トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2017/08/08
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カテゴリ: ひよっこ
■気がつくと桑田佳祐の「若い広場」を口ずさんでいることが多い。ただ私の場合、眠っている時までそれを歌っているかと言われれば、そんなことはない。まして眠りながら立ち上がって腰をクネクネさせるなどもってのほかだ。

■過去の記憶を全て失ってしまったという経験がないので、あくまで想像でものを言うなら、それまでの自分がどんな人間だったのかを尋ねる相手は慎重に選ばなければならない。とかく思い出は美化されるものだし、思いやりのある人間だったら、ちょっとくらいの過ちなんかなかったことにして当の本人にはおそらく語らずに済ます。だからそこで語られるあなた自身はかなり誠実で真面目な人格者だったということになる。

■娘にとって自分の父親はその時の記憶があるなしにかかわらず、おそらく生まれて初めて見た男性である。そして彼女の成長と共にその大きな手はいつもそばにあり、時々ほっぺをもぐもぐされることが嬉しかったり、時には煩わしくもあったものだ。そして彼は家族のために一生懸命働き、娘や息子たちには目一杯の愛情を注ぐ。

■しかし、娘の知る彼は父親以降の彼であるに過ぎず、彼もまた生まれた時から父親だったわけではない。たとえば自分の祖父母にも青春時代があったのだと思い至るようになったのは自分がそんな時代に足を踏み入れ出した頃の話で、両親の結婚に至る物語や、それ以前のあれこれについて想像することができるようになるにはそれなりの時間が必要だ。

■自分の生まれた故郷に帰り、そこで自分を知っていたであろう何人もの人たちと顔を合わせることには随分と度胸が必要だ。ただ娘から見せてもらった白黒の家族写真や、おそらく彼の弟が撮ってくれたのであろう親子3人のベストショットを眺めていると、彼にも勇気が湧いてきたはずだ。あんな顔して働いていた自分たちがいたということは、何ら後ろめたい気持ちなど故郷に持つ必要なんかありはしないのだと。

■それにしてもこの物語の落ち着く先はどこにあるのだろう。父の帰還?家族の再生?娘の結婚?もうすでにいつ終わってもおかしくない最終回感が満載なのだが、いつまでも見続けていたいと思わせるのは登場人物たちの全く不自然さを感じさせないハグや至極真っ当なお辞儀の姿勢のせいだ。毎朝そんな善意のシャワーみたいなもので身体を洗い清められ、ひねくれてばかりもいられないなんて思う。





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Last updated  2017/08/23 08:43:02 PM
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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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