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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年11月04日
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「そうか、あんたが今度の俺の上司か。よろしくな」

目の前に立った青年に、オーディンはにやりと笑った。
それを受けた相手もにっこりと笑う。

長い銀髪に藍色の瞳は、五年前ロッカールームで初めて出会ったときと何も変わっていなかったが、体格もぐっと良くなり、背ははるかに伸びていつの間にかオーディンを抜いていた。

「今日付で着任しました、アルディアス・フェロウ准尉です。よろしく」

すっかりいい青年になった相手が敬礼する。細くて華奢だった手も、ずいぶんと大きく逞しくなった。
青年が十七歳で士官学校に入るまでの二年ほど、どこかで会えば何度か話したりはしていたが、そういえばちゃんと名前を聞いたことがなかったと、ようやくオーディンは思い当たった。

「オーディン・ガーフェル一等兵だ」
「昇進、してないんですか? 戦果は上げていたはずなのに」


がしがし頭を掻くと、くすっと声がした。

「構わないよ。若輩者だから」

とりあえず砕けた口調に変えて、軍人には見えないような柔らかさでアルディアスが微笑む。
入隊後、彼がひどく辛い目に遭っている時にもオーディンは行き会ったことがあるから、その微笑が変わっていないことに少しほっとした。
次代の大神官という身分が軍にばれ、神殿の意向で士官学校に入ると聞いたとき、今度会うときには上司だなと見送った日が懐かしい。


それから一年ほども経った戦場での夜。
満天の星の下で、初めてオーディンは青年の静かな歌声を聴いた。

その声はあまりにも優しくなつかしくて、命をかけて戦地を走る者たちに大切なものを思い出させる。
気にかけていた初陣の若者が、蜂蜜色の髪を毛布に隠して嗚咽を隠しかすかに震えているのを見やりながら、オーディンもまた涙を拭っていた。

「あんた、歌うまいんだな」

翌朝、食事を終えたオーディンは若い上司を見かけると言った。

アルディアスは微笑み、それから少し心配げな顔になった。

「ありがとう。神殿では歌うのが日常だからつい……うるさくなかった?」
「いや。皆静かに泣いてたぞ。ふるさとを思い出すような、いい声だった」

言いながら、軍服の腰で手を拭って差し出す。賞賛のつもりだったが、銀髪の若者はわずかに躊躇した後その手をとった。
握手をした瞬間、アルディアスの瞳がわずかに見開かれる。何か言いたそうな彼の様子を察して、オーディンは試しに自分から心話で話しかけてみた。


(……ごめん)

はっきりとした答えが返り、やはり聞こえているのだと確信する。ほぼサイキックのない人間の心の声まであっさりサポートをして拾ってしまうこの上司の到達域は、もしかしてこの二年の間にさらに強くなっているのかもしれない。
手を離し、首を傾げてオーディンは片方の眉を上げてみせた。

(あんたなら構わん。今さら隠すようなこともないしな。今度は何だった?)
(オーリイ、君は……君は、帰りたいとも、未来にゆきたいとも、思っていない。ラベンダーの香りとともに、すべての希望を土の下に埋めて)

痛ましげな表情から発されたその言葉に、オーディンの口から盛大なため息が漏れる。

(それもばれたか……ほんとにしょうがねえや)

肩をすくめて、彼は荷物に向き直った。並んで背嚢を整理しながら、ぽつぽつと語る彼の心が届く。

(俺はもう、自分の未来とか、希望とか、そういうものを自分に許していないんだ。
俺は、大事な人に想いを伝えることができなかったし、大事な人を救うこともできなかった。何よりも大事な人だったのに……)

それができなかった、しようとしなかった自分自身が、つくづく嫌になったのだ。

だから軍隊の、それも一番下方に居続けた。
昇進を断り、つねに危険な前線に立ち続けて。

オーディンは軽く首を振り、目で蜂蜜色の髪をした初陣の若者を指した。

(俺の周りには、あんたを含め、今度入ったあいつみたいな、俺より若くて才能があって、未来のあるやつがたくさんいる。そういうやつが思いきり未来とか幸せとか、そういうのを選べるように、ちょっとでもいいから手伝うことができたら、それでいい)
(オーリイ……)

(俺はあんたが気に入ってる。例えば……あんたが幸せになってくれたら、俺はそれで幸せだ。俺が大事に思ってるやつらが幸せになってくれて、そいつらと一緒に、少しでも楽しい時間が過ごせたら、俺は十分だ)

荷物を詰めた背嚢を掌で叩いて形を整える。口部分の紐をぎゅっと引き絞る手には、必要より少し多く力がこもっているようだった。
アルディアスも荷物を詰め終え、毛布をくるくると巻いて締めた紐でくくり、蓋をかぶせて閉じる。

無言ながらじっと耳を傾けてくれている青年にむけ、眉根を寄せわずかに自嘲的な苦笑いを唇の端にひらめかせて、オーディンは背嚢を手に立ち上がった。
彼らがいた洞窟の出口のあたりからは、岩山を越えて朝日が昇ってくるのがよく見える。
アルディアスも立ち上がり、そっと促すように隣を見た。

オーディンは常に不安だった。
幸せにできなかったあの人から目をそらし、己のことばかり考えるようになったら……。
自分は、あの人を忘れてしまうのではないかと。

(それが……、怖いんだよ。大事な人なのに忘れちまうなんて)

鋭く射しこむ朝日にブルースピネルの瞳を細めつつ、オーディンは語る。

(俺は、自分を許さないことで、自分をあの人と結び付けようとしてるのかもしれん。ばかげた考えかもしれない。でも、それだけ俺にとっては、本当に大切な人なんだ……。…今でも)

その瞳がきらめいたのは、朝日かそれとも他の理由によるものか、判別がつかなかった。
荒涼とした乾いた大地のむこう、葉の落ちた寒々しい木がちらほらと生えている岩山のさらに遠くから昇る太陽。
彼らの影を長く伸ばしたその光は、徐々に強く広く周囲を照らして一日の始まりを告げた。

あえて視線を朝日に固定し、隣を見ずにいたオーディンの頭に声が届く。

(そう……)

ただそれだけを返した銀髪の青年を思わず見直すと、痛みをこらえるような藍色の瞳が静かに彼を見ていた。

(オーリイ。ただひとつ、どうか自分の身体も大事にしてくれ。君を慕う者たちは、君が思っているよりずっと多いんだから)

オーディンが吐露した考えについて、それは間違ってるとも、本当にそれでいいのかいとも言わない。
ただただそっと受け止めてもらえたことに救われた気持ちになりつつ、心配げな青年の瞳に、オーディンは神妙にうなずいたのだった。


想いは手放せない、手放さない。
それを抱きしめていることが、自分が自分である意味のようにも思えるから。

永遠に、忘れることのないように。

そうすることで光の剣とともに胸に思い出が刻まれるかのように、オーディンは岩山の縁に立ち尽くして陽を浴びた。
日々の朝日を、月の光を、窓辺の光を受けるたびに、鮮やかにあのひとを思い出せるように。




  …… ラベンダーは青い ラベンダーは緑
     僕が王様  ね、女王様になって?


     私を愛するあなた あなたを愛する私
     私が女王様なら あなたは王様ね…… 






















【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



皆様、たくさんの反響をありがとうございます。
1話めを除き、オーディンさん達の大事な物語に私からコメントレスするのもなんだか気がひけてしまい、レスは控えさせていただいておりますが
すべて大切に拝見しております。


オーディンさんとエリーデさん、お二人とも本体様がいらっしゃいます。
今生無事にお会いになり、今は上で仲良くご夫婦としてお幸せに暮らしていらっしゃいます^^
後の物語についてこんなふうなご報告ができるのも、銀月ならではですね~w

ところがお二人とも大変シャイでして、「私たちが銀月外伝に4話も使っちゃっていいんでしょうかっ」と大変不安がっておられたりもしましてwww

過去の課題を思い出し、今生また大波にもまれながらもご一緒に乗り越えられたのですから、それはもう素晴らしいことだし、大切に物語として書かせていただけて、私はとても光栄なのですけど。

どうぞ皆様、長い長い時を超えてついに結ばれたお二人へのご結婚祝い、未来への祝福として、よろしければこちらのコメント欄にご感想やメッセージをいただけたら幸いでございます♪
拙いブログですが、謹んでこの場をお二人にプレゼントさせていただきたいと思いますw



そして最後に私から。
オーディンさん、エリーデさん、ご結婚おめでとうございます♪
どんな波があっても、お二人ならば越えてゆかれるのでしょう。
当時のアルディアスとして今の私として、心から祝福を贈らせていただきます。
どうぞ末永くお幸せに……♪



★お二人に祝福のメッセージをありがとうございました。
頂いた皆様へ、お二人からのお礼の言葉をお預かりいたしました。
「外伝秘話 ~ 物語の奇跡」 という稿にまとめましたので、よろしければご覧下さいませ^^ (11/11,2010)






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最終更新日  2010年11月11日 14時57分08秒
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