SF拡張の原理

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2010.10.24
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カテゴリ: 文学


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山田風太郎「妖説太閤記」10点
すげえわ、これ。
史伝ものは史実頼みだから10点つけないポリシーの俺だけど、これは掟破りで10点つける。
確かに秀吉の晩年の狂気の凄さは実話だから山風の手柄ってわけでもないんだけど、でも「秀吉の天下取りの原動力はお市の方へのストーカー的な片想いただそれだけであり、一姫死亡により目標を失った後は、ただ性的コンプレックスと疑心暗鬼だけからスターリン的な狂気に陥っていった」というこの着眼点は、山風独自のものである。そしてこの作品がこれほど背筋も凍るような恐怖の物語として成立したのも、まさにこの着眼点ゆえのものなのだ。
そして、明らかに主君が狂っているにもかかわらず、誰もが武士のしきたりや組織に縛られてそれを諌めえず、理不尽な大量処刑や無謀な侵略戦争へと諾々と従って行く武将たち。この日本人の民族性が太平洋戦争に至るまで一貫していることも正当に言及されている。
前半こそ愛すべきロリコン俗物オヤジの謀略成り上がり物語として、ピカレスクヒーローものの面白さを持っているが、それが下巻になり、天下を取って以後の傲慢ぶり、そして市姫の死に至るや、残虐ホラー小説へと一変してゆく。上巻の英雄が、下巻ではもはや恐怖のモンスターである。とりわけ終盤近く、美男子への嫉妬ゆえに甥の秀次とその妾29人、その子や侍女合計39人を公衆の面前で次々と打ち首にする「畜生塚」の描写は恐ろしすぎる。
国民的人気の歴史上の英雄の虚像を剥がし、人類史上稀に見る狂気の大残虐独裁者の性心理学的分析までやってのけた、恐るべき傑作といえる。





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Last updated  2010.10.25 00:36:41


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