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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年09月05日
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やさしい光が世界に満ちる。

たまゆらに未来の姿がひらめくのか、それとも癒しの力が流れたという証なのか、このひとときだけは惑星の傷も消え、緑なす大地は癒されたように見える。

儀式の終わりが近づいていた。
星の女神と、彼女を訪う夫が還り、身体が依り代となった人間達に戻される。

とはいえそこはまだ上次元であり、リフィアは夢のようなあけぼのの光のただ中に立っていた。

(きれい……)
(リフィアン、これが、私が見て……信じている世界だよ)

華奢な身体を改めて抱き寄せ、アルディアスの顔に戻って彼が言う。

どんなに辛い目にあっても、どんなに酸鼻な戦場をその足で駆けてきても。

あたたかな光に満ちた黎明の世。

(たとえ甘いと言われようとも……信じていたいんだ、私は)

何度裏切られようとも。
何度傷ついて涙をのもうとも、奥底でずっと信じ祈り続けていたいのだ。
それこそはきっと、彼が彼である芯の部分でもあるのだろう。

リフィアは答える代わりに、頭をそっと彼の方にもたせかけた。

目の前に広がる美しい世界がたとえ夢であったとしても、自分もまた彼とともに祈るだろう。
そうして強く信じ祈り続けているかぎり、いつかそれはやってくるのだ。
違えようのない真実となって。


直接流れ込んでくる絶対的な信頼感に微笑んで、アルディアスは妻なるひとの頬に軽く口づけた。

(では、戻ろうか)


しゃらん、という澄んだ音が耳に響くと、二人は奥院の魔法陣の上に肉体を持って立っていた。
思わず膝が折れそうになるリフィアを力強い腕が支えている。

奥院の天井に填め込まれたステンドグラスから、夢のような光がきらきらと降りそそいでいた。
礼拝堂などと比べるとそう広くもない室内には、依然強いエネルギーが満ち満ちて光が舞っているようだった。
美しい白い大理石で造られているそこには、中央に大きく精緻な魔法陣が彫りこまれている以外何もない。


「神事は滞りなく終わったよ。……リン、大丈夫かい?」

アルディアスが心配そうに覗きこむ。リフィアは回された腕に掴まるようにして、ほっと息をついた。

「え……ええ」

答えはしたものの、意識はまだぼんやりとしている。これから何をするのだったっけ?

「外へ出て、それから大階段で皆に手を振るんだよ。休ませてあげたいけれど、ここではかえって辛いだろうしね。バルコニーに出る前、別室で少し休めると思うから」

そういうと、アルディアスは片手に錫を持ったまま、軽々とリフィアの身体を抱き上げた。
そのまま床の魔法陣にすすみ、錫で中央を打ちつける。

淡い光が立ち上がり、彼らは奥院の外へと戻った。


「祭主さま、リフィアさま、おめでとうございます」

礼拝堂から奥院へ伸びる渡り廊下で、居並ぶ神官や巫女達が口々に祝辞をのべる。
アルディアスは腕にリフィアを抱いたまま、穏やかな笑顔で一人ひとりに礼を言い、祝福を、と呟いては軽く錫を鳴らしていた。
しゃらんと澄んだ音がするたびに、その先端からはやわらかな輝きが広がって相手に降りそそいでゆく。

先代との年齢差が大きいため、陰陽の神事が行われたのはまさに五十年以上ぶりだという。
彼らの喜びもまた当然のものかもしれないと、くらくらとする頭でリフィアは考えた。
抱き上げられたままなのは気恥ずかしいのだが、自分の足で歩ける自信が今はまったくない。

アルディアスに合わせて小さく礼をのべるのが精一杯で、彼もそれをわかってくれているのだろう、腕から降ろそうとはせずに控えの間まで連れて行ってくれた。

控えの間の長椅子にそっと降ろされて大きく息をつくと、横から飲み物が差し出された。

「お疲れさまでした。お水と、アルコール分のない『ヴェータ』ですわ。元気が出ますから、どうぞ」

微笑んでいるのはティーラだ。彼女もまた、エル・フィンとともに神事の始まりの歌を歌うという、大役を果たしたはずだった。
彼女の顔を見て、ようやくリフィアは現在に戻って来たという実感とホッとした気持ちが入り混じってきた。

礼を言って水を飲むと、甘い。一気に飲み干してヴェータのグラスと取り替えてもらう。
とろりと甘酸っぱい味が広がり、ゆっくりと身体の力が抜けてゆく。

頭の芯に霞がかかっているような気がするのは、続く緊張のためだろうか。

「疲れたろう? 歩けるようになってから出るからね。しばらく休んで」

隣の椅子に座るアルディアスの手にも、金色の液体を満たしたグラスがある。
ゆったりとしたその姿は、奥院の上で見た美女のようではもうなかったが、じゅうぶんに神話の神々といっても通りそうだった。
いつもよりも目が印象的だと思うのは、アイラインかシャドウをひいているのだとようやく気づく。

「祭主さま、人々が祝福を求めております」
「わかった。……また迎えに来るから、少し横になっておやすみ」

どことなくぼんやりしているリフィアの髪を撫で、額に唇を落して立ち上がる。
その背中を見送ると、ティーラはリフィアに向き直った。

「いくら訓練なさったといっても、伴侶役は大変ですもの。祭主さまが礼拝堂の人々の祝福に行っておられる間は、伴侶役の方はこちらでお休みになられるよう、元々定められているんです」

少なくとも一時間はかかりましょう、だからご遠慮なくゆっくりなさってくださいませ、と微笑む。

神経が立っていて眠れそうにもなかったが、同時に疲れてもいたし、なんだかついぼんやりとしてしまう。
うっすらと意識が漂うにまかせて、リフィアは目を閉じた。






















【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



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☆ゲリラ開催☆ 8/30~9/5 はじまりの光 ~ 一斉ヒーリング








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最終更新日  2010年09月05日 19時56分59秒
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