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2003年08月14日
悪女になりたい
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面白くてうっかり最後まで読んでしまったのは、『悪女入門―ファム・ファタル恋愛論』(鹿島茂著、講談社現代新書)です。
「ファム・ファタル」とは、フランス語で「宿命の女」という意味。ファタルには、「致命的・命取りの」という意味もあり、ラルース大辞典には「ファム・ファタル」について次のような定義がされているとのこと。
「恋心を感じた男を破滅させるために、運命が送りとどけてきたかのような魅力をもつ女」
ふうむ。
ファム・フアタルは、音も怪しい。
「フランス語のf は下唇を上の歯で軽くかむ音ですので、femme fatale と、二度f の音が繰り返されると、まるで、女性が性的エクスタシーに達する直前、その快楽をこらえるかのように唇をかんでいるイメージが湧いてきます。
そして最後にfataleの二度のaで大きく唇が全開になると、女性がエクスタシーに達して、歓喜の吐息をはきだした姿を連想せずにはいられません」
と、著者は書いています。おおお。ぞくぞく。
「お前は、オレにとってのファム・ファタルだ」と、言わしめてみたいものだわん。
この本は、フランス文学に描かれたファム・ファタルについて、なぜ彼女がファム・ファタルたり得たのかをあざやかに分析して飽きさせません。一章一悪女構成で、稀代の悪女が続々登場します。
アベ・プレヴォ作『マノン・レスコー』のマノン、
プロスペール・メリメ作『カルメン』のカルメン、
A・ミュッセ作『フレデリックとベルヌレット』のベルヌレット、
バルザック作『従妹ベット』のヴァレリー、
デュマ・フィス作『椿姫』のマルグリット、
G・フロベール作『サランボー』のサランボー、
J・K・ユイスマンス作『彼方』のモーベール夫人(=シャントルーヴ夫人)
エミール・ゾラ作『ナナ』のナナ、
マルセル・プルースト作『スワンの恋』のオデット、
アンドレ・ブルトン作『ナジャ』のナジャ、
ジョルジュ・バタイユ作『マダム・エドワルダ』のマダム・エドワルダ
カタカナばかりになってしまいましたね。
この本は、女子大の教授である鹿島さんが、教え子のために悪女となるためのハウツウを教えてあげようともくろんで書いたのだそうです。
教え子の中でもとくにかわいそうな「ゴレンジャー・ガール」向けに。
「たいていの女の子たちはおままごとやお人形さんごっこをして遊んでいる中で、少数ですが、男の子にまじってゴレンジャーごっこをして遊びたがる女の子がいたのです。私は、こうした紅一点の女の子をゴレンジャー・ガールと名付けました」
ううむ。私も子どものころから「紅一点」っていうのが大好きだったんだよなあ。男の子とばかり遊んでいた。
子どものころ、ゴレンジャー・ガールは男の子たちからモテるのだけれども、思春期を過ぎると絶対にモテなくなると鹿島さんは言います。
「男の子たちは、思春期を過ぎて性欲モードに入ったとたん、それまで一緒にあそんでいたゴレンジャー・ガールには見向きもせず、百パーセント女である女の子(私はこれをウッフンと名付けました)のほうに間違いなく惹かれるはずです。
なぜなら、ウッフンたちは、先天的に男を蠱惑(こわく)する技術を身に付けていますので、男の子たちは手もなくやられてしまうからです。
オスの本能を持った男は、フェロモン誘導にたけたメスのほうに吸い寄せられていくのです」
なるほどねー。私の声は「ウッフン」系なんですが、態度がよくないのだよなあと、反省。
学生思いの鹿島さんは、モテないゴレンジャー・ガールのために、スーパー・ウッフンの技術をもつファム・ファタルの手練手管を詳しく解説し、無理なく学習できるようにしたのがこの本というわけです。
ありがたや、ありがたや。
で、私にとって参考になったかって?
なり過ぎて困っちゃった。ウッフン。助けてくれー。
それはさておき、最近、続けて書いた「出産=女性の絶頂体験」説につながる文章を、この本の中からも発見しちゃいました。感動したので引用しておきます。
「女性がセックスの快楽の頂点において、眼をつぶり、男のペニスの代理物として受け入れているものがなんなのか」
「女性はその瞬間、自分の上に覆いかぶさっている醜い地上の生き物ではなく、光り輝くある種の超越的な存在(人によってはこれを神と呼ぶかもしれません)を受け入れているのです。
この意味で、女性は、快楽の頂点において、男のペニスを挿入するふりを装って、じつは、聖霊を迎え入れる神聖受胎の儀式を執り行っているのかもしれません」
なるほど、だから女性は出産の瞬間に、自然界と、宇宙全体とひとつになり、生命そのものをこの世に引き出す至福の体験をするのですね。
では、出産ではない「通常の」絶頂体験は、女性にとって何を意味するのでしょうか。鹿島先生はこんなふうに書いています。
「しばしば、女性はオルガスムに達する直前、「行く、行く」とか、「死ぬ、死ぬ」と口走るといいますが、これは決しておおげさな表現ではなく、オルガスムとは、まさに生きていながらにして体験することのできる「死」なのです」
ううむ。ふ、深い。セックスは生の出口であると同時に、死への入り口なのでしょうか。
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最終更新日 2003年08月14日 18時20分36秒
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