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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年09月23日
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ステンドグラスからやわらかな光の射す大礼拝堂。


巫女達の澄んだ歌声が響きはじめ、正面の大扉が開かれた。
父親に添われた花嫁が、純白のドレスの裾を長く引きながら、ゆっくりと花の飾られた通路を祭壇にむかう。

花嫁が花婿の腕に移ったときに巫女達の歌も終わり、神官がゆっくりと詩篇の朗読を始めた。
ヴェールの花の彫刻が施された鈴を手に、新郎新婦に祝福を授ける。

「汝、病めるときも健やかなるときも、ヴェールの花のごとくにこの者を受け入れる器となり、陽のごとく月のごとくに寄り添ってあることを誓いますか」

「誓います」

新郎新婦が誓いを立てると、神官は鷹揚にうなずいて新郎を促した。

覗いて微笑む藍色の瞳に、リフィアは感慨無量な気分になった。

式次第は古風なものを踏襲している。
指輪を交換し、互いにその手をのべて重ねる。そこへ神官が優雅な動作で美しい織りの聖布をかけ、金の鈴ですずやかな音を奏でた。

「天なる神、地なる神もご照覧あれ。ここなる二人が誓いの言の葉と指輪を持って、夫婦の契りを交わしたことを。
末永く、ヴェールの器が枯れるまでこれらの魂が互いに寄り添い、いついつまでも幸せであるように……」

重々しい宣言がなされ、その余韻が終わりかけると、かぶせるように祭壇の斜め後ろに控えていたエル・フィンとティーラの歌が始まった。
二人の美しいハーモニーが、礼拝堂の広い空間を満たしてゆく。

リフィアは歌ってくれるエル・フィンに感謝の気持ちでいっぱいになりながらも、また体調を崩したらどうしようかと不安になった。今日はアルディアスが同時に歌うことはないのだ。
しかし重ねられた手に力がこめられ、見上げた藍色の瞳は(大丈夫)と優しく微笑んでいる。

曲が違うからかもしれないし、神事をこなしたリフィアが少し慣れたのかもしれない。彼が微笑んだとおりに揺らされることがなかったので、リフィアはようやく安心した。

そして参列の人々も聖歌を唱和して、おごそかに式は挙げられた。



ここでも歌う予定になっていたエル・フィンは、居並ぶお歴々を見て眩暈を起しそうになった。
軍部を空にするわけにはいかないから全員ではないとはいえ、元帥やら大将やらの姿も見える。もちろん神殿側からも、高位の神官が何人も列席していた。

アルディアスは准将だから、将官の中では最下位の階級なのだが、彼をめぐってかつて中央神殿と軍部で取り合いがあったと言う噂の真実味を感じさせる面々だ。

壇上に花嫁と座る上司はにこやかで幸せそうではあるが、内心はもっとこぢんまりとしたかったのだろうな、とエル・フィンは推測した。
すると、その声が聞こえたかのように軽い心話が届けられる。


(つきあいという奴ですね。マスターご自身の肩書きが高いんですから、仕方がないでしょう。お世話様です)
(やれやれだ。せいぜいリフィアの親族の顔つなぎになるといいんだが)

ため息まじりの心話に、金髪の青年は苦笑した。軍部と神殿側との調整には、ギルドが仲立ちしたのだろう。リフィアの実家が商家であることで、通常よりかなり楽に調整ができたのだろうと思われた。

(それはそうと、スピーチがないんですね。この面子なら一人十分は語れそうですが)
(神殿と軍部で順番に揉めそうだったのでね。それくらいなら全部なしで押し切った。それだけは幸いだな)
(さすがです)

話の長い司令部の面々を思い浮かべて、深くエル・フィンがうなずく。
神官は説教が仕事のようなものだし、軍人よりは話が上手いだろうが何人も続けば飽きるに違いない。

そこまで考えて、神殿の頂点にいる銀髪の上司は、そういえばあまり説教をしないな、と思いついておかしくなる。
神殿にも軍部にも、どちらにもはまりきらない。どこまでいってもユニークな人だ。

(なんだい?)
(何でもありません。精一杯歌わせていただきますよ)

瞳をかすかに和らげたまま、エル・フィンは隣のティーラにうなずきかけ、歌うために大きく息を吸った。
とはいっても、披露宴では式よりも少し砕けた歌で高音域もない。服装も礼拝堂を出るときにエル・フィンだけ着替えて、警備についているオーディンらと同じ軍礼装だった。


そのオーディンは、扉の前で後ろ手を組んで警護に当たりつつ、内心苦虫を噛み潰していた。

彼の視界左側、白い布をかけた丸テーブルについている髭の赤ら顔の男。
でっぷりと肥った腹を時々撫でさすりつつ、饗される食事を口にしながら大げさに嬉しそうな様子で、身振り手振りを交えて同じテーブルの人間と喋っている。

(ちっ、面の皮の厚い奴……見てろ、そのうちただじゃおかねえ)

エル・フィンの歌に笑いながら拍手するのを見て心に毒づいてしまったのは、この男が例の誘拐殺人事件の黒幕の一人であることを、上司から聞かされていたからだった。

アルディアスに対してかなりの敵意を持っているのは間違いないだろうが、少なくとも対外的にはそれを微塵も感じさせず、その笑い方も慇懃無礼とはいえない。
先日の作戦で捕らえたムービー作成所のトップあたりと比べると、たしかに格が違うようだ。

人当たりは悪くないため、敵意は単に派閥的なものと見られていた。
軍の上層部には、二本柱の一方である神殿が力を持ちすぎることへの怖れがある。
アルディアスの出世は神殿の発言力を強める結果にもなるが、民衆や下士官の支持を得られやすくもなる。複雑な二律背反が軍部にはあり、その歪んだはけ口として、銀髪の男の暗殺計画がたびたび泡沫のように浮かび上がってくるのだった。

しかし神殿と軍部、その両方から注目を浴びているこの式では、なにか事を起すことはあるまい。警備も結界もものすごいし、何より目立ちすぎる。
えせ笑いを浮かべているその男を、表情を消したブルースピネルの瞳がひそかにしっかりと監視していた。


そのうちに披露宴もお開きになると、今まで待ちぼうけを喰わされていた取材陣が二人に押しかけた。

将官の結婚は珍しいものではない(それでも人によってはニュースになる)が、大神官としての神事はじつに半世紀以上ぶりであり、また掛け持ちをしていることでも、アルディアスの話題性は高かったのだ。
本人の意には思いきり反していても、その外見も含めてマスコミ連中にとってはいい話題になるのだった。

軍人も将官となると公人であるから、すべてを無下に断るわけにもいかない。
部屋の美しいタペストリーの前に並んだ主役の二人を、セキュリティーチェックを通った取材陣が取り囲み、手に手に眩しいフラッシュを焚いた。

(すげえな、大変だよなあ)

素でオーディンは感心し、いきなりこんな衆人環視で花嫁は大丈夫だろうかと警備しながらも心配になる。

しかし見ている限り、リフィアはしっかりと落ち着いているようだった。
潔斎前に面会に行ったときは普通のお嬢さんだったのに、ほんの半月でこんなに変わってしまうんだな、とすこし感慨にふけってしまう。
潔斎をしたり神事に携わったりしたことも、もちろんあるのだろう。
しかし、なにより愛する人と結ばれたというのはとても人を変えるのだろうな、と過去の儚い面影を胸に思った。

誰にも語らずに抱き続けているその思い出は、いつもやさしく微笑んでいる。
あたたかな面影に支えられ、救えなかった悔恨を抱き、もし来世というものがあるならばとまだ見ぬ未来を誓って、彼はひとり時を積み重ねてきた。
外からは孤独に見えても、それは彼にとっては譲れぬ大事な時間だったのだ。

その時の重さを知るだけに、敬愛する上司が愛する人と互いに想いを伝えあい無事に結ばれたことは、言葉にならぬほどの感慨を彼にもたらした。


警備の仕事を終えて軍の宿舎に帰ると、オーディンはとりあえず着替えた後、酒を頼み食堂の椅子にぐったりと倒れこんだ。まだ昼間ではあったが、なんとも気疲れして眠りたい気分だ。

ふと目をやると、隣のテーブルに場所取りのリュックサックが置いてある。
同僚のものとおぼしきそのリュックには、見覚えのあるお守りが下げられていた。
三日前の大祭で、神殿に集った人たちが持っていた小さなワンド。怒涛の祭りの一日が終わった後そいつの部屋で飲んでいるときに、こんなもの買ったぜと見せてもらったものだった。

クリスタルのワンドは、秋の夕映えの光を静かに反射している。
魔法にかけられたようなひとときだったけれど、本当に起こったことだったのだ、とそれは教えてくれているようだった。

(……本当なんだ、な)

半分まだ夢覚めやらぬような気持ちで、ぼんやりとオーディンは考えた。





















【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次




今日は秋分&満月&星が6個だか直列するとか??
昨日の中秋の名月の日とどちらにアップしようかなと迷ってたのですが、
結局昨日はバタバタして今日になってしまいました^^;


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☆ゲリラ開催☆ 9/20~9/26 レインボー・エナジー・フレイム 一斉ヒーリング





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最終更新日  2010年09月23日 16時04分32秒
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