源にふれろ

源にふれろ

August 4, 2005
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『カーテンコール』を試写会で見た。『チルソクの夏』『半落ち』の佐々部清監督作品。

昭和30年代後半から40年代前半にかけて、映画の幕間に歌や物真似を披露していた「幕間芸人」の話。

舞台は下関。時代は昭和40年代、ということで、設定は『チルソクの夏』と同じ。あの作品でヒロインの父親(山本譲二)が売れない流しのギターをしていたが、あの親子関係に焦点を当てて、映画にしたような作り。

<序>にあたる前半45分くらいは、幕間芸人とはどんなモノだったか、タウン誌の編集者・香織(伊藤歩)の取材という形で語られる。語り手は当時を知る映画館の売店のおばちゃん(藤村志保)。
 このナラティブ(語り方)が失敗だと思う。単なる説明にしかなっておらず、ラジオドラマじゃねえんだぞ、と退屈してくる。
 むかしが題材の話を作る場合、なぜその話を現代に?という突っ込みが必ずあるので、触媒(のりしろ)として、過去と現代をつなぐこういう登場人物が出てくる(例『マディソン郡の橋』で亡き母の日記を持ってくる息子)が、この場合、香織自体がそう濃いドラマを抱えているわけではないので、時間を割くだけムダではないか、と感じた。香織が抱えるドラマは父親とのわだかまりなのだが、それはメインのストーリーと重複しており、その重複が相乗効果を挙げていればまだしも、そうではない。結局、誰の話だか焦点がぼやけてしまい、むしろマイナス。

<破>で、幕間芸人の安川修平(藤井隆)がいまどこにいるかを編集者が探すことに。安川っていうくらいだから、安っていう在日じゃないか、と民団に行くと、修平の娘・美里(鶴田真由)が地元で焼肉店を営んでいることがわかる。美里の話によれば、父の失職後すぐに母は亡くなり、父は美里に「いい子にして待っていな」と言い残して、失踪してしまった。そんな父親がどこにいようと会いたくない、と言う美里。それを聞いた編集者は、どうにか会わせてあげたいと思う。この動機が弱く、「自分のためでもある」という後付けあり。実は安川は在日だった、というプチびっくりが明かされることで、<序>の中途半端な説明も理解ができるのだが、そこまでして隠しておくべきものだったかどうか。最初からそれを出しておけば、もっと掘り下げた展開に出来たと思う。

<急>で、香織が同級生の助けで、韓国にいる修平を見つけ出す。映画館の閉館に伴って、日本に招待された修平は舞台で最後の歌を披露する。美里は会いたくないと言いながらも、映画館まで来るが、中に入る踏ん切りはつかない。
 それからポンととんで1ヵ月後、韓国に来た美里は、父と再会。あんなに恨んでいたはずなのに、父の懐かしい音楽(「いつでも夢を」)を耳にして、笑顔と涙に襲われてしまう。おしまい。


つまり、幼女時代の美里から見た父親像と家族の幸福、少女時代の美里の父親に対する恨みと憎しみ、現代の美里の置かれている状況(旦那も在日、子供には朝鮮人名を名乗らせている)が全くといっていいほど「画」で描かれておらず、口で言っているだけなので、父親に対する複雑な思い・葛藤が伝わってこない。だから、クライマックスで、父に会いに行こうかどうか迷うシーンがいまいち生きていない。それから急に1ヶ月後、会いに行くのは唐突。その1ヶ月の間に、周囲を巻き込んで、かなりの逡巡があったはずだが。

 こういう話だったら、美里の現代から始めて、家族の幸福とは何かを考えさせる運びにして、少女時代の回想、それが明けたところで初めて記者が取材にやって来て、父親を探すことに・・・・、という展開にした方が良かっただろう。

そういや、『チルソクの夏』も再会しておしまい、だったが、今回もほぼ同じ。そっから先のぶつかり合いと和解が見たかったのに、何だかドラマから逃げてないかね。韓国に訪ねて行くシーンは、健さんの『ホタル』とそっくり。それもそのはず、佐々部監督は『ホタル』のチーフ助監督だったそうだ。作り手として、自己模倣はまずいよ。

(おまけ1)藤井隆は生真面目すぎて、身を持ち崩していくタイプには見えない。生真面目と、生きるのが不器用というのは、ちょっと違うだろう。職を失った40年代中盤は高度成長期であり、斜陽の映画界をのぞけば、仕事はいくらでもあったはずなのに、場末のキャバレーでギターにこだわる理由が見えない。
(おまけ2)現代で、タウン誌のデスクをしている黒田福美の演技が昭和。
(おまけ3)修平の奥さん役の奥貫薫は、『ゲロッパ』『お父さんのバックドロップ』に続き、この映画でも早死にした。
(おまけ4)伊藤歩、鶴田真由、奥貫薫、水谷妃里。監督の女優の好みがわかってきた。正統派美人だが、華がない。
(おまけ5)昭和40年代のシーンを白黒で撮っていたが、これが昭和20年代っぽい。40年代ならやっぱ天然色カラーでしょう。






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Last updated  August 4, 2005 06:47:10 PM
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