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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2007年03月12日
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カテゴリ: 天使夜話
 結局、ラファエルはまた何もできぬままに牢を後にした。


 すると光の園との境界あたり、常緑の大樹に半ばよりかかるようにして、もうひとりの友が立っているのが見えた。
 彼はラファエルが着くのを見届けると、ふてくされたような顔をして先を歩き出した。

「ミカエル、待っていてくれたんですか」
 地に降り立ち、足早に追いかけながら問いかける。

「お前はすぐ泣くからな」
 肩に流れる長い金髪をうるさそうに跳ねあげて、ぶっきらぼうに友は言った。陽光のあふれる光の園は、ところどころに花々が咲き乱れ、吹き抜ける風も涼やかだ。


「いやだなあ、泣きませんよ」
 友の優しさが嬉しくて、ラファエルは微笑んだ。
「どうだかな」
 ミカエルも笑う。しかしラファエルが問いを口にすると、とたんに友の笑みは消えた。

「貴方は行かないんですか。本当は気にしているんでしょう」

「・・・・・・俺が行けるか。あんな辛気臭いところ」
 顔をそむけ、歩く速度をはやめる。

「辛気臭いって・・・・・・ルシフェル様は、貴方の」
「俺は行かん」
 言下に否定する。ミカエルは確かに強情なところもあるが、これほど頑ななのはめずらしいことだった。ラファエルは食い下がった。
「ねえ、ミカ・・・・・・」


 木陰に足を止め身体ごと振り返って、きっぱりとミカエルは言った。

「ラファ、俺は行けないんだ」
 どん、と拳で樹の幹を打つ。衝撃で、柔らかな緑色の葉が幾枚かひらひらと散った。ミカエルの顔は苦渋にしかめられている。
「行けない・・・・・?」
 ラファエルは繰り返した。


 しかしルシフェルとミカエルは、同じく光帯びたる者、闇を払う者として長い間ともに過ごしてきた仲だ。一時の立場の差が、それほど強い影響を残すとも思えなかった。
 それにミカエルは、一度罪を認めた者に、隔意を抱きつづけるようなことはない。

 ラファエルが考え続けているのに業を煮やしたのか、ミカエルは無言のままに腰に帯びた剣環を鳴らした。
 澄みきった鈴のような高い音が響いて、ラファエルは気づいた。

 ・・・・・・行けない。
 ミカエルは、あそこには行けないのだ。

「そうか」
 ラファエルが目を見張ると、ようやく気づいたか、というふうにミカエルはうなずいた。大樹によりかかり腕を組んで空を見上げる。
 青い空には雲ひとつなく、どこからか美しい竪琴の音が流れていた。

 隣に立って、ラファエルは友の持つ剣を見やった。
 七色の輝きを放ち、すべての魔を絶つという光の剣。そしてそれを持つものは、闇を払うことを責務として担う。

 もしもあの牢に行ったなら、ミカエルは斬らねばならないのだ。

 ともに泣きともに憎む、それはけして悪ではないにせよ、救いのない闇であることに変わりはない。
 未来永劫につづく、嘆きの連鎖。
 どこかで断ち切らねばならないのは確かだった。

 ミカエルの剣であれば、闇は一瞬のうちに切り裂かれ、白い光となって浄化される。
 しかしそれも、あの闇にとって本当の救いにはならないだろうことに、ミカエルは気づいていた。

 そんな彼が今できるのはただひとつ、行かぬこと。
 待つよりも動くことを好む友にとって、その選択がひどく心苦しいものであるのは、容易に想像がついた。

「・・・・・・行けないんだ」
 自らに言い聞かせるように、ミカエルは呟いた。

 ただ斬って、白日にさらすだけでは駄目なのだ。
 あの深い闇は、そんなことでは癒されない。暗き存在があったことに気づく、その意味はとても大きいが、痛みもまた限りなく大きくなるだろう。

 長く見ないふりをしてきた闇の扉、それを開く荒療治に耐えうる強さがあるならば、いい。
 乗り越えて、また起き上がれる人間ならいい。

 しかしそんな強い者であるなら、はじめから闇の流星など生み出すだろうか。
 切り裂かれてぱっくりと開いた傷口に、新たな血があふれ出すだけではないのか。

 それは人間を深く傷つけるだけではなく、せめて共に泣こうと牢に留まる仲間をも、打ちのめすことになるのではないか・・・・・・。
 ラファエルとは違う意味で、ミカエルもまた、自らの無力さに苛立っていた。





(つづく)


***************


妄想小説、第二弾。
まとめて読んでいただけるように、フリーページにまとめました。
・・・が、ちょっとこっち改訂したりして、細部がビミョーに違ってます。
こっちがすっきり直せたら、フリーページもまとめて直そうかと思ってます。。

ご意見ご感想等、いただけますと大変嬉しいです(><)





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最終更新日  2010年05月14日 17時22分00秒
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