ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2007年07月31日
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カテゴリ: 本のリサーチ
小田実さんのことを偲びながら、私が彼に心酔していた大学生のころを振り返ってあれこれ考えている。

当時は、思春期特有と片付けられてしまうかもしれないが、身近な人に心を閉ざしていた。大学の講義には休まず出席していたものの、サークル活動には参加せず、友だちをつくらず、家庭教師と塾教師のバイトのほかは、自室にひきこもって読書したり音楽を聞いたりしていた。バイト代で月に7万円ぐらい稼いでいて、その大半をレコードと書籍代、中古のエレクトーン(シンセつき3段で70万円ぐらいだった)の月賦にしていた。

ひきこもりながらも、なんとか世界と切り結ぼうとして、そのチャンネルを探していたのかもしれない。

反戦、平和、反原発……いろいろなテーマを追いかけて、最後にたどりついたのが反管理社会というテーマであり、それで卒論を書いた。まことに稚拙ながらも、この執筆作業を通じて、私は私なりに「生きる意味」を見出して、大学を卒業し、胸を張って社会に一歩踏み出して行けたのだと思う。

私は1日も早く家から飛び出し、自立したかった。ひとりで生きていく力を身につけたいと痛切に思った。最初からフリーを志向していたわけじゃなく、会社という組織の毒をまず体験し、いずれ「獅子身中の虫」になって、世の中の毒を制する毒になってやろうと企んでいたのだったが、それほど強い毒にはなれなかったみたいだ。

そんなことを思い出しながら、文化人類学者である上田紀行氏の『生きる意味』(岩波新書)を読んでいる。

文化人類学も、大学生だった私の憧れのジャンルの1つで、レヴィ=ストロースをちょっとかじってみたりした。

この著書で上田氏は日本人の未来を憂い、構造改革を痛烈に批判する。その切れ味は見事だが、私としては少し異論もあり、懐疑もある。だから読んでいて面白いのかも。

ちょっと引用してみると、



自分が可能なかぎり高い価値を維持できるように常に鍛錬を怠らず、最高に効率的な場所にいるのかどうかを日々チェックして、もしそうなっていなければ転職する。

常に「他人の目」からどのように見えているのか、どのような評価がされているのかを意識し、評価が下がりそうであればその評価を上げるべく努力し、市場における成功を勝ち取り最大の報酬を得るように行動する。

そしてそれを生まれてから死ぬまで何十年にもわたって継続することのできる人間。

それが、私たちがこのシステムの中で勝つための条件である。




これは、心理学者やカウンセラーが行う「認知を変える」というセラピーに近い。

ただ、上田氏が何度も強調するほど、現代人が「他人の目」に対してセンシティブであり、抑圧されているかどうかは、私にとって疑わしい。私が傍若無人に生きてきたからかもしれないが。そのへんの検証を、若い人のナマの声や、「生きづらさ」を代弁している雨宮処凛氏の著書『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)などを通じて考えてみたい。

私としては、構造改革の毒を制するためには、もっと人と人とのかかわり、協力、協働、共生、支えあいといったものや、生きる場づくり、根拠地づくりが大切なんじゃないかなあという気がしている。

上田氏が本書の中で紹介している高橋伸彰氏の主張が興味深い。著書『優しい経済学』の中で高橋氏は、構造改革の中で最も気になるのは「協力」の発想が欠如している点だと述べているそうだ。

「人々が求めているのは必ずしも市場の「競争」によって生まれる安いサービスやモノだけではありません。日々の生活には「協力」に基づく人間的な触れ合いや、損得勘定では割り切れない安心や安全も必要なのです」

なるほど。もっと詳しく知りたくなって、この本をamazonに注文した。

本を読み込んでいくと、もっともっと知りたいという思いが強くなり、次の本へと知らぬ間に導かれていく。本が本を呼ぶ。それが楽しい。

このあたりの読書の楽しみというか、麻薬的部分をamazonの戦略家たちは心得ていて、「○○をご購入されたお客様へのお薦め本」というメールを送ってくるので、たまらない。

今日は、先日買ったキャリア論の洋書に関連して、また新たな洋書の購入を勧めてきた。うーん、欲しくなって買い物カゴに入れてしまったぞ。まだ決済はしてないけどさ。

本に呼ばれてるなあ。





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最終更新日  2007年07月31日 18時01分39秒
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