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2015.06.03
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HONライン倶楽部「寺山修司の巻」 若者の心を騒がせる
2015年06月03日

 寺山修司が世を去って32年。彼の残した言葉は風化するどころか、読者の心に根を下ろしています。

 それらが一層かけがえのないものになっていることが、老若男女を問わず、多数いただいた投書から伝わってきます。

 寺山のキャッチフレーズになった『書を捨てよ、町へ出よう』(角川文庫)。その中の「月光仮面」を東京都昭島市の佐藤英行さん(48)は挙げます。「正義の味方なのに、なぜ素顔をさらさないか。誰もが知っているキャラクターを使い、抽象的な問題、正義の本質に迫っていく。寺山の真骨頂だと思います」

 巨人ファンだった小学校高学年のころ、報知新聞の競馬欄で寺山に出会った埼玉県幸手市の関根達也さん(50)が推すのは『旅路の果て』(新書館、品切れ)。「描かれるのは敗者(負け馬)、人生の裏通りで傷をなめ合う温ぬくもり、労いたわり」。「英雄より敗者に思いが強かった寺山の眼力を思い出してしまう」関根さんの馬券は「ほとんどが負け馬へのオマージュ」。寺山も苦笑するしかないでしょう。

 京都府舞鶴市の小川理恵さん(36)の推薦は『競馬放浪記』(ハルキ文庫、品切れ)所収の「勿忘草の死」。寺山最愛の馬、ミオソチス(ワスレナグサの意)を書いた文章です。「競走馬、騎手のエッセーには、美しく厳しく輝く彼らの眼めがあり、同時にそれを見つめた修司のまなざしも感じる。その眼に宿る生命に、どうしようもなく惹ひかれます」

 寺山没後に生まれた世代からもメールが届きました。まず奈良県桜井市の大学生、佐藤奈都子さん(21)。「物事が思うようにいかず、苛いらついていた17歳の私。電車の中で1冊の本を開くと、かつて味わったことのない衝撃が走った」。それが「ちくま日本文学」の寺山の巻(筑摩書房)。「母に憤りを覚えながら、母を見捨てることができない。そのはざまで生き、模索し続ける姿に、思春期の私は強く共感できました」

 横浜市の大学生、鈴木亮太さん(21)はアンソロジーにあった詩「ロング・グッドバイ」(講談社文芸文庫ほか)に打ちのめされました。「何十年も前に書かれた詩をいま読んで、なぜだか焦る。この瞬間に発車しようとする列車を目の前にした気持ち。乗り遅れまいとかぶりついて読むほかない」。若者の心を騒がせる。これは、寺山の傑出した特質ではないでしょうか。



 〈百年たったら帰っておいで/百年たてばその意味わかる〉と書いた寺山。挑発し扇動するその言葉は、今後も読み継がれていくに違いありません。(山内則史)


穂村弘 「表現に永遠の命」

 寺山修司について不思議な現象が見られる。亡くなってから三十年以上経たっているのに、毎年のように新しい本が出版されるのだ。

 もちろん再編集されたものもあるが、初めて世に出るものも多い。ここ半年ほどの間にも『秋たちぬ』『寺山修司のラブレター』『青い種子は太陽のなかにある』などの未発表作品が刊行された。生きている私よりハイペースじゃないか、と驚いてしまう。

 この現象の背後には、生前に手掛けたジャンルの広さ、未発表作品の多さ、関係者の思いの強さに加えて、新しいファンが増えていることもあるのだろう。

 寺山修司はコラージュ的な表現の名手だった。俳句と俳句を組み合わせて一つの短歌を作る。その短歌のイメージから芝居の脚本を作る。さらに、それが後世の人間に上演される。

 その結果、一つの想おもいやアイデアが形を変えて、いつまでも生き続けることになる。この手法が批判を浴びたこともあるが、寺山は表現に永遠の命を与えられるクリエイターだった。

 「きみのところで、寝る前に、レモンに砂糖をかけたのを食べたことをふっと思いだした。あれはおいしかった、と思う。今夜はなぜだか、きみがそんなに遠くにいるという気がしない。」

 九條映子に宛てた手紙の一節だが、これは詩といってもいいんじゃないか。

 そんな寺山修司は、死を前にして次のように書いている。「私は肝硬変で死ぬだろう。(略)だが、だからと言って墓は建てて欲しくない。私の墓は、私のことばであれば、充分」。

 でも、実際にはどうだろう。「墓」どころか、寺山は彼の「ことば」と共に永遠の命を生き始めている。(歌人)


 1935~83年。青森県生まれ。早稲田大在学中に「チエホフ祭」で短歌研究新人賞。俳句、ラジオドラマ、詩、エッセー、評論、映画、競馬コラム、歌謡曲の作詞など、多彩な分野で表現活動を展開。演劇実験室「天井桟敷」を主宰、内外で自作を演出してアングラ演劇の一時代を築いた。


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Last updated  2015.06.10 02:12:56
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