昨日は、10回連続講座の再就職セミナー第5日目でした。テーマは、「書くスキルを身につけよう」。
ライター歴25年の私にとっては得意中の得意分野ですが、書くスキルというのは、講義を聞くだけでは身につきませんので、まずは受講生の皆さんに宿題を課して、「私の強み」というテーマで作文を書いてきていただき、グループの中でお互いに朗読し、良い点を褒め合い、また、自分で書いてみて疑問に思ったことや、文章のスキルについての質問を出し合ってもらいました。
一般に男性よりも女性のほうが文章能力に優れているといわれますが、まさにそのとおりだと実感しました。みなさん中々の勉強家で、とくに多かった質問は「起承転結をどうやってつければいいか」ということでした。
「起承転結」という言葉をよくご存知ですね。
この言葉のもとの意味は、おわかりですか?
漢詩の五言絶句や七言絶句の技法ですよね。たとえば「春眠暁を覚えず」という五言絶句がよく例として出されます。
孟浩然 五言絶句 春暁
春眠不覚暁、処処聞啼鳥、夜来風雨聲、花落知多少
(読み下し文)
春眠、暁を覚えず、処処に啼鳥を聞く、夜来風雨の声、花落つること知りぬ多少ぞ
(現代語、拙訳)
春になって温かくなり、気持ちがよいものだから、夜が明けても気づかない
小鳥の声が聞こえてようやく目が覚める
そういえば昨夜は風が強く、はげしい雨音がしていた
気になって庭に出てみれば、せっかく咲かせた春の花も散ってしまった
このように、起承転結の技法とは、1番めの「起句」で話を始めて、2番目の「承句」でその話を受けて広げ、3番目の「転句」で目先を変えて話題を転じ、読者に「おや?」っと思わせ、 最後の「結句」ですべてを含み、話をまとめ、帰結させるという仕組みですね。
漢詩ではピンと来ない人のために、もう少し分かりやすい例をご紹介すると……
江戸時代の漢学者・頼山陽は、漢詩を作る初学者のために一つの「俗謡」を例にして説明しています。
浪花本町 糸屋の娘 (起句)→歌い起こし。(1)
姉は十八 妹は十五 (承句)→(1)の説明。(2)
諸国大名は 弓矢で殺す(転句)→発想の転換。(3)
娘二人は眼で殺す (結句)→結論。(4)
「作詩関門」より
非常に分かりやすいでしょう。頼山陽って、ユーモアのセンスのある人ですね。
ユーモアのセンスといえば、読売新聞の朝刊コラム「編集手帳」の書き出しにあったこんな言葉が印象に残っています。
ユーモアとは「にもかかわらず、笑うこと」だという。苦境に立つ人が「にもかかわらず」浮かべる微笑であると
読売新聞の「編集手帳」や朝日新聞の「天声人語」は名文のお手本と言われます。異論もあるかとは思いますが、文章力をつけたいと考えている人にふさわしい教材であると思います。
私も新人のころに上司から勧められた覚えがあります。毎日、「天声人語」を書き写すようにと。よい文章は書いて覚え、からだで覚えなさいということですね。
書き写しながら、この短いコラムのどの部分が起承転結の「起」で、「承」で、「転」で、「結」であるかを考えてみると、文章の構成力が身についてくるでしょう。
ただ、「天声人語」や「編集手帳」の書き手はときどき、自分の教養の深さをひけらかすような文章になることがあるので、ちょっと鼻につくかも。
リーダビリティつまり読み手に親切で、読み手を楽しませてくれる名文の代表格といえば、やはり古典落語でしょう。文庫本ならお手軽ですので、ぜひ読んでみてください。
あとはエッセイの名手と言われる人の文章を味読するとか、どこかの出版社でテーマ別にエッセイのアンソロジーを出しているので、あれも面白いかもね。
実は私、もう20年近く、ある週刊誌で連載エッセイを書いていますが、最初のうちは苦労しました。そのとき、文章のリズム、構成、着眼点、発想の転換といったことを学ぶために、このアンソロジーのお世話になりました。
手がけているのは、技術論的なエッセイなので、技術に関する知識のほうは、講談社のブルーバックスのシリーズを読んで勉強したものです。ふふ、懐かしい。
本棚を探索中です……。
あった、あった。作品社の「日本の名随筆」シリーズです!
図書館にはきっと全巻そろっているでしょう。私はなぜか、原田宗典編の『買物』を持っています。目次に並んだ錚々たる顔ぶれは……
森茉莉、吉屋信子、如月小春、柳田國男、富岡多恵子、岩城宏之、朝吹登水子、中島らも、柴門ふみ、植草甚一、東海林さだお、椎名誠……すごいすごい!総勢38人の珠玉の随筆が味わえます。これはゴージャスだわ。
こんな名アンソロジーが、96年末の時点ですでに170冊出ているとは!
いまはどうなっているのでしょう……
https://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/
99年に全200冊で完結したそうです。「花」「鳥」「恋」などの一文字テーマが100冊と、「買物」「手紙」「珈琲」「酒場」「悪口」などの二文字シリーズが100冊。
リストを眺めていると、そそられるテーマがたくさんあります。アマゾンで買えるかなあ。
おお、新品もユーズドも案外、そろっていますね。お試しあれ。
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