2009.01.11
XML
beatles_book_nazo.jpg

 最初はタイトルにひかれ「面白そうだな?」とは思ったが「なんだ中山か」と思ってスルーしたのだが、ある日電車に乗る時読む本が無くて、「安いしこれでいいか」と買ってみたら、実は思ったよりはるかに読みやすくて、面白かった。

 要するに中山の何が駄目かってーと、自分が理解出来ないものはとにかく全否定する、というところ。しかもこの男はロックやジャズを聴く人間とは思えないガチガチ頭で、ミュージシャンが新しいことをするのは悪いことだと信じている。したがって、ビートルズ関連ではサイケデリック、アバンギャルド、小野洋子、そしてジョージ・ハリスンは常に悪役なのだ(そのワリにはビーチボーイズだとマイクを目の敵にするんだけどな、こいつは)。
 ところが、この本では新事実を検証していくスタイルのために、そういう個人的な嗜好が顔を出す暇が無い。

 一番納得がいったのが「これは推論集である」という意見であり、要するに過去のビートルズ本であまり触れられなかった、または最近解った事実を、アルバム別に章立てしていろいろ紹介しよう、という本であり、実は内容自体は大項目とコラムで重さの差は無い。
 いやむしろ、大項目では中山が無理に更なる(独自の)推論を推し進めようとして、結局中途半端で、まともな結論が出なかったり、出しても強引すぎたりする部分があって残念な結果に陥っているわけで、そのぶん投げ出し気味のコラムの方がはるかに面白かったりする。

 でまあ、俺が一番興味深く読んだのはそのコラムで、例の、俺の敵(中山よりもっと敵)である「ビートルズのドラムはバーナード・パーディが叩いている説」の真相を検証した部分だ。
 中山の本なんか買わなくていいので、結論を書いてしまうと、これがなんと「バーナード・パーディはビートルズの音源で叩いている」と言うコトになるのだ。これが面白かった。ちょっと、引用と俺の検証を混ぜちゃうけど、以下に解説しよう。( こっちも参照 のコトね)


 さてここで早くも嘘が。まず「63年の夏にキャピトルで21曲」がおかしい。63年の夏までにレコーディングされたビートルズの曲は実はアルバムPlease Please Meの14曲と、From Me To You / Thank You Girl、One after 909、She Loves You / I'll Get Youで以上19曲。まあ、21曲っていうのは意外に近い数字なんだけど(これにI Want To Hold Your Hand / This Boyを加えれば21曲だ)、問題は、これらの曲はすべて(I Want To~を除く)キャピトル以外のレーベルからリリースされている、というコト。つまりキャピトルが動く前にとっくに世に出てる曲だ、ってコトなのね。
 従って「リンゴが叩いていない」はあり得ない(1stシングルの両面を除く)し、それを消してキャピトルの為にレコーディングし直したと言うことも無い。ヴィー・ジェイやトリーからのシングルのためにキャピトルで録音することもあり得ないし、勿論これらの曲も後にキャピトルから出てるんだけど、その際にパーディが叩いたテイクに差し替えられた、ということがないのはEarly BeatlesとPlease Please Meを聴き比べれば解るだろう。
 じゃあ、With The Beatles収録の14曲+シングル数曲か。これも「63年の夏」と言った時点でありえない。なぜなら、63年の夏はまさにビートルズがこれらの曲をロンドンで録音している最中であり、レコーディングの終了は10月の末になる。これらのドラムを「夏に」差し替えることは不可能なのだ。(以上は俺が調べた部分。参考文献は例のバイブル)

 そういうワケで、パーロフォン/キャピトル音源をパーディが叩くことは不可能、と結論づいた。じゃあ、何故「パーディは叩いた」と言えるのか。以下は「謎」からの抜粋を再構成する。

 つまり、パーディが叩いたのはドイツ録音のポリドール音源なのだ。トニー・シェリダンと録音したヤツ。これがアメリカではアトコから出ることになり、その際に「弱い」と判断されたドラム(と、ギター)が差し替えられることになったらしい。実際、60年代半ば以降リリースのポリドール原盤音源のいくつかはこの「差し替え版」だ。よく書籍等でも「スタジオミュージシャンによって再録音されたヴァージョン」として紹介される。で、アトコ(アトランティック系列)の「スタジオミュージシャン」といえばそりゃあもう、バーナード・パーディその人こそ第一人者なのである。(ちなみにギターはコーネル・デュプリーだったようだ)

 そういうワケで、「バーナード・パーディがビートルズの音源でドラムを叩いており、その曲にはリンゴは参加していない(この時期のドラマーはピート・ベストだからね)」ってのはなんと「本当」なのであった。奥が深い。でもやっぱり「キャピトルでShe Loves Youを含む21曲に、エプスタインに呼ばれてダビング作業をした」ってのは、嘘。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.01.11 23:00:02
コメントを書く
[読んだり見たりする話] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space


the MDK'sのサイト
【お知らせ】
infoseekの無料ウェブサイトサービス終了に伴い一旦MySpaceに「仮移転」することになりました。正式な移転先が決まったらMySpaceまたはこのブログで発表します。
ブックマーク、またはリンクしてくださってる方は一時的にMySpaceの方に
変更お願いします。

minoradio
minoradio4.jpg
写真ブログ
having my picture taken
Twitter

Calendar

Profile

D♂ka

D♂ka

Comments

俯せ蛙@ Re:Love 45(10/23) ICEのBABYMAYBEにも似てます…
もこな@ Re:ザ・ゴールデン・カップスのすべて(06/29) 私は逆の入手経路で本日画報を手に入れ、…
HOPE@ Re[2]:Party Chambers(05/26) ご返信ありがとうございます! そうなので…

Archives

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07
2025.06
2025.05
2025.04
2025.03
2025.02

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: