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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2007年03月16日
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カテゴリ: 天使夜話


 暗がりに慣れた網膜を焼かれる痛さに、彼は顔をそむけた。痛い、痛い。彼を打ち、蝶として取り囲む想いたちも、いっせいに騒ぎ出す。

 やめてくれ、やめてくれ、焼かれてしまう。
 消されてしまう。痛い。いたい。いたい。
 たすけて。

 重い鎖を鳴らし、疲れ果てた身体をひきずって、ルシフェルは牢の片隅に逃げるように這いよった。闇と恐怖にとらわれた彼の姿は、黒い蝶の想いをとりこみ、おびえる心のままに幼く縮んでゆく。

 ああ、どうしてぼくをおいかけてくるの。
 ぼくはいてはいけないこなの。 
 おねがい、ここにいさせて。ぼくをけさないで・・・・・・。



「けさないで。けさないで。ぼく、わるいことはなにもしないよ」

 白い光の奔流に飲み込まれるのが恐ろしくて、目を閉じたまま黒髪の幼子は必死に叫んだ。大きな声を出そうと思ったのに、ほんの小さな声にしかならない。

「大丈夫。消したりしませんよ」
 どこかで聞き覚えのあるような、優しい声が言った。

「だって、めがいたいよ。まぶしいよ」
「それは暗闇ばかりを見ていたからだ」
 さっきとは違う、凛とした声が聞こえた。あいかわらず幼子の周囲は白くまぶしく灼かれるようで、目を開けて声の主を見ることができない。

「さあ、こちらへおいで」
 優しい声が言った。それはほんとうに暖かい声で、幼子は駆け寄りたい衝動にも駆られたが、理由は自分でもわからぬまま、唇をかんで首をふった。
「ううん。ぼく、ここにいたいんだ」

「こんな寒いところにか?」

「だって・・・・・・ここにいていい、っていったよ。そのままでいい、っていわれたんだよ。ぼくはここじゃなきゃ、いるところがないんだよ・・・・・・」

 薄汚れた頬に、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれた。
「ほかにいくところなんて、ないんだよ・・・・・・」
 目をしっかりと閉じたまま泣き出した幼子に、ふたつの声は当惑したようだった。しばらくして、優しいほうの声が言った。

「僕たちが一緒にいますよ」


「でも・・・・・・くさりが」
 小さな身体の何倍もある重い鎖が、両の肩にくいこんでいる。重さに立ち上がることさえできないまま、手のひらでなぞるように触れていると、手を離せ、ともうひとつの声が言った。
 幼子が従うと、眼前に白い閃光が降ってきた。ぱきん、と乾いた音をたてて、やすやすと鎖が両断され、粉になって砕け散る。幼子のぼろぼろのローブには、新しいかすり傷ひとつ増えていない。
「俺ができるのは、ここまでだな」
 閃光がおさまったあとで、声が言った。

 身体が急に軽くなり、なんだかふわふわとして頼りない感じがする。
 壁や床に手をつきながら何とか立ち上がったものの、幼子はまたも躊躇した。牢獄の扉の前でしんぼうづよく待っていてくれる、あの優しい声についてゆきたい。けれども、何かが幼子の足をひきとめた。
 振り返ると、強い光炎で石壁にうつった幼子の影が長く伸び、中からざわざわと無数の黒い蝶が生まれていた。

(行かないでおくれ)
(ここでともに泣いておくれ。憎んでおくれ)
(そのままでいいと、ここにいていいと言っておくれ・・・・・・)

 蝶は幼子を光から隠そうとするかのように群れをなして飛び回り、彼の視界をさえぎる。白い閃光の主も、この蝶は斬れないようだった。

「いいえ。この子は・・・・・・あなたがたは、前へすすむべきです」
 さきほどよりもきっぱりした調子で、優しい声が告げる。
「さあ、おいで」
 はっきりとは見えなかったが、やわらかい緑の輝きのなかで、声の主がその腕をひろげてくれるのがわかった。

 そのままでいいと言っておくれ。
 あなたがたは、前へすすむべきです。

 黒い蝶の乱舞のように、ふたつの言葉が頭の中でぐちゃぐちゃに飛びかっている。どちらを選べばいいのか、まるでわからなかった。

 そのままでいい、と言われて喜んでいた。
 ここにいていい、と言われて泣いていた。

 それは確かに嬉しくて、認められてうれしくて涙があふれたはずなのに、どうしてかなしみはまた還ってくるんだろう?
 幼子は胸のなかで呟いた。








(つづく)

******************

さあ、いよいよクライマックスとなってきました~!

まとめて読みたいと言って下さる奇特な方は、フリーページからどうぞです♪

しかし物書きって、SでMじゃないと書けないよな・・・と思ったり(^^;
ちなみに明日は太極拳の日なので、日記はともかく、小説の更新はたぶんできないんじゃないかと思います。
皆様、蛇の生殺し気分をじっくりとお楽しみください(^^;(←鬼)






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最終更新日  2010年05月14日 17時25分29秒
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