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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年11月30日
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「いいかい、この有人衛星には構造上の欠点がある」

ディスプレイ上の地図でひとつの衛星を示しながらアルディアスが言う。
会議机を囲んだ部隊の主な面々が、地図を確認しながらうなずいた。

新居でリフィアと小さな喧嘩をする一週間ほど前のことだ。
銀髪の男は結婚後初めての長期作戦に出て、艦橋で作戦説明をしているところだった。その左手にシンプルな指輪が光っている。

大型ディスプレイに表示されているのは、小型宇宙ステーションと言ってもいいような大きさの有人衛星だった。
場所は敵味方の境界線宙域にある惑星ゲミノリウムの、ふたつの月の片方、その衛星軌道上。衛星の規模そのものはそれほど大きくないがいくつかの階層を持ち、さまざま電子情報機器を積み込んで敵本国と連携をとっていることがわかっている。

アルディアスが手元のパネルを操作すると、現在は相手の陣地である惑星とカストル、ポルクスと呼ばれる二つの月、そしてターゲットの衛星が画面の中で動き始める。
大きな惑星の最外郭軌道を大きなカストルと小さなポルクスが少し離れて回り、それぞれの月の周りを二つずつの衛星が巡るという状態だ。



「それぞれの衛星を、Aa、Ab、Ba、Bbとする。これら4つの衛星はAaを頭として緊密な連携をとり、敵本星の通信基地に常に周辺宙域の詳細なデータを送っている」

アルディアスの声とともに四つの衛星が大写しになり、捉えた限りのスペックがざっと表示される。
有人なのはAaのみで、他は大きさも小さく無人であることが確認されていた。

「このAaが、今から3日後に蝕に入るんだ」

画面の中で星々が動き、ある一点で静止した。
二つの月は、同じ速度で周回しているわけではない。ポルクスが微妙に遅く、月はついたり離れたりを繰り返している。
画面上の星は、緑色に点滅している敵の本星から見て、Ba、ポルクス、Bb、そして惑星、Ab、カストル、Aaのほぼ一直線に並ぶ様子で止まっていた。

「通常、どれかの衛星が惑星の蝕に入っても通信が途切れないよう、他の3つがフォローするようになっている。しかし今回に限っては、Baを除きほぼすべての衛星が蝕に入るのと同じ状態になる。もちろん、敵もそれを警戒しているだろうが」

画面が動き始め、小さなポルクスを回る二つの衛星が角度を変えた。

「完全に一列の蝕に入るのは、ほんの一瞬にすぎない。ポルクスを回るBa、Bbはすぐに角度を作るしね。我々にとって大切なのは、連携の頭となるAaが、我々の領地に近い宙域で蝕に入るということだ」
「准将、その時間的長さはどれくらいなのですか」



「おおよそ四分」
「四分……!」

あまりの短さに会議室に唸り声が満ちる。

「その四分の間、Aaは完全に通信網から遮断される。Ba、Bbは三十秒後すぐに通信回復するが、カストルと惑星に挟まれたAbも中継点の用をなさないから、実質四分の空白だね」

ただし、とアルディアスは続けた。



赤線で示された境界線の相手側、Aaと他衛星にうまく角度を作れる位置に、巡視艇と思われる艦を囲んで六隻ほどの艦隊が光点で表示されていた。

「角度的には、Aグループのデータを受け取って本国にも送れる位置だ」
「つまり、Aaを落とすためにはこの巡視艇も落とさにゃならんってことか」
「そういうこと。セリー、君に頼んでいいかい?」
「おう、まかしとけ。蝕の直前にうまいこと倒してやる」

セラフィトは親友の信頼ににやりと笑って応えた。蝕のタイミングとずれると応援を出される危険性があるため、直前でなくてはならないなどの注意事項は、いまさら言うまでもなく飲み込んでいる。
友の自信と聡明さに微笑んで、アルディアスは他の隊員達に顔を向けた。

「では、Aa本体のほうだけどね。ニールス、オーディンは共に一隊をひきいて、セリーが巡視艇を攻撃するのと同時に奇襲をかけてほしい」
「イエス・サー」
「了解」
「その後はこのポイントを占拠して味方の応援を待つと同時に、敵方の通信回線を遮断して時間稼ぎの足場を作るように。蝕は短いから迅速に頼むよ」

それから、とアルディアスは金髪の青年を見やった。

「エル・フィンの分隊は偵察艇に乗って、通信ジャミングと小型偵察機の操作をしてもらう。エル・フィン、何機まで掌握できる?」
「は……攻撃も考慮に入れるなら、二機までは」
「わかった、では二機操作してくれ。タイミングが物を言う作戦だからね、細かい報告を期待している」
「承知しました」
「私は本隊を指揮し、セラフィト、ニールス両隊の援護をしつつAaに近づいて占拠を目指す。テレパスの到達領域は最大限に広げておくから、通常通信で間に合わないときは心話を使うように」

それから伝達は補給ポイントに関することに移った。出島のように陣地が増えれば、当然しっかりした補給線が必要になる。
かねてから気になっていた途中の補給ポイントについても、奇襲のための一時寄港地としつつ同時に詳細なレポートを作成することになった。

「しばらくは忙しくて申し訳ないけれど、皆、頼むよ」
「イエス・サー!」

斉唱とともに、ぴりっとした空気が部隊を覆った。



母国と敵国の境界線付近には、互いの暗黙の了解のうちに戦場と認定されている宙域や星がいくつかある。
チェスの盤面のように、そのポイントを取ったり取られたりで勢力図が書き換わるのだ。
砂漠の民族がオアシスを中立地帯と取り決めて砂の上で戦うように、長く長く続く戦いにおいて、少しでも自国の消耗を減らそうというお互いの思惑からいつのまにか発生した了解事ではあった。
そうして両国は、微妙な馴れ合いのような状態にありつつも、常にお互い拮抗した勢力を保ち続けていたのだ。

もちろん、その「戦場」から逸脱した場所に攻撃を仕掛けたり仕掛けられたりすることもある。
しかしそれらの場所は攻めるに難しいことが多く、攻撃側は多大な犠牲を覚悟しなくてはならないことが常だった。

惑星ゲミノリウムと双子の月は、もともとヴェール星の監視下にあった場所であった。
それをある時敵側が制圧し、有人のものを含めて4つの衛星を設置、敵側の勢力に組み込んでしまったのだ。

惑星自体は住むにも適さず、埋蔵資源もコストに見合うほどではないと調査結果が出ているが、ちょうど互いの勢力図の指標とはなっている。

以来、双子の月奪還はヴェール星の懸念材料になっていた。
しかし、今回の作戦に関わるのはアルディアス部隊のみ。最初もっとも少ない人数であったにも関わらず安定した戦績を上げ始めた部隊に対し、失敗してもそれほど実害のない場所を攻めさせて、上層部は実力を試しているのだろう、というのが大方の見方であった。

「攻撃用意! 砲手、敵艦の砲台を狙え。少し遠いがセラフィトの艦に当てるなよ」
「イエス・サー。勿論です。弾道計算終了しました」
「フェロウ隊の得意技を見せてやりましょう」

艦橋に長身を立て、星々を写す正面の大スクリーンを見つめる銀髪の司令官の声に、陽気な砲手たちの返答がかぶる。
数瞬の沈黙の後、アルディアスの右手が振り下ろされた。

「撃て!」

いくつもの流星が尾をひいて、敵の巡航艦に襲いかかる。アルディアスの軍は衛星と巡航艦の通信波をちょうど妨害する位置に布陣していた。
敵近くに潜んでいたセラフィトの艦隊数隻が、躍り上がるように巡航艦に噛みついてゆく。

「敵本国、こちらを感知したようです。近場のβ基地から応援が向かってきます。その数現在、二十隻あまり」

妨害電波をかいくぐり、エル・フィンからの偵察報告が入ってくる。

「了解。セラフィト!」
「おうよ。こっちはもう少しだな。このまま食い破っていったん通過、天底方向に向かいつつ反転に入るから、でかい土産をもう一発頼むぜ」
「わかった。砲手、用意はいいか? セリーの艦が離脱した一瞬のタイミングで狙うぞ」
「イエス・サー!」
「エル・フィン、そちらが近いから時機を読んでくれ」

矢次早の命令が通信回線を飛び交ってゆく。

「了解。セラフィト様の艦は敵艦隊の中央突破しました。離脱を開……」

そこで急にエル・フィンの声が途切れた。

(どうした、エル・フィン?)
(大丈夫です。流れ弾が船に向かってきましたが、回避しました。偵察を続けます)

偵察船の中で意識を小型偵察機に合わせ目を閉じていたエル・フィンは、額の汗を拭った。
小さな偵察船そのものが敵に見つかったとは考えにくいから流れ弾だろうが、いきなり白い光が向かってきたときには一瞬息を呑んでしまった。

最大限に解放された上司のサイキックフィールドは、通信網に負けない強度のやりとりを可能にしている。
しかし上司にばかり負担をかけたくはないから、すばやく心話で答えてからエル・フィンは意識を偵察機へ繋ぎなおし、通信網へ声を投げた。

「セラフィト様の艦、離脱しかけています。敵追撃を始めています。味方の艦が攻撃衝撃域を離れるまで後5秒。5、4、3、2、1」
「撃て!」

抜群のタイミングで、白い光の流れが敵艦に集中してゆく。砲台と駆動部、通信部のあたりを損傷させてしまえば、爆発までもってゆく必要はないというのがフェロウ隊の考え方だった。
いくつもの小さな脱出艇には目もくれず、セラフィトの小隊が今度は衛星に向かう本隊に俊足で合流してくる。

アルディアスの本隊はそれを受け入れて護りながら柔らかく後退し、あっという間にAa奇襲部隊の援護へ回った。






















【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次


というわけで、前話【宵闇】でアルディアス部隊が疲れ果てていた理由です。

でもこの話、実はまだ続きが全部は出てきてないんですけども、、、爆
さすがに更新が止まりっぱなしで申し訳ないので、ちょっと自分を追い込んでみた ←

ちなみに、名称にギリシア神話由来の単語が使われておりますが。
本来ならヴェール星の神話があるんでしょうけど、とりあえず似た感触の地球語で間に合わせております。
けっこう神話由来の名称が多そうなんで、多分今後も出てくると思いますが
言葉の感触に違和感がないのでお許しください^^;


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最終更新日  2010年11月30日 10時58分16秒
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