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コスモスは散らない。どんなに強い風が吹いたって、ゆらりと体をしならせて、私にいつも、勇気をくれた。少しへこんでても、迷ってても、私に、勇気をくれた。だから私も散らないコスモスになろう、って、昔から決めてた。誰に対しても、って思い始めたのは、そうだな、一人になってからかな。「じゃあな。」いつもと同じ、簡単な君の別れの挨拶。これから起こることはもっと早いんだよ?そう両頬を膨らます私にも気付かず、君は後ろを向き、ゆっくり、ゆっくり歩いていった。何を考えてるのか、私には分からなかった。君が一番分かってるんでしょ?そう、聞きたかった。これでもう、お終い、ってこと。でも、そうだよね。君にとって私は一人のクラスメート。お互い背丈は一緒だけれど、目線は全然、違うんだよね。少しだけ、口を尖らせてゆっくりと足をすすめてると、ちょっとだけ、目が潤んだ。ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、泣いた。次の日、男友達に聞いた話。彼は気付いてたんだとか。私の気持ちも、なにもかも。それなのにあんな態度をとったのは、彼の気遣いだったのかな。でも、私は悲しかったんだ。最後まで、君は私に水を与えなかった。コスモスは、枯れちゃったんだよ。コスモスは、散っちゃったんだよ。帰り道、こぶしのなかの花びらをくしゃりと握ると、また、少しだけ、目が潤んだ。次の日、君の手紙から知った話。「P.S.あんまり、引きずんないでくれよ。」やっぱり、そうだったんだね。君は、一番分かってた。時の流れが今から早くなることも気付いてた。君は気付いてて、それで、私を自分から離した。で、私はちゃんとコスモスになれたのかな、私はちゃんと、時間をゆっくり見つめられたのかな、って考えてみたけれど、無理だった。コスモスになりたかったけれど、散っちゃった。あとすこし、だったけど、枯れちゃった。でも、今考えれば、むしろ枯れててよかったのかもしれない。コスモスの強さに気付いて、コスモスのつらさに気付いて、なくなることを知ることができた。もっと綺麗なコスモスになろうと思った。今、綺麗なコスモスになれてるか、っていっても、私はわかんない。今、ゆっくり時間を過ごしてるか、といっても、少し、微妙。それでも、とりあえず、水はある。コスモスは、咲いている。コスモスは、もう、散らない。
2006.11.17
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秋が好き。だって、コスモスが大好きだから。目の覚めるような白い肌が、私にいつも、元気をくれる。道端に咲く一輪でも、草原に咲き乱れる無数のものでも、変わらず私を癒してくれる。「まるで、コスモスだよね。」コスモス好きの君にそう、言われた。よくわかんなかった。なにがコスモスみたいで、なんでコスモスなのか。それでも私はコスモスが好きだから、嬉しかった。コスモスほど肌も白くないし、コスモスほど冷静に時間の流れに乗れないけれど、君がコスモスといってくれたから、私はできるだけ、コスモスになろうとした。コスモスは、凄い。綺麗なだけじゃない。ぶっきらぼうだけど、ひょうひょうとしているけれど、意外と強い頑張りや。早すぎるときの流れにも焦らず、雨の日ぬれても、次の日にはかならず元気な笑顔をくれる。コスモスは凄い。綺麗なだけじゃないんだ、って、自分と比べてようやく気がついた。みんなに聞いてみると、春と夏が好きな人が多い。春は華やかで、桜がきれい。夏は暑くて、青春だぜ、ってかんじ。だって。でも、やっぱり私は秋が好き。だって、コスモスが大好きだから。コスモスを好きな、君が好きだから。頑張るよ。頑張って、私は君の、コスモスになる。歩道に咲く一輪のコスモスが、細い体を震わせながら、笑顔を見せてくれた気がした。
2006.11.17
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大人になったような気になってる子どもの中に混じるのは、本当にうんざりだ。「雪、積もると思う?」空を見上げる君が、少し苦しそうに僕にたずねる。「積もらねえだろ、まだ11月だし。」ポケットに手を突っ込んで、口を少し尖らせて息を吐くと、飛行機雲のように綺麗な息が、前のほうに飛んでいった。「積もらないかなー。」ガキだな、おまえも。そう小さく呟くと、僕は、目を空から地面に移した。「積もってほしいなー。」空に頼むように、君は空を見上げたままでため息まじりにぼやいた。眉間にしわを寄せて空を睨む君に目を移し、目を細めて両肩を少し上にあげて、くっくっ、と静かに笑った。「なんで笑うの?」怒ったように、君は背伸びしながら僕を見た。「ん?おまえ、面白いな、って。」「わけわかんないしー。」空き缶を蹴って、また、空を見上げた。ガキだな、おまえも。でも、そんな君だから、好きなのかもしれない。でも、言わないよ、好きだ、なんて。だって、わかんないでしょ、言っても。もう少しだけ、この思いは俺んなかであたためとくね。
2006.11.16
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階段を駆け上がると、そこにはイヤフォンを耳にあてて遠くを見つめる君の姿があった。足を忍ばせて近寄って、後ろから抱きついた。目的のないチャイムの音を背景に、目的もなく、抱きついた。「あっぶねえ、落ちるじゃねえか。」そうやって恥ずかしそうに顔を赤める君が、私は大好きだった。そのまま卒業して、そのまま大人になって、いつのまにか、君は私の中から消えていった。ファンのたくさんいた君のことだから、きっと今頃結婚して、楽しい生活を送ってるんじゃないかな。仕事で訪れた久々の故郷。何の気なしに散歩してると、明るく染まった落ち葉で敷き詰められた校庭と、少し古くなった校舎が見えた。土曜日の学校は、だれもいなくて寂しくて、でも少し懐かしい香りがした。少しだけ隙間のあった校門をくぐって、校舎の外から屋上へと続く錆びた螺旋階段をゆっくりと登った。駆け上がるように、ゆっくりと登った。もちろん、そこに君の姿はなかった。少しでも期待してしまったのを、自嘲気味に鼻で笑って浅いため息をつくと、白い息が夕日を曇らせた。会いにきたよ。君にじゃなくて。会いにきたんだ、未練だらけのあの日々に。会いにきたんだよ、あの時と同じ夕空に。イヤフォンを両耳にあてて、少し笑った。
2006.11.14
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「エイプリルフール?それっていつだっけ。」だれもが知っているはずのその日を知らないのは、彼女にとっては毎日がエイプリルフールだから。「あたしね、昨日流れ星見たの。」いかにももっともらしいことを真顔で言うから、僕も今までに何度も騙された。でも今はみんな違う。彼女を避けて、彼女を徹底的に疑う。そうすることで誤った情報を受け入れないようにしているのだ。うそつき魔女。いつしか彼女はそう呼ばれるようになっていた。やっぱり僕はおかしいのかな。帰り道、歩道にはみ出してきている無数の落ち葉を蹴りながら、ふと考える。おかしい、これはなにかの間違いのはず。最近、あんなに嫌っていたはずの彼女のことが、どうも気になってしょうがない。目を、あわすことができない。どうしたんだ、俺。頭をかきむしってからこんなこと考えてもどうしようもないと気がつき、ふっ、と鼻で笑ってつばをはき捨てると、僕は歴史の年号暗記を再開させた。思ってもみなかった。「好き。」思いっきり僕の目を見て、思いっきりの笑顔で、普通のトーンで言われた。普通はさ、メールとかだろ。普通はさ、もう少し目をそらすだろ。そんな揺れる感情を無視して、僕はつい、「また嘘だろ。」って言ってしまった。クールに振舞いたい。そんな何にもならないプライドが僕の溢れそうな感情を無理やり止めて、クールどころか、冷たく答えてしまった。後ろを向いて歩き始めると、彼女が反対側に走っていく足音が聞こえた。あの目はなんだったんだ。いつもと何かが違うような気がした。もしあれが嘘じゃなかったなら。僕に開いたはじめての本当の心だったなら。僕は、嬉しいよ。同窓会の日、誰も座っていない君の名前の書かれた札のある席を見て、僕は小さな声で、俺って馬鹿だなあ、とクールに笑った。
2006.11.13
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「君が、好き。」彼女の前で一度も口にしたことのない恥ずかしいセリフを、ベッドに仰向けになって倒れて、写真を見つめて、無表情で呟く。それからなんとなく恥ずかしくなって、顔を枕にうずめた。写真の中の君は、笑っている。「本当、口ベタだよね。」いつも君に言っていることを、今日は自分に言ってみる。実際のところ、僕も気持ちの半分を君の前で言えていない。でもきっと分かってくれてるよね。僕だって、何も言わなくても君の気持ちは感じてるから。「君が、好き。」鏡の前に立って、もう一度言ってみる。今度はさっきほど無表情を保っていることができなかった。ベッドに飛び込んで、しばらくして、また天井を見上げた。君が、好き。
2006.11.11
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10日ほど前に11月になったばかりだというのに、彼女はもう『ジングルベル』を口ずさんでいる。まったく。これだから子どもは。同い年だけれど、まるで大人と子ども。背も低くて、声も高くて、その上無邪気にはしゃぐすがたを見ていると、なにか自分が急に成長したような気にさえなってしまう。「ねえ、ちゃんと掃除しなよ。」歌って踊る掃除時間のアイドルに、目をあわさずにそう言うと、彼女は少しだけしゅんとなって、また歌いだした。「わたしね、歌手になるのが夢なんだ。」夏休みの終わり、一緒に宿題をやっているときに、彼女はふと呟いた。国語の宿題に没頭していた僕はそう言う顔を見れなかったけれど、いつになく低い声色から、笑っていない表情を耳でとらえることができた。分かっている。君は歌えない。僕も、それは知っていた。彼女は歌うことが出来ない。髪の毛を耳の上にかけるようなふりをして、涙を拭く君を、僕はじっと、見つめていた。背も低くて、声も高くて、その上無邪気にはしゃぐ君の姿を見ていると、つらくなってしまうんだ。まったく、どっちが子どもだ。それまで単純な子どもだと思っていた彼女は、とんでもなく大人びていたんだ。無邪気に振舞って、子どもになりきって、その内側を自ら隠そうとしていたのかもしれない。高校生になったら僕らは離れ離れになるね。君はやっぱり、そのまま大学生になって、お父さんの会社を継ぐのかな。なんだか、少しさみしいよ。雪もまだ降っていないのに、彼女は窓の外を見ながら、『赤鼻のトナカイ』を口ずさんでいる。そうだな、今年のクリスマスは、僕が君のサンタになろう。
2006.11.10
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