に突入) アルディアスは敵を睨みながら心話で答えた。もはや斬りかかってくる者はいない。十秒が経ち、彼ら六人は素早く機関室へと身を躍らせた。 中にいた三人は、ニールスの投げ込んだ即効性の睡眠薬でぐったりと倒れている。 アルディアスが、空気中に残っている睡眠薬を機関室の外に排出する。機関員にはまだ意識のある者もいたが、部下達の剣であっという間に黙らされた。 「この艦の乗員に告ぐ。私はフェロウ大佐、この艦を制圧した。武器を捨てて投降せよ。投降した者には危害を加えない。繰り返す、武器を捨てて投降せよ」 アルディアスの落ち着いた声が艦内に流れる。 その間に部下達はそれぞれが動き、艦のすべての端末回線を機関室優先の非常モードに切り替え、本国との通信を開始していた。 本国ではもちろん歓迎だった。 命令系統の不備による影響はなにもアルディアスの隊だけではなく、いくつもの場所で混乱が起こっていたのだ。 それにより失われた人命も少なくはなく、そのままならば司令部の責任をとって誰かが辞職しなければならないところだったのである。 それが敵艦の制圧というめでたいニュースの到来によって、一気に空気の流れが変わった。 しかもアルディアスたちは、敵艦隊の中枢に制圧が知られる前に全速で突出し、情報の混乱を利用してさんざんに敵陣に穴を開けていた。 また同じ素早さで戦線を離脱すべく退却戦を展開し、追いつかれる前に味方の陣営に逃げ込んでしまった。 彼らの戦果は戦局そのものを覆すには至らなかったが、ニュースになるには十分だった。 帰還した彼らを待っていたのは、たくさんの拍手喝采。 そして中央への呼び戻しと昇進の辞令だった。 ------- ◆【銀の月のものがたり】 道案内 ◆【第二部 陽の雫】 目次 そういえば昨日の【双極】で。 神殿から軍部なんて、なんでそんな極端かな~、大変な人だよな~(←他人事)と、書いたときは思ってたんですよね。 ところが・・・ どっかの記事にも書きましたけど、遠足前のヒーリング三昧のとき。 もうどうしても、どうーーーーーーしても剣を振り回したくなり、対戦相手募集なんてしてしまったのです。 誰かを傷つけたいわけではなくて、剣の試合をしたくてたまらず。 理由はよくわからないのですが、おそらくバランスを取ろうとしたんでしょう。 いてもたってもいられない、という感じで…。 そのときに、ああこの人は本当に私なんだな、と思ったのでした。 その対戦の様子は、クリロズのトールに関してはカヤさんが 「激闘!トールさんvs雪鷹inクリロズ-1 」 (3話まで) http://plaza.rakuten.co.jp/moesupi/diary/200912160001/ で、ブルーヤロウのアルディアスに関してはたかさんが 「水晶薔薇庭園館綺譚 24 11月6日の手合わせ1」(3話まで) http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-188.html で書いてくださってますのでぜひどうぞ♪ 楽天のほうも、携帯で見たときちゃんとリンクに飛べるようになってて嬉しい! とりあえず自分のブログ内日記だけで他所に飛べるか知らないのですが^^;でも確かちょっと前まではエラーになってて、せっかく目次作っても使えなかったような気が。。 なんて不便なんだー、と思ってた記憶がありますので、まずはよかった♪ ご感想大募集中です~!! お返事なかなかできなくてごめんなさいですが… 書く原動力はご感想なのです~ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪ 12/29 ご先祖様一斉ヒーリング
2009年12月26日
コメント(6)
二人を森から帰して神殿に戻ったアルディアスは、神事のための潔斎を続けていた。 力を使うことにも、大きなエネルギーを降ろすことにも、もう昔ほどの恐怖や違和感はない。慣れとはたいしたもので、身体に影響が出ることもなかった。 ただ十三歳のあの高熱の後から、食べる量は極端に減った。それまでは育ち盛りの男の子として相応によく食べていたのだが、その後は一人前なくてもいいくらいだ。 空腹感がそもそもなくなり、一食や二食抜いてもどうということはない。食べられないわけではないが、誰かに言われなければ忘れていることもある。 といって背が伸びるのが止まるわけでもなかったし、肩幅もそれなりに広くなった。成長が止まらなかったから余計に、量が減った後しばらくは、自分がだんだん人でなくなる気がして怖かったものだ。 ひとり瞑想を始めた彼の意識は広がり、ちらちらと飛び始める。それをただ眺めていると、場面は過去に戻っていった。 十五の春。 次代の大神官と決まって二年後、とある深夜に彼は人知れず神殿を飛び出した。 神を降ろすのが嫌になったわけではない。 むしろその逆だった。他の人に聞いてもわからないと言われる、確かな手応えと不思議な高揚感。 それは快感とすら言えそうな感覚で、そこに浸りきってしまうことが怖かった。 神殿にいるとどんどんと食べなくなり、どんどんと自分が透明になってゆくのがわかる。 それは神に近づいてゆくことであり、同時に人間から離れてゆくことでもあった。 神殿の者たちはその境地を目指しているともいえるのだが、そのたびに喪ったものが頭をよぎり、たかまる高揚感に身を任せるのを止める。 彼はたぶん、人が好きだったのだろう。 人でいたいと思っていた。 そして少年は神殿を抜け出し、その足で軍部へと身を投じた。 なぜいきなり軍隊だったのか、彼自身にもよくわからない。 長らく神殿で暮らしていた世間知らずの少年が、簡単に間違いなく食べてゆける場所だったということもある。 一番下っ端の二等兵ならば、軍律さえ守って目立たなければ、出自を詳しく詮議されることはほとんどなかった。 しかし、初めて戦場で人を殺めた晩は、吐いて眠ることができなかった。 浴びた返り血が洗っても洗っても消えない気がして、断末魔の声と最期に彼を見返した虚ろな瞳も忘れられない。吐くものがなくなっても一晩中狭いベッドの上で輾転反側して、目の下に大きな隈をつくって翌朝の訓練に出た。 「初めは誰もがそうなるのさ、フェロウ。それに、そうでなきゃ人間じゃない。お前は人間だったってことだよ」 先輩兵士が言った。悲しいことだがいずれ慣れる、それが戦争ってもんだ、と。 人間、なのか。自分は。 そうなのか、とアルディアスは思った。 「苦しみを与えるその相手にも、愛する人がいて、父がいて母がいる……」 神殿でいつも唱えている言葉を持ったままでは、戦場で生き抜くことはできなかった。血なまぐさい剣をふるって相手を倒さなければ、自分がやられる。 しかし彼は最期まで、それに完全に慣れるということがなかった。 自らが殺めた人の魂が、恨めしげに自分の回りをまわっているのがわかる。折々に慰霊の祈りを唱えながらも、責任を転嫁して自分が犯した罪から逃げる気は、彼にはなかった。 どんよりした澱のような罪が、つねに彼を苦しめる。けれども皮肉なことに、その苦しみそのものが彼の魂の重石となり、神殿から離れて人でいつづける手段となった。 そして二年が経ち、そこそこの軍功もあげて曹長に昇進していた彼を、ついに神殿が探し出した。 愛を説く神殿といわば対極にある軍部に身を投じた彼は、当然放逐されると思っていた。 けれども予想に反して、わざわざ彼のいる基地までやってきた大神官は、アルディアスに帰ってくるようにと諭した。 帰れば人でいられません、私はそれが恐ろしいのです。 優しい老人の目を見て、銀髪の青年は言った。軍隊で過ごした二年間が、穏やかな風貌の彼に鍛えられた精悍さを加えている。 白髪の大神官はしばらくじっと彼を見て、それからゆっくりとうなずいた。 「アルディアス、お前には巫覡としての才能がありすぎる。それは辛いことでもあるだろうの。 大神官とは、神と人との橋渡しをする者じゃ。つねに自らを律しようとするその姿勢は、やはり役目に適っておるよ。 よろしい、苦しいことじゃろうが、普段は軍籍にありなさい」 アルディアスは目を瞠った。 彼が強いサイキックであることはその頃には知れていたから、軍部も手放すのを渋ったのだ、とは後で聞いた話だ。神殿としても、次代の大神官として二年の間探し続けていたものを、いまさら放る気はなかったらしい。 そんな水面下のやりとりをも経て、彼の軍籍は神殿公認となり、アルディアスは一度士官学校へ入学することになった。 普段は軍人でありながら、ときに神官として神殿に戻る。 双極を抱え込んだ生活の始まりだった。 いや、双極は元々彼の内部にあるのだ。燃えさかる焔と凍てついた氷、それらは最初から彼の中にあり、神殿と軍部という両極端の形をとって生活に現れてきたにすぎない。 ……なんという罪深さだろう。 人の死の上になりたつそれを、そしてさらに神官という立場に立つ自分を、アルディアスはひどく嫌悪した。 それでも双極を抱いて生まれた彼は、そうでなければ、どちらかに偏っては人でいることができなかった。 つねに分離してゆく自分。 自分がひとりなのかどうかさえ、時にわからなくなることがある。 彼はたまにすべてを投げ捨てたい衝動に駆られることがあった。 肩にのしかかる重い責任も、自分の命さえどこかに振り捨ててしまいたくなる。 それが叶わぬのは、備わっている責任感のゆえでもあった。 思考の迷路にはまりこんだことに気づいて、アルディアスはふうっと息をついた。 心を切り替えると、今度は今日のできごとが浮かんでくる。 リフィア・ルーテウス…… 直訳すると黄金色の生命という意味になるな、と彼は思った。 たしかに透き通って、きらきらした印象的な明るい黄緑の瞳。 まるで陽の雫のような。 手をとったあの一瞬に、よぎった思いはなんだったのだろう。 なにか聞こえたような気もしたけれど、かすかなさざなみはもう追うことができなかった。 双極、統合、灯台? わからない。 軽く頭を振って、アルディアスはもう一度心を切り替えた。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/年の瀬って皆さんお忙しいでしょうから、更新しないほうがいいのか お正月に楽しんでいただけるようアップしておいたほうがいいのか悩むところなんですが 笑 とりあえず、じれじれしてる方がいらっしゃるようなのでアップします… ってこの話ではぜんぜんまったく進展してませんけど(爆 や、付き合いだす?のもプロポーズしたとこも、もう書いてはあるんですけどね~ 更新のタイミングの問題なのです^^; ご感想大募集中です~!! お返事なかなかできなくてごめんなさいですが… 書く原動力はご感想なのです~ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪ 12/29 ご先祖様一斉ヒーリング
2009年12月25日
コメント(6)
ほんとは物語をアップしようかと思ってたんですが、あんまりイブ向きじゃなかったので後日にまわして^^;あの人たち、今年中に付き合いだすところまで辿り着けるんだろうか・・・謎・・・(爆イブの今日、上の人(トール)は朝からステーションの警備に駆り出されているようです。ロマンチックもなにもないですねw夜は夜で、ステーションのメインパーティに 仕 事 込 み で 呼ばれているみたいですけど。出席して、なんかあったら待機しててね♪みたいな。。アルディアスはステーション勤務してないからまたーりしてるかと思いつつ、この人はこの人でなんかやってる模様。よくわかりません。 ←ま、神官職だからなんか用事があるのかも? (適当そんなこんなで、今回はちょっと早めに来週火曜のヒーリング募集をかけておきます~年の瀬ですしねw今年はこれで終わりね♪と思ったあなた、元日にもなんかやろーかなーとか考えてますので、まだまだブログはチェックしててくださいね 笑なにしろいつも気分でやってますからwwwそれでは皆様、よいクリスマスをお過ごしください♪さーてちびリクエストの鶏の唐揚げつくろwよろしかったらぽちっとお願いします♪→★リアルタイム日時 2009年12月29日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~12月31日(木) 朝5:30開始までの間の1時間 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪
2009年12月24日
コメント(292)
「ねえリフィア、よかったわよね。長期休暇が大祭の時期にとれるなんてラッキーだわ」 「ほんとね。夕方になったら出店が出てくるから、それまでどこかで涼みましょうよ」 サマーニットのワンピースを着たリフィアと同僚は、楽しげに喋りながら大神殿の外苑を歩いていた。 中央の大神殿で行われる毎年の例大祭は、この星でいちばんのお祭りだ。だからどこの職場でも、このときの休暇は奪い合いになる。 早春の古書店巡りから、また一年以上も経った夏の盛り。 強い夏の日差しを避けて外苑の森に入ると、さあっと涼しい風が吹き抜けた。 「ああ涼しい。緑の匂いがする」 リフィアは息を吸って大きく伸びをした。白い編み上げ風のサンダルで、苔むした土を踏んでゆく。 森の中は、外の喧騒もまったく届かない別世界だった。少し歩いただけで祭りの賑やかさは遠くなり、涼やかな空気が肺を満たす。 すこし離れたせせらぎの音に導かれ、彼女たちはきゃいきゃい言いながら森の奥へと入っていった。 「見て! 綺麗な水。ほら魚が泳いでるわ」 先に小川に着いたジェズが叫ぶ。緑の中の岩場を流れる水は冷たく、足をひたした彼女は喜びの声をあげた。 追いついたリフィアも、暑くなって脱いだ薄手のボレロを手近な岩の上に置き、裸足になって足を入れる。 歩いてほてった足に、冷たい水が気持ちよかった。 二人はそれぞれ岩に腰かけ、足を流れにひたして透明な冷たさを楽しんだ。 禊のために上流にいたアルディアスは、少し離れた場所で高い声のさざめきが聞こえることに気がついた。 驚いて目を閉じ、結界を確認したが破れはない。 しかし禁足地に入ったことが見つかると大騒ぎになるから、彼はその声のするほうに歩いていった。 背の高い茂みを回り込むと、二人の若い女性が小川ではしゃいでいるのが見える。 「お嬢さん方、ここは禁足地ですよ」 驚かさないよう、穏やかに彼は言った。 最初に気づいたのは向こうだった。 「……アルディアスさま!?」 こちらを向いていたジェズがびっくりしたような声を出す。それを見て、彼女達が軍で見かけた総務課の子だと彼も気がついた。 アルディアスが大神官の籍を持っていることは隠さぬ事実だが、軍服の時しか彼女たちと会ったことはないから、禊用の神官服を着た今は驚かれても当然だろう。 振り返ったリフィアも驚いた顔をする。 「とりあえず上がってください。誰かに見つかると大変ですよ」 アルディアスは近場にいたリフィアに手をさしのべた。何も他意があったわけではない。 けれど、初めて二人手をとったその瞬間。 まるい水滴がはじけるように、相手が昔夢で遊んでいた名も知らぬあの子だと、互いに気づいた。 藍と金緑の視線がぶつかる。ハートから何かが解放されたような繋がったような感じがして、思わずリフィアは時を忘れた。 カレ ト ワタシ ハ …… ダ。 そんな言葉が一瞬脳裏に聞こえたが、……にうまく相当する単語が見つからない。 けれど、知っている。 このひとを知っている。 おととしの早春パーティで初めて出会った、そうではなくて。 もっとずっとずっと昔から、きっと。 触れた手から何かが重なる。 手をとられたまま踏み出そうとして、足元の岩ごと滑り大きくよろける。 咄嗟にアルディアスは掴んでいた手を自分のほうにぐいと引いた。彼女の体を抱き寄せた格好で、勢いあまって岸辺に背中から倒れこむ。 反射的に張ったサイキックフィールドが、空気の網のように柔らかく二人の体を受け止めた。 腕の中の感触に、彼は戸惑った。なんとも懐かしい、おさまりのよい暖かさ。初めて触れたはずなのに、ここにあって当然という感じさえする。 しかし遠くに巡回する衛士の気配を察して、感覚を追う間もなく彼は身体を起こした。 とりあえず、二人に禁足地にいたことは忘れるように軽い暗示をかけて森から帰す。 何が起こったのかすべては理解できぬままに、アルディアスもすぐその場を後にした。 「大神官さま、禁足地の森に侵入者があったようです」 神殿に帰った彼に、ひとりの衛士が進み出た。 「私は見なかったが。大事ないか」 「はい。荒らされてはおりませんでしたが、岩の上にこれが落ちておりました」 衛士は女物の白い上着を広げてみせた。アルディアスはかすかに目をすがめた。あれはきっと彼女のものだろう。禁足地への侵入は大罪だから、ここにあれば、気配を探って罰則を、と面倒な問題になるに違いない。 「そうか。では、私が預かって気配を追ってみよう。結界には問題ないから、衛士が責められることは何一つない。下がってよろしい」 そう言うと、アルディアスはさりげなくその上着をとりあげた。かえってほっとした表情を浮かべて衛士が去る。 扉が閉められ、部屋に一人になると、アルディアスはその上着をたたんで両手に持った。 何度か会話したことのある端末回線から、ルーテウス伍長の机を特定する。自宅は知らないから職場あてになってしまうが、仕方がない。 両手をふいと持ち上げると、白い上着はリフィアの机の上に届けられた。 休暇を終えて出勤したリフィアは、机の上にたたまれている自分のボレロを見て首をかしげた。 大祭の人混みでなくしたと思っていたのに、なぜここにあるのだろう。 二つ隣の席では、ジェズがアンナと森を歩いたときの話をしていた。 「それで、とっても綺麗な蝶を見たのよ。それがすごく素敵で」 「ええ? アンタ虫全部嫌いって言ってたじゃないの」 「そういえば……でもそうよね? 綺麗だったわよね? リフィア」 話を振られて、リフィアは曖昧にうなずいた。 (違うわ。そうじゃなくてえーと……? あれなんだっけ? 誰だっけ? ここまででかかってるのに) 同僚の話に適当に相槌をうちながら考える。 そう、なにか大切なことだった。とても。 軽々しく茶飲み話にしたいようなことじゃない。だからいいような気もするけれど……なんだったかしら。 無意識のうちに、リフィアは自分のハートに手をあてていた。 思い出せないなにかに触れようとするかのように。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/ご感想で、「この二人にはぜひゆっくり進展してほしいです」とかいただいておりますがこの頃って年に一度くらいしか会っていなくて。それも偶然。端末でたまーに会話はしてるんですが、「ご要望ありますか?」「ありません(にっこり終了)」なので・・・。気づくと年が変わっているという 爆ご感想大募集中です~!! お返事なかなかできなくてごめんなさいですが… 書く原動力はご感想なのです~ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪ 12/22 ご先祖様一斉ヒーリング
2009年12月22日
コメント(8)
銀髪の少年がベッドに横たわっている。 身体が熱い。 特に耳たぶに開けた穴がひどく疼く。無意識のうちに手で小さな石のついたピアスをむしり取ろうとすると、その度に誰かの手に止められた。 頭を挟む位置にクリスタルを身につけること、しかも四六時中外さずにいることは、神官としての能力を向上させる方法のひとつとなりうる。 神殿の医術の心得のある者によって開けられた穴は、きちんと血管も神経網も避けていたため、痛みもたいしたことはなく血も出なかった。 しかし一ヶ月以上も経って、最近その穴に血がにじむことが多くなった。 それは珍しいことではないらしく、高熱を発するアルディアスに付き添っていた壮年の巫女は、慣れた手つきで布に消毒液を含ませ、その血を拭き取っていた。 身体に過負荷がかかっているのだ。 神降ろしの才能はなかったが、その分医術の専門家として何人もの看護をしてきた女は思った。 まだ十三歳にしかならない、幼さの残る少年を見やる。 この歳であれだけのエネルギーを降ろすのは、やはり才能としか言いようがない。しかし同時に、まだ完成しない肉体にかかる負荷も並大抵のものではないだろうと思われた。 熱い。熱い。 真っ白い世界にアルディアスはいた。 自分の上に降りてきた、真っ白で強烈な光のかたまり。世界を漂白するような強さで、光は彼の身体と魂を灼いた。 他に呼びようがないから光と呼んでいたが、そこには光も闇も善も悪もなかった。何もなく、そしてすべてを含んで、ただただ大きな振動が、エネルギーが存在していた。 神殿に来てすぐは、自分のエネルギーを制御することを中心に教えられた。それを習得し、十歳のころから今度は積極的に使うことを覚えはじめた。 そして三年。 年老いた白髪の大神官は、これは試験である、と言った。 これを通ったなら、この者は次の大神官になるであろうと。 アルディアスは普段は大神官その人しか近づけない奥の院に連れて行かれ、神降ろしの秘事を教えられながら執り行った。 ……結果、神は降りた。 祭礼の近づく夏のある日、真白の光が大きく神殿を照らす。 この星を支える、次の大神官が決まった瞬間だった。 史上最年少ともいえる資格者の誕生に、神殿は沸いた。けれども当のアルディアスは……とりわけ嬉しいと思ったわけではなかった。 元々、信仰心あって神殿に入ったわけではない。現れはじめた彼のサイキック能力に対応しきれなくなった両親が、五歳のときに預けたのが始まりであったから。 こんな能力なんてなければいいとずっと思っていたから、力の制御に関する勉強には最初から真面目に取り組んだ。 しかし力は消そうとすればするほど彼を苦しめ、逆に使いこなすしかないのだと、あらゆる機会をもって教えられた。 そして、半分嫌々ながら研鑽を積んだ結果のことだった。 曇りない大きな光は、アルディアスの内外を白く染めあげてゆく。 夢の中まで真っ白だった。 浅い息の下、太陽がいっぱいに照らしているような白い夢の世界に少年は立っていた。 ふと誰かの気配がして振り返る。 「だれ?」 呼びかけに応じたのは、自分よりも少し小さな女の子だった。十歳くらいだろうか、金茶の髪をふたつに結んで、きれいな目で彼を見ていた。 知らない子にも物怖じせず、あそぼ、と彼女は笑った。 どこの妖精だろう。いつだったか、まだもっと小さい頃に神域の森で会ったことがあるような気がする。 何もない白い世界で、その子の存在はとても温かかった。 「うん、あそぼ」 アルディアスはその妖精の手をとって歩いた。行けども白い空間は、何もないようでいてすべてが内包されていた。 どこに隠れたのだか判然としないのに、かくれんぼも鬼ごっこも宝探しもできる。 少年と少女は、互いの名も知らぬままに手をつないで遊びまわり、笑いころげた。 日なたぼっこをするように暖かな世界だった。 神さまってこういうものなのかな、と少年のアルディアスは思った。 ただただ暖かいお日様のようなもの。 誰かと笑いあう幸せのようなもの。 それを皆に届けるのだったら、大神官とやらになってみてもいい。 浄化作用で熱が出ても、今はとても楽しいから。 この子の笑顔が嬉しいから。 「リフィア、リフィア」 呼ばれて、少女はベッドの上で目を開けた。 「よかった、ようやく熱が下がったわね」 見慣れた部屋の天井に、母親と兄妹たちの顔。母親は冷水で絞ったタオルを少女の額に乗せながら、あなたは原因不明の熱で寝込んでいたのよ、と微笑んだ。 「あのね、お日様のいっぱいな場所でね、知らない子とたくさん遊んだのよ」 喉の渇きを覚えながらリフィアは言った。 そう、よかったわね、と母親が答える。熱にうかされて見た夢だと思われていることが、少女にもわかった。 半身を抱え起こされ、白湯を飲ませてもらいながらリフィアは考えた。 たしかにここは自分の家だ。 あの白い場所はどこだったのだろう。 あの銀髪の子は、見えない妖精かなにか? それまで彼女はよく、神殿の外苑の森で遊んでいた。神域の森まで入り込んでしまったこともある。 そこには、目に見えないような友達もたくさんいた。 普通の目に見える友達ともよく遊んでいたから、誰にも不思議がられたことはない。交友関係が広いと親も思っているだけだろう。 しかし、そろそろ物語の森を卒業する時期が近づいていた。 十歳になると、商家の子供たちは皆習い事を始める。 高熱は熱射病でしょう、と医者は言った。 その熱とともにただ遊んでいればいい子供時代は終わりを告げ、リフィアは現実の世界に帰るとともに、見えない友達やその少年のことはすっかりと忘れていった。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/ピアス、実はこの夏に開けました。ずっと悩んではいたんですが、日蝕前に、なんか開けなきゃいかん気がして 笑 イヤリング苦手だったので、シンプルに石を身につけられるのがよいですね♪ ただ・・・失くすからな、私… orz ご感想大募集中です~!! お返事なかなかできなくてごめんなさいですが… 書く原動力はご感想なのです~ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪ 12/22 ご先祖様一斉ヒーリング
2009年12月20日
コメント(7)
あら、来週の火曜日は冬至だったんですね~。 ←今知った人 爆かぼちゃはあるから、柚子買ってこなくちゃwなんかバタバタしていて、日にちと曜日が一致しておりませんでした^^;ちびも熱出して咳き込んでいたり、調子崩しているひとが周りにも多いかな?というこの頃。やっぱり寒いですしね~。雪が降ってるところも多いそうですね。このあたりはまだ降っていないですが、そのうち降るのかな~。3月に引っ越すまで暖かいところにいたので、さむー!と思っております 笑地震の起こっているところもありますし、年の瀬にむけてどうか皆様お体大切にお過ごしくださいませ。恒例の火曜ヒーリングは、ご先祖様二回目。寒さの折、温泉気分でまたーりとおくつろぎください♪☆尊敬する石魔法使いのカヤさんが、ちょっと前にトールとクリロズで対戦したときのことを素敵物語にしてくださいました~♪雪鷹さんカッコいいですwwwよろしかったらぜひご覧くださいませ♪→「激闘!トールさんvs雪鷹inクリロズ-1 」 「激闘!トールさんvs雪鷹inクリロズ-2」 「激闘!トールさんvs雪鷹inクリロズ-3 」これねえ・・・遠足前で、1週間に4つとか一斉ヒーリングをしていたら、どうにもバランスが悪くなったのか(笑)どーーしても上で剣試合をしたくなり、mixiで呟いたら皆さん参戦してくださってwその時のお話なのです。アルディアスも、神殿だけにはいられなかった人でしたがやっぱり私もなのね…と思ったことでした^^;☆よろしかったらぽちっとお願いします♪→★リアルタイム日時 2009年12月22日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~12月24日(木) 朝5:30開始までの間の1時間 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。☆ゲリラ開催☆12/18~12/27 世界の祝福♪
2009年12月19日
コメント(290)
冬至&クリスマス&一斉ヒーリング2周年記念企画です☆そうなのです~。毎週火曜の一斉ヒーリングも、おかげさまで2周年となりました♪その間一度も休まずやってこられたのも、楽しんで受けてくださる皆様のおかげ。どうもありがとうございます!ヒーリング回数も140回になりますから、ええと、一ヶ月に4~5回だとして×12だと約50回、それが2年で100回・・・あれ? 私ったらほぼ三回に一回の割合でゲリラ開催してる?wwwま、楽しいからいいですね 笑そしてお礼企画をどうしようかな~と考えていて、出てきたキーワードは「祝福」で。クリスマスだし、「天使の祝福」にしようかな? いやいやそれだとなんか足りない気がする。冬至だしなあ、「光と闇」・・・うーんそれだけでもなくて。そうだ、「世界」にしよう♪♪ ・・・と思いつきましたw「世界」って、タロットだと完成とか、円満とか、満ちる愛とか、とにかくこれが出たら安心していいかもっていうくらいのいいカード 笑でもきっと、私たちを取り巻く世界というのはそういうものなんでしょう。三次元に生まれるというのは、ものすごく競争率の高い難関であるとも聞きます。きっと誰もが、あらゆる次元のあらゆる存在からたくさんの祝福を受けて、この地球に生まれてきたのでしょうね^^人は、自分の道を自分で歩くしかなくて。それは誰にも代わってもらうことはできないし、どんなに心配しても代わってあげることもまたできなくて。だけど、「ひとりで立って歩く」、それが大前提だとしても、その道は孤独ではないのだと思います。見える存在も見えない存在も、きっと気がつかないだけで、たくさんの暖かい想いが今ここのあなたを取り巻いているのでしょう。誰にも愛されずに生きた、そう思っていた生でさえ、気づけば暖かい眼差しがありました。渦中で苦しみの経験を積んでいるときは必死で気がつかないですが、本当はそんなものなのかもしれませんね。夜が一番長い・・・つまり光の生まれる日、冬至。クリスマスも、もともとはそのお祝いだったとかどこかで読んだような。でもこれも、大々的なお誕生日のお祝いですよねwそれから大掃除の季節でもありますし・・・w不要なものを手放して、今ある大切なものを改めて抱きしめて、そして新たなステージへ。あなたを包む世界の祝福とともに、そんなお手伝いができたらいいなあと思いました^^・・・とか考えていたらですね。以前もご紹介したたみえさんが、「冬至のお祈り」を企画されました♪これが~コンセプトとかほとんど同じで笑ったのですがwww上で打ち合わせでもしたのでしょうね、きっと 笑光の珠でのお祈りも歓迎♪ということですが、この珠というのは、以前一斉ヒーリングでも作ったことのある、「持ち主の愛や祈りを増幅して光り輝いて、この世界のグリッドの一部になる」というものでアストラルの身体のどこかにつけておけます。もちろん珠がなくてもお祈りだけで十分世界の輝きにはなるのですが、あったらちょっと嬉し楽し♪というアイテム。というわけで、せっかくなので今回も珠、つくっちゃいます♪球もちさんもまだの方も、欲しいなって方はヒーリング受け取りのときに「私は私の光の珠も作ります」って宣言してみてくださいね。ハイヤーさんと天使達と一緒に作ってもいいし、天使たちからお好きな場所につけてもらってもOKです。いくつお持ちでもいいですよ~wヒーリングを受けていただくときでも、肯定的な表現で(らぶ!とかビバ平和!とかでもw)ひとことでも祈っていただけましたら、それを世界の循環に戻します。世界からはまた、らぶらぶの祝福が(笑)めぐって皆様に届くことでしょう♪たみえさんのお祈り会は、冬至の日終日になります。日にちをお間違えのないように、ぜひぜひご参加してみてくださいね♪http://smalltamiel.blog82.fc2.com/blog-entry-193.html 応援してくださってありがとうございます♪→★ヒーリング期間本日この記事がアップされてから~12月28日(月)日本時間朝6:00まで 1回30分(募集も同じく)期間中、何度でも好きなだけコールインでお受け取りいただけます。 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★参加ご希望の方は最初の一回のみ、この記事かmixiの同名記事のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をたくさんとられることをお勧めします。★1円募金や誰かに何かをする、掃除する、ご感想をいただくなど、なにがしかの行動をされるとエネルギーの循環がよくなり、よりヒーリングが効きやすくなります♪★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。
2009年12月18日
コメント(473)
翌朝待ち合わせの場所に行くと、アルディアスはすでに白い息を吐いて立っていた。 支給品の、グレーのロング丈のトレンチコートに黒い皮手袋と編上げの長靴。モノトーンの服装に、長身の背にかかる青みがかった長い銀髪がとても映える。 通勤用の白いAラインの膝丈コートを着たリフィアは、やっぱり変に色気を狙わなくて正解だった、とほっと息を吐いた。 「すみません。待たれましたか?」 「いいえ、私も今着いたんですよ。ウォーキングシューズを履いてきてくださってありがとう」 リフィアの足元に目を留めて、ふっとアルディアスは微笑んだ。素っ気無い軍用品を身に纏っているのに、ちっとも軍人らしく見えないという人も珍しい。 「歩くのがお好きなんですか?」 並んで歩き出しながらリフィアは尋ねた。 「ええ。ただ、他の方とはどうも距離が違うようでしてね。一度友人と歩いて怒られたことがあるんです」 「なんて?」 「お前にはついていけないって。今日も、足が痛くなったり疲れたりなさったら、すぐにおっしゃってくださいね。遠慮はいりませんから」 銀髪の男は冗談めかして笑った。歩くのが好きという割に歩調がゆっくりなのは、リフィアに合わせてくれているかららしい。 彼の案内で最初に入ったのは、大通りを渡って右に曲がったところにある宗教系の専門店だった。 「アル、久しぶりじゃないか。いい本入ってるぞ」 毛糸の帽子に眼鏡をかけた店主らしき小さな老人が、アルディアスを見て気安く声をかけてくる。隣のリフィアの姿をみとめて、老人は感心したような顔をした。 「おお、別嬪さんだな。やるじゃないか、この」 「こんにちは、おやじさん。こちらは軍の支援担当の方ですよ。若いお嬢さんなんですから、変な噂立てないでくださいよ」 「なんだ、お前のコレじゃないのか、アル」 「残念ながらね」 アルディアスが微笑んだので、リフィアは思わずどきっとした。しかし挨拶はすぐに終了したらしく、二人はすでに分厚い本を前にして話し始めている。 店の中で、オパレッセンスのような白い光が彼を丸く取り巻いていることにリフィアは気づいた。オーラが見えているのだろうか。 それにしても、熱心にページをめくる軍コート姿が、どうにも怪しい古書店の雰囲気にはそぐわなくてつい笑ってしまう。待ち合わせ場所では際立って素敵に見えたのに。 (いけない、仕事仕事) リフィアは笑いを抑えると手帳を取り出して、店の名前と場所、それに取り扱い内容を書き留めた。店内を見回して、見つけた連絡先番号も書いておく。これで今後アルディアスから要望があっても応えられるだろう。 アルディアスはそこで二冊の分厚い本を買い求めた。会計をすませて店を出ると、両手で本を胸の前に持ち、ふっと持ち上げる動作をする。次の瞬間には手の中には何もない。 いきなり手品を見せられたようで、リフィアは目をぱちくりさせた。 「……どこへ?」 「泊まっている短期宿泊所の机の上へ」 アルディアスは片目を閉じてみせる。自分ひとりなら大きくて重い本を何冊持ち歩いてもどうということはないが、彼女と一緒ではさすがに気を使わせるだろうと思ってのことだった。 二人は次に、古書店街でも有名な書店にむかった。一階はリフィアも来たことがあったが、アルディアスが向かったのは細い階段を上った二階の希少本コーナーだ。 中央のガラスケースに、手書きらしい古い本や図録が入れられて美術館のように陳列されている。 リフィアは目をすがめて手書き本を見つめた。全体でひとつのオブジェとするととても美しいから、おそらく書き手は字が上手いのだろうと思う。思うのだが、リフィアにはちっとも読めない、というよりも字にすら見えなかった。 「……ミミズの寝言みたい」 ほんの小さな声で呟いたつもりだったが、すぐ隣で同じ本を見ていたアルディアスには聞こえたらしい。おかしそうにくすりと笑う声が聞こえた。 「たしかにそうですね。……これはね、私たちの文明のはるか前にあったと言われる、古代語で書かれているんです。タイトルはここ、『契約と召喚の魔法について』」 「これが読めるんですか?」 心底びっくりしてリフィアは背の高い男を見直した。ええ、神殿で習いましたから、とこともなげに彼は微笑む。 そして店主の中年女性を呼ぶと、その本を出してもらってページを繰り始めた。その真剣な様子から、本当に読めているらしいとリフィアは思った。 こんな古代語の、それも手書きの希少本ならば高いはずだ。魔法系の専門書は軍の支出対象になるが、アルディアスが私費で払ったのを見て彼女は不思議に思った。 「いくらなんでも、古代語までは軍で教えることはないでしょう。これはいずれ神殿の後輩に読ませますよ」 尋ねるとそういう答えが返ってきた。 彼はその本もふいと手品のように消して、今度は裏通りから表に向かって歩き出した。先ほどとは違う宗教書専門店。ここでは何冊かぱらぱらと見ただけで何も買わなかったが、リフィアはしっかり店名等のチェックをしておいた。 気づけば陽がそろそろ中天にさしかかる。眩しそうに空を見上げ、腕の時計を確認してアルディアスが言った。 「そろそろ昼にしましょうか。何か食べたいものはおありですか?」 「いえ、このへんのお店でいいです。ええと……あそこのオープンカフェとか」 リフィアは適当に目についたカフェを指さした。街路に出ているテーブルに席を占める。寒くはありませんか、と聞かれて彼女は首を横に振った。空気はキリッと冷えていたが、たくさん歩いたからか寒くはない。 そこでバケットサンドイッチと暖かい飲み物の軽食をとってひと休みし、二人はまた歩き出した。 今度は占星術や運命学の専門古書店へ向かう。黒い布をしいた棚に、水晶球やカード類の道具もたくさん並べられてあった。本物かしら、とリフィアが見ていたのがわかったのだろう。全部本物ですよ、とアルディアスがささやいた。 「アルディアスさまも占いをなさることがあるんですか?」 神殿の神官たちが占いもするのを思い出してリフィアは聞いてみた。 「頼まれればやることもありますが……。自分ではあまりやりませんね」 それほど未来を見たいとも思いませんので、と意味深げな瞳で彼は笑った。その意味を尋ねるのもはばかられて、リフィアは曖昧にうなずいて棚に目を戻した。 一番高いところに、綺麗なステンドグラスの図録を見つけて手を伸ばす。しかし爪先立ちになっても、本の下端にちょっと触れるくらいでどうしても届かない。 「これですか?」 足台を探して左右を見る前に、アルディアスが背後からその本を取ってくれた。戻すときにはご遠慮なく、と笑う彼に礼を言ってページを繰ってみる。色とりどりのステンドグラスがフルカラーでたくさん収録されており、とても美しい。 ほくほくした気分で、リフィアはその本を買い求めた。 店を出てから、持ち手なしの薄い紙袋に入れられたその大きな図録が自分の鞄に入らないことに、リフィアは改めて気づいた。小脇に抱えるにも重いし、悩んだあげく両手で胸に抱くようにして持つしかないかと思っていると、横から黒革の手袋をした大きな手が伸びてきてひょいとその荷物をとりあげた。 「お持ちしましょう」 「いえ、そんな、申し訳ないですから」 「重いものは慣れていますからご心配なく。私は手ぶらですし、こういうものは時間が経つほど重くなってきますからね」 自分の本は例のごとく消したらしいアルディアスが微笑む。すみません、と恐縮するリフィアに、彼はもう一度微笑んで言った。 「そろそろ足も痛むでしょうから、お茶でも飲みましょう」 どうやら彼女が、待っている間に足の爪先を上げたり下ろしたりしていたのに気づいていたらしい。大通りに出てすぐにあったオープンカフェで、外でいいと言うリフィアにうなずくと、椅子をひいて座らせてくれた。 暖かな紅茶とちょっとした甘い物をはさんで、しばらく雑談して小休止する。アルディアスは人の話を聞くのがうまくて、一緒にいても楽しかった。 小さなケーキを食べ終わった後、リフィアは口紅を直しに少し席を外した。 鏡を使いながら、なんだか大変な人よねえ、と思い、大変の意味もいろいろよね、と鏡の中の自分に笑ってしまう。 全部が神秘的なのではなくて、本心がわかりにくいだけなのだろう。 席に戻ると、アルディアスは椅子の背によりかかり、ぼんやりと風でも見ているようだった。横を通り過ぎた女子達が、きゃ、という感じで互いにつつきあって振り返っている。 早春の風が長い銀髪をなびかせ、こういう風情でいれば彼女たちの反応自然よねえ、とリフィアはしみじみ思った。古書店では周辺状況が怪しすぎるのだ。 お疲れでしょう、もう帰りますか、と言われて彼女は首を横に振った。アルディアスは明日には任地に戻るのだから、ぎりぎりまで色々回りたいに違いないと思ったからだ。 しかし、五軒目の心理・精神医学・魔法系の絶版書を扱う書店、六軒目の自然科学系の学術書専門店ときて、リフィアの体力も限界になった。 見れば外はもう暗い。おそらくお礼とお詫びのつもりなのだろうが、物柔らかな夕食の申し出を、アンナの顔を思い浮かべてリフィアは辞退した。 アルディアスは嫌な顔をするでもなく、リフィアの家のある地域を聞くと手をあげてタクシーを止めた。運転手に何か話してカードを出し、先に会計をすませる。 座席におさまった彼女にステンドグラスの図録を返して、今日はどうもありがとう、お疲れ様でした、と彼は微笑んだ。その銀髪に月光がきらめいて、今夜も満月だったのだと知る。 「こちらこそ稀有な体験で楽しかったです。これからは、ご本の注文が来てもタイトルが読める物なら受けられますわ」 「そうですね、お願いすると思います。ではどうぞお気をつけて」 「アルディアスさまも」 早春の夜風が彼の髪をなびかせるのを後に、タクシーが走り出す。しんと冷えた空気の中に立つ彼は、やっぱり際立って素敵に見えるとリフィアは思った。 それから時折、彼女はアルディアスの担当として本の発注と受取をするようになった。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/実は私、学生時代にほぼこれと同じルートで神田の古書店めぐりをしたことが・・・。もちろん貧乏学生でしたので、稀少本コーナーとかは行きませんで一般古書でしたがw心理学だのなんだの専門の怪しい本屋さんは行ってましたねえ。ひとりで。ほんとに丸一日歩き倒して。なので、リフィアさん本体さんに話を聞いたときは吹きました。昔も今も同じことやってんのね・・・(遠い目ご感想をくださる皆様、本当にありがとうございます!! なかなかお返事できなくて申し訳ありませんが、いただくと小躍りして喜んで 次書こう~♪ってなりますので(←単純w ぜひぜひがんがんコメントしてやってください♪ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→
2009年12月16日
コメント(7)
アルディアスとふたたび会ったのは、あの満月の日から一年近くも経ってからのことだった。 少佐に昇進した彼は地方赴任になり、遠い場所にいた。 リフィアは変わらずに生活支援担当をしていたが、中央の単身寮にいてさえ何も要望がなく連絡をしてこなかった彼のことだから、わざわざ地方から何か言ってくるようなこともない。 中央でしか買えない物・こだわりの店で売っている物のリクエストを受けて買出しをしたり、親類縁者たちからの宅配物を一度受け取って赴任先に送ったりも支援担当の仕事であったが、アルディアスに関してはそれもなかった。 賄賂を避けるため、地方赴任中は出納記録をつけるのが義務になっているから、彼の財務状態は仕事として把握している。 支払いが仕事に関するものは階級とサインのみ。私費はいわゆる小遣いだが、これも明細を提出することになっていた。 この記録に載らないものが裏金となり、賄賂を受けている者は、だんだん出費に堅実さが欠けてくるようで、うすうす見当がつく。 アルディアスの場合は、赴任出費の明細を見たかぎりでは書籍代が突出していた。専門書なので支給対象となる。 私費はおもに飲食代であったが、普通に友人と会食したのだろうな、という店と金額のものばかりだ。交際費で落としてもよさそうな内容でも、勤務外だと律儀に私費で払っていた。 被服出費はほぼなし。どうやら支給品だけで足らしているらしい。そのほかの出費は、私費のうちでも専門書ばかりであった。 寮にいたときも要望のない人であったし、欲しいものってないのかしら?とリフィアは不思議に思った。 けれども担当するほかの軍人達の「欲しいもの」に振り回されていると、どうしても要求の少ない人のことまで考える暇がない。 それに、リフィア自身はその年念願の一人暮らしを始めたところで、私生活が楽しくてたまらなかった。 親所有の古びたテラスハウスの一戸が空いたため、家賃格安で住み始めた、というのが実情だったが、実家にいても生活費は入れる決まりだったから嬉しかった。 管理人の夫婦は小さい頃から可愛がってくれた親戚で親も安心していたし、リフィアは一人の自由を満喫していた。とはいえ、毎週末は必ず友達が来ているという感じだったが。 軍主催のパーティにも、女子は自由参加なのをいいことに欠席ばかりしていた。後になって同僚に「アルディアスさま、いらしてたわよ」と聞いて、あら行けば良かったわ、と思ったことが二回ほどある。 男性士官は、しっかりした理由がない限りは参加を義務づけられているが、アルディアスのほうもパーティは苦手らしい。地方赴任を理由に、出席するのは直に軍部中央に出向く用事があるなど、別件と抱き合わせになったときだけだった。 そんなこんなで、季節がひとめぐりした早春のころ。 久しぶりに出席したパーティにアルディアスもいたのは、ほとんど偶然といっていい。 リフィアは階級にあまり興味がなかったが、そのころ彼は中佐になっていた。 お久しぶりです、と先に声をかけたのは、リフィアの隣にいた同僚のアンナだった。彼の出世が早いとかなり興奮している彼女は、ふわふわの金髪にブルーアイ、しっとりとした艶の赤紫の生地で、胸元に控えめなシャーリングが入ったミニのドレスが目に鮮やかだ。背の高いスツールに腰を預けると、ちょうどきれいな膝下のラインが目に入る。 リフィアのほうは、ややおとなしめのミドル丈の黒いドレスを着ていた。前身頃の胸元から上が白の切替になっていて、首の後ろで大きいリボン結びをするようになっている。 「こんばんは。お久しぶりです」 礼服姿のアルディアスは変わらぬ微笑でこたえた。 少し困った顔で、アンナの興奮気味の話につきあっている。彼女はあの武勲がすごかった、このときの戦果が、と普通の青年士官が喜びそうな話をしているのだったが、アルディアスはあまり興味がないらしかった。 「あの、いつもご要望ないんですね」 彼女の話が一段落したころを見計らって、リフィアは声をかけてみた。 「ないですねえ」 藍色の瞳がにっこり微笑む。その嫌みのなさに、ほんとにこの人はこれで満足しているのだな、と見て取れた。 その夜のパーティは翌日が公休日だったため、各所で次の日も会おうかと話が盛り上がっていたが、彼は用事があるからと断っていた。 「お仕事ですか?」 「いいえ、ちょっと本屋巡りをしようかと。明後日には任地に戻らなければなりませんから」 彼の言葉に、なんだ欲しいものあるんじゃないの、と思ったリフィアは思わず「ご一緒していいですか?」と聞いていた。 アルディアスが目をしばたたく。抜け駆けとでも言いたいのか、アンナが横目で彼女を睨んだが、リフィアはまったく仕事のつもりだった。 「いやでも、一日中かなり歩きますし、女性の方をお連れするようなものではありませんよ。専門書ばかりですから、面白くもないでしょうし」 「歩きやすい格好で行きます。お望みの物のチェックをしておくのも仕事ですから」 リフィアのまっすぐな瞳に、アルディアスは困ったような微笑を浮かべたが、最後は折れてくれたようだ。 歩きやすい靴を履いてきてくださいね、と念をおして待ち合わせ場所を指定した。 「リフィア、あんた仕事のつもりなの?」 アルディアスと別れた後、クロークルームの鍵をもらってから目をすがめてアンナが言った。ロッカーから替えの靴や私服を出しながら、あたりまえじゃないの、とリフィアは返す。 昼間は普通に仕事だから、着替えを用意してきているのだ。 「だってあの方、本当に他に要望がないのよ。信じられないくらい。仙人なんじゃないのかって思うわよ」 「あ、その噂なら聞いたことあるわ。前の彼氏に聞いたんだけど、アルディアスさまって軍隊でも私生活がほとんど謎らしいの」 そうでしょうね、と答えつつリフィアは別のことも考えていた。アンナはどうやら彼氏と別れたらしい。なるほど今夜アルディアス・フェロウ中佐にモーションをかけていたのはそのためか。 そうと知らぬアンナはハイヒールを履き替え、勝負服らしい赤紫のドレスの上からコートを羽織った。 「その彼が、今のアルディアスさまの任地にいて、同じ寮に入ってるのよ。普通、佐官ともなったら結婚してなくても単身寮を出るとか、寮でも特別待遇を要求するとかするじゃない。そんなことも全然なく、平気で下士官や一般兵とも混ざってらっしゃるんですって」 「そうね。向こうの寮の管理課からも何も言ってこないもの」 「それがまた無理にやってるんじゃなくて、ものすごく自然にそうしてらっしゃるから、下士官達の人気は絶大らしいわ。たまに皆を飲みに連れて行ってくださることもあるんだぜ、って彼も心酔してたもの」 「ふうん」 パーティ用のアクセサリを外し、ドレスのリボンを結びなおしてリフィアはうなずいた。専門書以外で、たまに私費に計上されていたちょっと金額の大きい飲食費はそれか。下士官達を息抜きに連れて行くなら交際費で落とすこともできるのに、律儀な人だ。 飲みに行った先で、彼がにこにこしながら部下達の話を聞いているさままで、リフィアには見えるような気がした。 財布役にはなっても、自分の話を滔々と聞かせよう、なんてことはしないに違いない。 「さて、わたしは帰るわ。明日はたくさん歩かなきゃならないから。じゃあね、アンナ」 自分もコートに袖を通し、まだ他の子と話している同僚にさっと手を振って、リフィアは帰途についた。コートの襟を立て、明日は雨が降らないといいな、と思いながら。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/ご感想をくださる皆様、本当にありがとうございます!! なかなかお返事できなくて申し訳ありませんが、いただくと小躍りして喜んで 次書こう~♪ってなりますので(←単純w ぜひぜひがんがんコメントしてやってください♪ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→12/15 ご先祖様一斉ヒーリングhttp://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912120000/
2009年12月15日
コメント(5)
銀髪の男が学院長室で嫌々仕事に励んでいると、分厚い本を抱えて後輩がやってきた。 「ありがとうございました。読み終わりました」 「ああ、書棚に戻しておいてくれるかい。ついでに学院長職も代わってくれると嬉しいんだけど」 「……何言ってるんですか、まったく」 本を背後の書棚に戻した金髪碧眼の後輩は、あきれた顔でこちらを見た。かけていた眼鏡を外してポケットから出した布で拭いていたが、相手の肩口を見て驚いた表情になる。 「先輩……いや、学院長。なんですか、それ。妖精ですか?」 「エルス、これが見えるのかい?」 メイオンは仕事の手を止めた。 「妖精とはちょっと違うかな。物心ついたころからいるんだよ。でも私以外に見えたのは君が初めてだな」 長い銀髪をゆらして微笑む男の左の肩口に、ちいさな蛍のような光がふわりと止まっている。 「ずいぶんと希薄な……。自分もリミッターなしでないと駄目ですね」 眼鏡をかけ直した後輩が目をこらしたが、見えないようだ。 「そう、会話もほとんどできなくてね。ようやく私の名前を覚えてくれたかどうか、っていうところだよ」 それでも愛しげに指先に蛍をとまらせて笑う。 光を自分の肩口にそっと戻して、彼は仕事を再開した。 (メ……オン?) かすかな囁きが、歌うように夜のしじまに流れる。 男は読んでいた魔法書から顔をあげて微笑んだ。 「そうだよ。メイオン、私の名前だ。覚えてくれた?」 (イオ……ン) 耳をそばだててやっと聞こえるほどの、小さな小さな声。 彼の名前に近い音をようやく発するようになったその声と、同じような問答を彼はもう何百回と繰り返していた。 それでも気にせぬふうで、彼は続ける。 「メイオン。メ・イ・オ・ン」 (メ…オ……ン) 「そう。リン、これは君の名前。リ・ン」 リル……ン、と妖精から鈴のような澄んだ音がする。 「うん、その音から私がつけたんだったね、リン」 雪の結晶のように小さな光を指先にとまらせ、だいぶ上手になったね、とメイオンは微笑んだ。 この不思議な妖精との関係は、何もわからない。 なぜ彼の元にいるのかも、どういう存在なのかも。 物心ついたときからずっと傍にいてくれるのだから、なにかしらの因縁があるのだろう。けれど前世の記憶を持つこの世界ですら、彼はその蛍のことを何も覚えてはいなかった。 それでもその小さな光は、いつも彼の心を癒してくれた。 ぽっかりと身の半分に空いた、理由の知れぬ巨大な虚無。 愛するものがいた記憶を抱きながら、それのいない世界で生きること。 両方を彼は知っていた。 身を灼くような虚無と絶望を超え、ようやく手に入れたと思った輝きは、今は世界樹で眠っている。 回復までどれほど時がかかるものだか見当もつかず、今の彼は世界樹に見せている夢のひとつだ。 あのひとはここにいない。 この身を暖めてくれるものはない。 いないことを知って選んだ転生ではあるけれど、それでもどうしようもなく孤独が押し寄せることがある。 昔と今と、二重に生まれた空虚の記憶。 気を抜くとその闇に飲み込まれそうになる。 だからわかるのだ。 誰彼となく声をかけずにいられない彼の寂しさも、自棄の上でかりそめの繋がりを続けてしまう彼らの孤独も。 そしてだからこそ、見守らずにはいられない。 少しでも幸せでいてくれるようにと、祈らずにはいられない。 リル……ンと心配げに鈴が鳴る。小さな蛍は指先から飛び立ち、身をすりよせるように彼の頭のまわりを回って、また肩先に舞い降りた。 「うん、ありがとう、リン。君がいてくれるんだね」 リル……ン。 涼やかなその音色は、遠い日に失われた何かのささやきのようで。 ……おそらくは、小さな小さな魂のかけら。 大元はきっと眠るか、べつに転生しているのだろう。 その魂とのつながりは何も思い出せず、蛍も何も答えてはくれないけれど。 「……君のおかげで、私は自暴自棄にならずに目的を果たせるよ」 メイオンは呟いた。 彼らを見守ること。 魔法の研鑽を積むこと。 中間生にあってすら、蛍の存在はわからなかった。 けれど実際は、独りの時間をどれだけ助けられていることか。 涼やかな音色とかすかなペリドット色の明滅が、吹きすさぶ冬の嵐のような孤独をどれほど潤してくれたろう。 眠る人を待ち続ける彼を。 「君のことを何も思い出せなくてごめん……でもいつか、君の大元の魂にお礼を言うことができるかな」 すまなそうな声。 深い関わりがあるのだろうに、思い出せない申し訳なさともどかしさが募る。 けれど、リル……ンと鈴が鳴る。 大丈夫、できるよ、と言いたげに。 <Dark Age> たか1717さん http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-173.html <Dark Age ver.Luke> wakka○さん http://witchouse.blog19.fc2.com/blog-entry-453.html <Dark Age ver.Ray> よしひなさん http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1359927210&owner_id=21303894 <Clear Missing Mass > 妖精さんwhttp://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/29359bfea8a4a50209719be6ee85fdac------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/今生になって、お礼を言うことができてよかったです♪ ご感想をくださる皆様、本当にありがとうございます!! なかなかお返事できなくて申し訳ありませんが、いただくと小躍りして喜んで 次書こう~♪ってなりますので(←単純w ぜひぜひがんがんコメントしてやってください♪ 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→emoji code="h144" />☆ゲリラ開催☆ 12/11~12/13 天使の森保育園♪お泊り保育♪http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912110000/12/15 ご先祖様一斉ヒーリングhttp://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912120000/
2009年12月13日
コメント(4)
保育園も一段落して、次どうしようかなあ、と思っていましたらなんだか背後から強烈プッシュがあるような気がしたので 笑調べてみたら、前回は去年の10月だったので、そろそろまたやってもいいですね♪それで思ったのですが、今回ご先祖様、はすでに亡くなられた方以外も含めちゃいます。つまり、命を繋いでくれた方、みーんなに感謝を送ってしまおうとw累代、でかかわりのあった方まで皆入れられると完璧なんですが・・・そこまでのキャパが私にあるかな^^;ま、これまた実験君で、できるところまでってことでw先日祖母を亡くしまして、生きる、ということを考える機会をもらって。やっぱりすべての経験が、いずれ「よく生きたね」と迎えてもらえる貴重なものなんだなあ、と思いました。そしてそうやって時間を積み重ねて、生と死を積み重ねた先に、私たちは今立っているのでしょう。重ねた石のたったひとつが抜けても、今の私はここにいなく。繋がりのあるご先祖様全員の、すべての経験が、今の自分をここに居させているのかもしれません。そう考えるとやっぱり、生ききった、そして今毎日を過ごしかけがえのない経験を積んでいる、ご縁あるすべての魂に、感謝と敬意を捧げたいと思うのです。よろしかったらぽちっとお願いします♪→★リアルタイム日時 2009年12月15日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~12月17日(木) 朝5:30開始までの間の1時間 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。☆ゲリラ開催☆12/11~12/13 天使の森保育園♪お泊り保育♪ ※業務連絡※☆25日にお問い合わせのK様お返事のメールがエラーになってしまいます~お手数ですが、再度アドレスをお知らせくださいますよう、お願いいたしますm(_ _)m
2009年12月12日
コメント(382)
たか1717さん、wakka○さん、よしひなさんのところでアップされている Dark Age シリーズ。 実は私もその時代にいたことが判明しましたので、タイミングを逃さずww たかさん http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-173.html wakka○さん http://witchouse.blog19.fc2.com/blog-entry-453.html よしひなさん http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1359927210&owner_id=21303894 ------- 「綺麗な手ですね。今度、二人でゆっくり食事でもどうですか? 仕事の話とか聞きたいな、おれ。 ……彼には秘密で」 最後の一言はささやくように、少し上目遣いで唇に人差し指を当てる。 彼、というのは金髪碧眼の後輩のことだろう。 青いその目は誘い込むように輝いていたが、その奥に見えるものは。 彼が男も女も関係なく口説いていることを、私は知っていた。ほとんどが一夜限りで……ただ、金髪碧眼の後輩と、一見物柔らかな銀髪の青年とは続いているということも。 口を開いて答えようとした瞬間、背後から彼の頭に分厚い本が降ってきた。 「俺が…何だって? 何を人の先輩を口説こうとしている?」 冷ややかな碧眼が、頭を抱える彼を見下ろしている。 しかし彼は立ち上がると、にっこりと笑顔を浮かべた。 「あ、お前を探してたんだよ~」 そうして金髪の襟元に手を回し、キスしようとした瞬間にかわされて、今度は顔面に思い切り本の背表紙を入れられる。 「痛って~」 「いいかげんにしろ」 「なんだよっ、顔は俺の命だぞっ!?」 「鼻くらい折れればよかったのにな。残念だ」 金髪の青年は冷然と言い放った。 見ていた私は我慢しきれなくなり、必死で声を抑えて笑ってしまう。 「先輩。何がそんなにおかしいんです」 「……ああ、いや、ごめん」 二人を見比べてどうにか笑いをおさめる。 暁闇の底で小さな星を探そうとする彼らの繋がりはいとおしくもあり、また哀しくもあった。 馬鹿話で笑えるならば、それに越したことはない。 その時はそれで終わったが、青い目の助教授は諦めなかった。 なにかと機会を見つけては熱心に口説いてくる。私もまた独りだということを知っているのかもしれないが、今生では、そういう意味では誰とも繋がる気はない。 だがあまりにも誘いを断り続けているのも気の毒になってきて、一度だけ一緒に食事に行った。 薄暗がりにほのかな蝋燭の明りの揺れる、雰囲気のいい店。彼はこういう店をいくつ押さえているのだろう。 食事では本当に仕事の話だけをした。 彼が話題を振ろうとするのを、私は穏やかに切り返して元に戻す。口説きにくい人だと思われたに違いない。 どうしても、と食い下がられて店を変え、静かなバーで琥珀色の液体を前にして、彼はとうとう直接的に口説き始めた。 熱っぽい青い目。 今このときの、その優しさと愛は本物なのだろう。 けれど私には、最初からその瞳の奥が見えてしまっていた。 グラスを傾けながら彼の熱弁を聞き、一段落したところでじっと見やる。 「でもねえ。君が本当に探しているのは別の人だろう? 私と夜を過ごしたとしても、寂しさが増すばかりだと思うよ」 「…………」 彼は押し黙った。 その瞳の奥に、泣いている子供が見える。はるか昔、花園でたったひとりの殻に篭もり、奥底で遠い光を追い求めていたあのときの瞳。 私はそれを覚えている。 金髪の後輩も銀髪の青年も、それぞれが今は独りぼっちだ。 私を含めて皆ツインのいない状態で、それでも前世の記憶のあるこの世界に転生している。 愛しさの記憶を持ちながら、それがここでは埋められない。 記憶そのものを失って、理由の知れぬ巨大な虚無と相対するか。 愛するものがいた記憶を抱きながら、それのいない世界で生きるのか。 どちらがより哀しいだろう。 彼らの心が泣きながら、それでも切ない記憶を大切に抱きしめてこの世界へ降るのを、私はそのままにしておけなかった。 何ができるわけでもない。 ただ見守ることしかできない。 それも世界樹の気まぐれに咲いた花のように、ほんの短い間しか傍にいられない。 私に許された寿命は短い。 それでも、かつて見知った人々の涙を、放ってはおけなかった。 知らせはしない、口出しもしない。 けれど見守っていたかった。 三人が、それぞれのバランスの上で支えあって生きていけるならそれでいい。 けれど、今一番ぎりぎりの所に立っているのは、おそらく目の前にいるこの青年なのだろう。 遠い独りの記憶が癒されてきっていないところに、また孤独を抱えてしまった。 空元気で日々を過ごし、かりそめの繋がりを求めなければ生きてゆけないほどに。 「……君が本当に知りたいのは、ツインコードの確実な追いかけ方、ではないのかい」 「あなたは知ってるんですか。それを」 彼の目の色が変わる。 私は真実を言い当てたことを知った。 しかしツインというのは、コードだけで繋がるようなものではない。 光から闇にいたるまで、さまざまな経験を互いに積み重ねて初めてそういう状態になる。ハートに繋がるコードは、共振をおこす繋がりの象徴のようなものにすぎない。 大事なのはコードの有無ではなく、何を想い何を積み重ねて生きるかだ。 それを説明した上で、私は彼の望む方法を教えた。 使えるのは今生の器を脱ぎ捨てた後のことだが、このまま何度もの転生で孤独に耐えられるとは、あまり思えない。 彼の持つ光はあまりに純粋で、それだけに脆さを併せ持っている。 独りでの自暴自棄の経験は、この生だけでたぶん十分だろう。 それに方法を教えはしても、それが使えるかどうかは、彼しだいだ。 それから、彼は私を口説いてくることはなくなった。 軽口でお世辞を言ってはくるが、本気でどうということはない。 後輩と青年とはまだ続いているようだった。 それがそれぞれの自棄の上に成り立っている危ういバランスであったとしても、彼ら自身を救っている一面があることを私は知っていた。 だから、見ていた。 そして祈っていた。 それぞれが抱えた暁闇のむこうに朝日がさしこんでくることを。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/このときは魔法学校の教授で、そこの学院長を押しつけられたりしてたのですが(たかさん情報)、そのあたりは自分の感覚ではかなりどうでもよく 笑どうやら、彼らのことが心配で、ほとんどそのためだけに転生したような感じでしたwどうも、かな~~~~~り昔から見守っていた感覚なのです。不思議ですねwご感想をくださる皆様、本当にありがとうございます!!すべてにはお返事できず申し訳ありませんが、もう本当に踊りだすほど大喜びしております♪♪単純に書くぞ~って元気が出ますので(笑)ぜひぜひひとことでもご感想お願い申し上げます♪拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→※業務連絡※☆11月25日にお問い合わせのK様お返事のメールがエラーになってしまいます~お手数ですが、再度アドレスをお知らせくださいますよう、お願いいたしますm(_ _)m☆ゲリラ開催☆ 12/11~12/13 天使の森保育園♪お泊り保育♪http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912110000/
2009年12月11日
コメント(6)
皆様、先日は色々とありがとうございました。私の体調などをお気遣いいただいて、火曜ヒーリングの参加を見送ってくださった方もけっこういらっしゃるのではないかと思いましたので今週末はお礼の拡大バージョンを開催したいと思います♪また、お礼の記事にもたくさんのコメントをいただきましてありがとうございました。お一人ずつにレスをしたかったのですが、ご家族の介護をしていらっしゃったり大きな想いを持っていらっしゃって、私ごときでは言葉で何もお返しすることができません。。。ですので、よけいなお世話かもしれませんが、今はお体の不自由な方も、身体は三次元にありつつも、今ここでないどこかに住んでいらっしゃる方も、胸の中の子供は皆さんいらっしゃるはずですから、お返しの代わりに皆ひととき楽しく遊んでいただける場所をご提供できたらいいな、と思いました。そして、実はいつの間にか100万アクセスも過ぎておりましてw気づいたら終わってましたし、ラファ保健室開催中でゲリラ開催もな~って感じでしたのでこちらでそれも兼ねようかと 笑おいでくださる皆様、いつもありがとうございます♪せっかくなので、人気の「天使の森保育園」お泊り保育バージョンです♪♪天使の森保育園って何?という方はこちらの誘導文をお読みくださいね。→http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911270000/もちろん天使先生を独り占めできるのは変わりません♪先生だけとでもよし、お友達と、あるいは妖精やドラゴンたちと一緒でもよし。どこへ行きたいか計画から楽しんで、お好きなところにお出かけしてください。園舎は広いですが、そこから先生の翼で空へ飛んでゆくと、色んな場所へ行くことができます。それはあなたの心に繋がっています。普段は閉じられている園庭の空を開放しておきますから、どうぞ天使先生と空の旅をお楽しみください。そして行きたかった場所に行ってみてください。上空からすばらしい景色を眺めるだけでも楽しいことでしょう。あなたの心が望むまま、どこまでも飛んでいって大丈夫。先生がそっと誘導してくれますから、行ってはいけない場所に紛れ込むようなことはありません。危険なことは何もないのです。でもちょっぴりスペクタクルな冒険を楽しみたい子供には、先生が何か用意してくれているかも☆もちろん、いつものように園で遊んでいても大丈夫です。園には行かないで、ヒーリングを受け取るだけでも大丈夫。しなくてはいけないことは、ここには何もないのですから……。夜になったら、美味しい夕ご飯をキャンプのように作ったらどうでしょう。星空の下で食べるカレーは、世界一美味しいかもしれません♪そして寝袋でもよし、ふかふかのベッドでもよし、園にある大きな樹の根元でもよし。気に入った場所で、先生と一緒にたくさんお話をしてお休みください。ヒーリングは三日間です。その間、ヒーリングを受け取るたびにいろいろな場所に行ってみるのも、同じ場所でゆっくりするのも、園にいるのもすべて自由。天使先生があなたにつきっきりで、胸の中の子供の望みを叶えてくれます。もちろん、「暴れたいさん」が出てきても大丈夫。どんなに泣いてもわめいても暴れても叫んでも、ぎゅっと抱きしめていてくれます。インナーチャイルドちゃんと一緒に、ちょっといつもより長い「お泊り保育」、どうぞ楽しんでいただけたら幸いです♪応援してくださってありがとうございます♪→★ヒーリング期間本日この記事がアップされてから~12月14日(月)日本時間朝6:00まで 1回30分(募集も同じく)期間中、何度でも好きなだけコールインでお受け取りいただけます。 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★参加ご希望の方は最初の一回のみ、この記事かmixiの同名記事のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をたくさんとられることをお勧めします。★1円募金や誰かに何かをする、掃除する、ご感想をいただくなど、なにがしかの行動をされるとエネルギーの循環がよくなり、よりヒーリングが効きやすくなります♪★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。※業務連絡※☆11月25日にお問い合わせのK様お返事のメールがエラーになってしまいます~お手数ですが、再度アドレスをお知らせくださいますよう、お願いいたしますm(_ _)m
2009年12月11日
コメント(346)
機関室から艦の横腹に向かった彼らが見たのは、意外な光景だった。 物陰に急停止して先をうかがう。 (おいおい、なんだよあれ) (私の目が間違ってなければ、人質は我らが作戦司令官殿のようだが) (馬鹿だ馬鹿だと思ってたがなあ。見なかったことにして帰るか) 二人はため息をついた。 作戦指令官として、当然の手柄を取るべく意気揚々と偵察艦に乗り込んだところを捕まったらしい。たくましい敵兵に後から腕を抑えられ、首元に鋭いナイフを突きつけられている。 開けた穴から出たところをすぐに押さえられたらしく、他の味方も狭い穴の向こうで動きようがない状態らしかった。 「そこに二人、機関室に侵入者がいたこともわかってる。おとなしく出てきて記録チップを渡せ。さもないと司令官殿の命はないぞ」 「そんなのでよければ熨斗つけてくれてやるがね」 さすがに小声でセラフィトが呟いた。 (あの馬鹿、自分が穴からおんでる前にまず確認するとか、一斉射撃しておくとか、そういう知恵はなかったのかな) (あればこうなってはいないだろうね) (だよなあ……あれが甥だってんだから、大将殿もさぞ気苦労が多かろうぜ) 上官を見捨てて帰るわけにもいかないので、しかたなく二人は手をあげて通路に姿を現した。 横に空気清浄用の植物の鉢がある。 「よろしい。記録チップを床に投げろ。すでに引火粒子を撒いてあるから、火気類を使おうと思わないことだ。ESP検知器が反応しても、司令官殿の命はない」 男の横に立っていた兵士が、小さな検知器を左右に振ってみせた。サイキック能力の発現する前駆波動をとらえて、警報を鳴らすものだ。味方も能力を使えなくなるが、あっさりと結界をこえてきた侵入者のためには当然といえた。 兵士が大仰な身振りで検知器の出力を最大にしてみせたので、セラフィトは舌打ちした。これでは心話もできない。 ちらりと横目で見ると、かすかにアルディアスがうなずいた。目でうなずき返し、胸ポケットに入れていた記憶チップを指先でつまみ出すと、緩慢な動作で床に落とす。 目の隅でそれを見ながら、アルディアスは口の中で呪文を唱え始めた。ESP検知器にかからないようにするには、今現存している魔法ではだめだ。はるか昔、能力を持っていない者が使っていたような古代魔法でなくては役にたたない。 今はもう知る人も少ない技術ではあるが、幸い、彼はその知識を持っていた。 サイキック能力に依存した魔法ではないから、発動までの呪文がひどく長くなるが仕方がない。口をほとんど動かさずに、アルディアスは言霊を紡いでいった。 呪文が発動するまで、空間への影響がなるべく出ないようにしなければならない。 セラフィトの足が記録チップを向こう側へ蹴るのを眺めつつ、アルディアスはタイミングを計った。 両者の中間に転がった記録チップを取りに、敵方の兵士がひとりやってくる。兵士が膝をかがめた瞬間、彼は呪文を発動させた。 アルディアスの横にあった植物の鉢から、蔦がものすごい勢いで伸びだしてチップを取ろうとした兵士を絡め捕る。向こうの兵士が銃を取り出したが、引火粒子を撒いてあったことに気づいて銃口を外す。 アルディアスとセラフィトは二手に分かれて走り出すと、脛に装備していたナイフを抜いて伸び続ける蔦をくぐり抜け、迫り来る緑の触手に戸惑っている敵兵の急所を狙って斬りつけた。首から血しぶきを立てて倒れていくのを盾にして、人質を抑える男に左右から斬りかかる。 両手のふさがっていた男はとっさに反応できず、脇と首を斬られて後に倒れこんだ。 「中佐、こちらへ」 セラフィトがいささか乱暴にゼキル中佐の首根っこをつかみ、穴から味方艦へと押し込む。 それを確認してアルディアスは電撃を放つと、セラフィトに続いて穴をくぐった。彼の放った電撃が壁のパネルを打ち、火花を散らして引火粒子に誘爆してゆく。 「溶接ハッチを切り離せ。離脱するぞ」 セラフィトが叫ぶ。こころえた作業兵が、人のいなくなった外部ハッチを、溶接されたままの敵艦ごと切り離した。そしてもう用はないとばかりに全速でその場を離脱する。間一髪の差で、背後で偵察船が爆散してゆくのが見えた。 母星に帰投すると、セラフィトはアルディアスの肩を叩いた。胸ポケットを親指でさししめす。 「これ、どうする。上に出せば昇進間違いなしだ」 「投げたんじゃなかったのか?」 「あれはダミーさ」 さすが、とアルディアスは笑った。これから直接上司のところへ行くという友人に、彼はもうひとつの記録チップを放った。 「これは?」 「機関室で倒した相手のポケットに入ってた。セリーの好きにしてくれていい」 「おい、お前は行かないのか」 「私はもう”サイキック・オーバー”を申請するつもりだ」 アルディアスは疲れた目で友人に笑ってみせた。 サイキック・オーバーとは、能力者が力を使いきりそうな状態のとき、焼き切れを防ぐために設置された制度だ。戦場などで力を発現した能力者が、自らの申請により数日の休暇をとることができる。 アルディアスは後ろ手でセラフィトに手を振ると、申請機の前に立った。 「アルディアス・フェロウ大尉、サイキック・オーバーを申請します」 ドア枠のような機械のセンサーが働き、彼のオーラやチャクラ状態をチェックしていく。数秒後、申請機はおごそかに診断を下した。 「サイキック・オーバーを認めます。アルディアス・フェロウ大尉、二日間の休暇を了承しました」 ありがとう、と呟いてアルディアスは部屋に向かった。 「飯は?」と聞いてくるセラフィトに、いらない、おやすみと顔半分振り返ってもう一度手を振る。 部屋に戻って汚れた服をランドリー・ダストに放り込み、熱いシャワーを浴びる。少しずつ温度を下げてゆく途中にも、二度ほどふらついて壁に手をつかねばならなかった。 おざなりに髪と身体を拭いて、ベッドに倒れこむ。 そのまま彼は、丸一日以上こんこんと眠り続けた。慣れない魔法をいきなり実地で制御するのは、その効果以上に膨大なエネルギーを消費する。 眠りの海に夢の扉がひらいてゆく。 誰かが、どうかお気をつけて、と心配そうな顔をしている。 ありがとう、気をつけます、と彼は答えた。 怪我はしていない。 これは許される状態だろうか―― そんなことを、夢の中でぼんやりと思っていた。 そして起きたとき、彼はセラフィトとともに少佐に昇進したことを聞かされた。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/ちなみにセラフィトさん、この後まじめに大きなゴミ箱を探しておりました・・・w 拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→※業務連絡※☆11月25日にお問い合わせのK様お返事のメールがエラーになってしまいます~お手数ですが、再度アドレスをお知らせくださいますよう、お願いいたしますm(_ _)m
2009年12月09日
コメント(2)
待機中の兵士六人が武装して強襲艦に集められた。 窓の外には宇宙空間と、敵方の偵察船が肉眼でも見える。 「停船せよ、然らざれば攻撃す」 互いの距離が縮まり、お決まりの文句が偵察船に送られていた。強襲艦の内部では、その場での最高階級であるゼキル中佐を作戦指揮官としてミーティングが行われている。 肉厚の身体をふるわせるようにして、若い中佐は大音声を張り上げた。 「諸君。これは我ら六人が武勲を立てる最大の機会である。強襲艦をもって敵船を襲う定法とは何か?」 アルディアスはうんざりして目を伏せていた。強襲艦を使うときは、相手の艦に横づけして無理やり溶接、そのまま穴を開けて突撃する。誰でも知っている程度のことで、この狭い艦内で大声を出す意味がそもそもわからない。 しかし中佐について回っている取巻きのひとりが真面目くさって定説を述べたため、中佐は鷹揚にうなずいてみせた。 「しかしだ、諸君。俺は今回指揮官として、今までにない戦法をとろうと思う。幸い、この艦には今強いサイキックが乗り合わせている」 アルディアスは目をあげた。意地の悪い視線が自分を見ている。 「アルディアス。お前ならテレポートで敵艦に乗り移れるだろう。艦を横づけするように見せかけて、その間にお前が侵入し、機関室を占拠、ドッキングする。どうだ? いいフェイントだろう?」 「なっ……! その作戦では彼の負担が大きすぎます、中佐」 文句を言ったのは、アルディアスの隣に立っていたセラフィトだった。彼とは士官学校からの友人だ。中佐に負けない厚みのある、しかし無駄な肉のついていない体躯を盾に使って、彼はアルディアスの前に立った。 「敵偵察船は少なくとも乗員十名はいるでしょう。まして宇宙空間を挟んでのジャンプなんて危険すぎます」 それに敵艦にも当然、対サイキック用の結界が張り巡らせてある。それにひっかかれば怪我では済まないかもしれない。 「黙れ、セラフィト。俺はアルディアスに話しているんだ。しかもアルディアスは、この中でもっとも実戦経験が多い。士官学校の前は二等兵からいたんだからな。そうだな?」 「しかし……」 (いいよ、セラフィト。ありがとう) 細くしぼったアルディアスの心話が、セラフィトの激発をおさえた。 (オルダス。いいってお前……。あのぼんぼんは、てめえが敵わないからって目障りなお前を殺すつもりだぞ。もしも作戦が成功したら儲けもので、手柄を独り占めするに決まってる) (いいんだ。そのかわりセリー、君も一緒に来てくれるかい?) (もちろんだ、お前が行くならな。いけすかねえ味方より、敵のツラでも拝んでるほうがまだましってもんだ。思い切りぶんなぐれるからな) (同感) セラフィトの言葉にかすかに微笑み、アルディアスはまっすぐに中佐を見た。 「わかりました。敵艦の見取り図をいただきます。セラフィトと同行しますので」 穏やかながら有無を言わせぬ調子で壁際にあった見取り図を取り、セラフィトと共に外に敵艦の見える窓に歩み寄る。やりとりの間にも両艦の距離は縮まっており、あと五分もすれば横づけも可能と思われた。十秒ほどじっと窓の外を見つめる。 (セリー、行くぞ。機関室に直接出る。出たらすぐに自分にシールドを張ってくれ) (了解) 「敵艦捕捉しました。出撃します」 ひとこと言い捨てるなり、二人の姿は掻き消えた。 自分の身体がふっと軽くなり、そして重くなった瞬間、セラフィトは周囲にシールドを張りめぐらせた。 バチン、と電撃のようなものがその表面を走ってゆく。 隣に立つ友人の瞳が紫色に変わっており、機関室にいた三人の敵兵のうち二人が倒れ、一人が腕を押さえて呻いた。 銀髪の友人が剣を抜き、残った敵を一刀のもとに斬るのを見て、セラフィトはシールドを解いて操縦パネルに飛びついた。 船は停船命令に反抗して、ワープすべくエネルギーを溜めているところだった。近づいていた強襲艦も巻き添えにするつもりだったのだ。舌打ちしてまず停船させ、次にデータファイルにアクセスしてゆく。 偵察艦がいままで貯めてきたデータ、そして本国から送られてきたデータ。それが目的だ。 いくつかのパスワードを携帯機器でハッキングし、最終ファイルにたどり着く。セラフィトはそれを手際よく記録チップに落とすと、パネル側のデータをすべて破壊した。 「よしっ、と。こちら突撃班、データ回しゅ……」 「これより強襲艦ドッキングする。援護せよ」 非常警報が鳴り響く中、手首の通信機器にセラフィトが報告をしようとした途端、中佐からの命令が頭ごなしに届いた。 りょうかい、と棒読みに呟いて、彼は通信を切った。 「しようがねぇな。あのバカボン、このままじゃ手柄が俺達のものになるってことに気づくくらいの知恵はあったようだぜ。あえてこっちの報告聞かねえで命じやがった」 「これで帰れれば楽だったんだがね」 「ほんとだよなあ。上官の命令に逆らえない身は辛いぜ」 そう言っているうちに、艦がぐらりと揺れた。強襲艦がドッキングしてきたのだろう。 艦内の人間はどちらに向かうか。穴を開けられようとしている横腹か、この機関室か。 「警報のタイミングからいって、横腹だと思うんじゃないかな。対サイキック結界には触れなかったはずだ」 アルディアスは言った。通信傍受されていた可能性もあるが、ドッキングの接近を感知して鳴り出したと見てもおかしくない。半々に分けるには人が少ない。どちらかに集中させると見るのが自然だった。 「相変わらず器用だな、お前」 「さすがにちょっとばかり腹が立ったのでね」 ふっと微笑む。普段おとなしい奴を怒らせると怖いよなあ、とセラフィトは大仰に震えてみせた。 「ま、とりあえず行くか」 警報が洪水のように鳴り響く中、男達は機関室から走り出た。 ------- 【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/【第二部 陽の雫】 目次 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911240000/気がついたら10日も間があいてしまってたので^^; とりいそぎ書いてあったものをアップ! メールはじわじわお返事しておりますのでお待ちを~~~~~><拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→ 12/8 インナーチャイルドヒーリング ※業務連絡※☆11月25日にお問い合わせのK様お返事のメールがエラーになってしまいます~お手数ですが、再度アドレスをお知らせくださいますよう、お願いいたしますm(_ _)m
2009年12月07日
コメント(3)
本日、無事自宅に戻りました。 祖母の冥福をお祈りくださった皆様、本当にありがとうございました。 おかげさまで、無事にすべての式を終えることができました。 メールなどは明日からじわじわお返事させていただければと思いますが、 まずはとりいそぎお礼を申し上げます。 お通夜はあいにくの涙雨でしたが、お葬式の日はきれいに晴れて、 青空にひらひらと紅葉の散るようすが、旅行好きだった祖母を思わせました。 結局お通夜まで数日間が空いたのですが、亡くなり方が急でしたので 宙ぶらりんの気持ちがじわじわと落ち着いてゆく時間をもらえたような気がします。 祖母はお風呂で亡くなったのですが、直前まで孫と話して 自分でご飯を食べ、トイレにいって、翌日から旅行だからと髪も自分できれいに洗って、 旅行中のおやつもちゃんと用意してあって 笑 その前にも、普段はなかなか会えないうちの息子ともイベントで会っていたり、七五三の写真も送って、遊びに行った母とおしゃべりしていたり 自分で、というよりも上の人々がなのでしょうけれど、 いろいろときれいに始末をつけていったのだな、と思いました。 これから、遊びに行ってももうあの笑顔は見られないのだとか 電話口で耳の遠い祖母に「おばーちゃん、耳(補聴器)入れたー? み・みーーーーー!!」と叫ぶこともないのだという 寂しさは、日を追ってじわじわと沸いてくるのだろうと思うのですが 駆けつけてくださった方々に「いつも明るくて優しくて気前がよくて、とても気持ちのいい人でした」と言ってもらって、 大好きだったお花でいっぱいの棺で送ってもらった祖母は、やはり幸せな人だったのだろうと思います。 読経の最中に、皆様にいただいた光の中を歩く祖母の姿が見えました。 私の上の人たちも総出で感謝を述べ、これから着くまでお守り申し上げますからと膝を折っていて。 大天使などの区別もすでにない、大きな大きな存在が、よく生きたね、と待っているようでした。 時間のない世界ですから、先に逝っていた祖父やたくさんのご先祖様や 今の私の大事な人たちの所縁の方々にもきっとすぐに会えて、 うちの孫が下でお世話になっております、なんて挨拶しているのかもしれません。 そして、どんな生まれでどんな生き方でどんな死であっても、たとえ刹那の生であったとしても、 三次元の肉体を通ったことは、上の世界から見たら「よく生きたね」と敬意と感謝を持たれることなのですね。 祖母が亡くなり、私たち遺族が喪服を着ていたそのときにも 地球のどこかでは赤ちゃんが産声をあげ、誰かが愛する人にプロポーズし、誰かの命の火が看取られているのでしょう。 うまく言えませんけれども、それはすべて、よく生きたね、と迎えてもらえる貴重な瞬間の集まりで。 そうして命の扉をくぐり、通り抜け、また叩いて、魂は歩いてゆくのだろうな・・・と感じたことでした。 物理次元でのお別れという悲しみはあるけれども、それ以外にはお祖母さまには感謝でいっぱいです、と大事な友人が言ってくれました。 また200名を越える方々からも、お悔やみと祈りの言葉をいただきました。 孫の友人知人にそうして暖かい念をもってもらえた祖母も、 そう言ってくれる人に恵まれた私も、なんという幸せものでしょう。 祖母が生み育てた母に育ててもらった私が、もらってきたものを大事な人に贈ったり 一斉ヒーリングという形でも中継して、 そうして今度は、こういうふうにたくさんの暖かい想いを逆に贈っていただいて。 実際に会ったことはなくても、そうしてずっとずっと、愛しい想いは繋がってゆくのですね・・・。 お心にかけてくださった皆様、本当にありがとうございました。 火曜ヒーリングは変わらずに開催しておりますが、ご参加を心苦しく思って見送られている方がいらしたら申し訳ありません。 お気遣い、どうもありがとうございます。 でも、大丈夫ですから^^ 私にとってヒーリングは負担にはならないので(もはや半分くらい体質のようなものかもしれません… 笑)、 どうぞ心置きなく楽しんでいただければ嬉しいです♪ 来週のヒーリングはこちら↓にてお待ちしております。 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200912050000/こうして毎週元気にヒーリングができるのも、祖母が繋いでくれた命のおかげなんですよね。。 生きているって、すごいことですね。 大好きなおばあちゃん。 命と、たくさんの思い出をどうもありがとうございました。 あばあちゃんの周りが、暖かく優しい光に満ちていますように。 そしてお心をわけてくださった皆様。 皆様の周囲と未来もまた、たくさんの素敵な輝きで満ちていますように。 重ね重ね、本当にありがとうございました。
2009年12月06日
コメント(17)
携帯からメール更新にて。皆様、たくさんのお悔やみと祈りをどうもありがとうございます。おかげさまで、無事に祖母の告別式を終えることができました。明日自宅に戻る予定ですので、御礼およびメール等のお返事は週明けからまた改めさせていただければと思いますがもう土曜日ですし、取り急ぎ来週のヒーリング記事を上げさせていただきます。お申し込み要項、注意事項、天使の森保育園の誘導文などは、お手数ですがひとつ前のヒーリング記事をご覧ください。★リアルタイム日時 2009年12月8日(火) 21:30より1時間(日本時間) ★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~12月10日(木) 朝5:30開始までの間の1時間 ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限 リアルタイム直前(火曜21:30)まで たくさんのご参加をお待ちしております♪
2009年12月05日
コメント(372)
全23件 (23件中 1-23件目)
1