エデンの南

エデンの南

January 24, 2005
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カテゴリ: 読書
感想の結論から言ってしまうと、実は正直言って・・・イマイチでした。(^^;)
セブロン少尉やリジアーヌ夫人等の独白が多く、退屈な場面が多々ありまして・・・
話にも、ちとムリがあって、リアリティーに欠けるし、どうにも不自然な感じが否めなかったんです。「つくっている」という感じ。

そんな中でも特筆すべき点もありました。
特に、映画的な場面の切り替わりの巧さはなかなかだと思いました。ジュネはこの『ブレストの乱暴者』で、新しい手法を獲得したのではないでしょうか。

私が今迄読んだジュネの小説は、いつもジュネ本人も出ている体験談だった気がするのだけど…これには一切出て来ず。(「筆者は…」という形では出てくるけど) それに、これには女性が登場するですよ! めずらしっすよ!
淫売屋の女主人、リジアーヌ夫人。かなり重要な役なんです。
しかも、男女の情事の場面まであるではないっすかっ! それも1度だけではない!
これはジュネ小説の中では異色と言ってもいいのではないでしょうか。


退屈と思ってしまった中にも、キラリと光る、ジュネ独特の描写も勿論ありました。
次の文などは、男女、男×男限らず、恋愛や情事の事を実にうまく表わしているのではないでしょうか。

<<快楽が消え去るとき、あなたの心を和らげるやさしい感情、あなたのなかに満ちわたり、あなたを軽くし、あなたのなかに押し入り、あなたを揺蕩わせる肉体の倦怠感、さては厭悪感、そして最後に悲しみ、--そういったものの混った快楽を、ひとはそこから汲み取るのである。>>

次のクレルの描写は、 こちら に書いた『薔薇の奇蹟』でのアルカモーヌの描写のような美しさです。

<<その頃、クレルの顔は陽に焼けて、黒いというよりも、金髪の男の顔がつねにそうであるように、金色に輝いていた。どこかのアラビア人の家の庭で、彼は密柑のたわわに実を結んだ五、六本の枝を摘んできたのだった。彼は歩くとき、肩の筋肉をより効果的に動かすために、何も持たずに手ぶらの状態でいるのを好んでいたから、白い上着のV字型の襟に、それらの絵枝を挿していた。密柑の枝は襟から飛び出して、黒い繻子のネクタイの蔭で、クレルの顎に触れんばかりであった。>>

制服についてのこんな記述も。

<<制服というものの独特の楽しさ、慰安を心ゆくまで味わえないのは、いささか残念であった。儀礼的な服装の魔力によって、制服というものは諸君の人格を無にし、深い安らぎのなかに諸君を沈めてくれる効果があるのである。>>

巻末に出ている、訳者・澁澤龍彦のジャン・ジュネ論は実におもしろいです。
社会の最低に生きる人間、モノホンの泥棒作家はジュネに限った事ではなく、それ程めずらしい事ではないらしいです。
例えば、十五世紀の大詩人フランソワ・ヴィヨン、映画『天井桟敷の人々』に出てくる、代書屋の看板を掲げた不敵な殺し屋ラスネエルのモデルとなった泥棒詩人、ピエル・フランソワ・ラスネエルなどなど。

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<<しかしジャン・ジュネの文学があくまで独自なのは、悪の世界について、泥棒について語るのではなく、サルトルが正しく指摘したように、つねに泥棒として、男色家として語るという点であった。>>

そして、おもしろい事には、澁澤はジュネ作品にフロイト的解釈を試みてます。
・・・とさらにとんでもなく長くなってしまうので、つづきは明日の日記と言う事で。
是非また見に来てくださいませ~&気軽にコメントくださいませ~
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Last updated  January 24, 2005 07:18:16 PM
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Re:ジュネ『ブレストの乱暴者』(01/24)  
哲0701  さん
よくよく考えてみれば、河出文庫のラインアップは
本当にすごいと思います。
「山猫」も「路上」も河出ですね。 (January 25, 2005 12:16:30 AM)

Re[1]:ジュネ『ブレストの乱暴者』(01/24)  
SEAL OF CAIN  さん
哲0701さん
>よくよく考えてみれば、河出文庫のラインアップは
>本当にすごいと思います。
>「山猫」も「路上」も河出ですね。

ここ数年、好きな作家の本がドバドバ出てる気がします。セリーヌとかも河出でしたっけ?(持ってるのは違うけど)
昔は澁澤を河出文庫で揃えてました。 (January 25, 2005 06:44:23 PM)

Re:ジュネ『ブレストの乱暴者』(01/24)  
ヨウヨウ さん
河出文庫って一時しょんぼりした時期ありませんでしたか?(気のせい?)昔のコトなんですが…
世間からの隔離生活が長いヨウヨウのたわごとでした(スミマセン)。

ワタシが河出文庫で揃えたのはハイスミスです。大好きなんです。そういえば「路上」も持ってます。
でも澁澤は持ってない…お金があったら古本屋巡りしたくなりました。 (January 26, 2005 07:34:11 AM)

Re[1]:ジュネ『ブレストの乱暴者』(01/24)  
SEAL OF CAIN  さん
ヨウヨウさん
>河出文庫って一時しょんぼりした時期ありませんでしたか?(気のせい?)

私もそんな気がするんです・・・ここ数年で活性化したよーな・・・

マゾッホの『毛皮…』も河出でした~! 絵は金子國義だし♪
あの頃の澁澤系は、河出、角川、富士見ロマン文庫(ってまだあるの?) あたりが多いっす。 (January 26, 2005 07:23:51 PM)

澁澤さん  
まろ0301  さん
 面白かったのが、『サド侯爵の生涯』中公文庫
 澁澤さんは、「荒俣の先輩」みたいな本も沢山出していて、それなりに面白いのですが、なんかなーというイライラ感があったのですが、この本を服用しましたら、すっきり。(下剤か)
 全力投球してみました、という本です。 (April 14, 2005 11:32:56 PM)

Re:澁澤さん(01/24)  
SEAL OF CAIN  さん
まろ0301さん
> 面白かったのが、『サド侯爵の生涯』中公文庫

あーコレ読んでないかも。確か購入済みではあったと思います。そーゆーのがすごく多くて、死ぬまでに持ってる本読み終わるんだろか、とゆー不安であります。(笑)
○○の手帖とかその辺は、おそらく全部読んでるよーな気がするのですが。世界悪女辞典とかも好きです~

>澁澤さんは、「荒俣の先輩」みたいな

さらには、少し前に亡くなった、種村さんの先輩でしょうかね。 (April 14, 2005 11:56:20 PM)

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