温故知新

2005.05.14
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元気のない日がある。

そんな時はいつも、うだうだぐだぐだと、詮無いことを考えている。

娘が保育園に入り、出来上がった自分の時間を有効に利用しもせず、
我ながら成長しないな、と、呆れるばかりなのだが、、
今日は、 障碍児である娘が生きる意義(育てる意味)について 知らず知らず考えていた。

こういう日々が、長い目でみたら、自分の気持ちを整理する大切な時間だった、と、いうことになるのかもしれないが、
短期間でみたら、自分の足元に水をどんどんぶっかけて、地盤を緩くしてしまうような作業に似ている。

そうやって、緩んだ地盤に足をズブズブと入れ、腰辺りまでつかった頃、


『一体、そんなことを考えている自分自身の絶対的価値、相対的価値はあるんだろうか』

なんとも危険な思想である。

絶対的価値。
これを否定してしまっては過去の自分も全て崩れ落ちていってしまう。
子供一人、まともに育てられない、家事一つまともに出来ない、という事実は、
この際、不向きな仕事、ってことで、保身のために棚に上げさせてもらいたい。

相対的価値。
ここである。
一体、私に相対的価値などあるのだろうか。

私が、ただ私でいるだけで価値がある、と思ってくれる人が一体どれだけいるのだろう。
私が、ただ私であるだけで価値を見出してくれる人など、いるのだろうか。



娘が保育園に入園した4月だけの一ヶ月間。
私は、3人の、ご婦人の涙を見た。

一人目は、住んでいるマンションに日勤で通っている管理人のおばちゃん。

4月から保育園に通う旨を立ち話で報告すると、彼女はとても喜んでくれた。
辛い思いをしているのに、いつも笑顔で…と、そこまで話して、涙でむせた。

彼女は全て知っている。
孫がいない彼女は、ここのマンションの子供を全て孫のように可愛がってくれていた。
ここまで元気になって…と、また涙していた。

二人目は、療育所の途中にある、息子さんと二人でやっているパン屋さんのおばちゃんだった。

今よりももっと深刻に物を食べない頃。
娘は何故か、ここのマフィンだけはパクパクと食べた。
道を挟んでハス向いに、
地元のテレビで紹介された、スーパーに併設された大きなベーカリーがあるのだが、
そこのパンは一切食べず、
この店のマフィンだけを食べた。

それが縁で顔見知りになったのだが、
これから、あんまり通えないの、と、保育園の事情を説明したら、意外なほど喜んでくれた。
少しづつ元気になって、大きくなるのが楽しみだったの、と、涙を流した。
そして、
パンなんか買わなくていいから、たまには顔を出してね、保育園でたくましくなった姿を見せてね、
と、二度も三度も繰り返した。

三人目は、娘の保育園で働く掃除のおばちゃん。
おやつの後くらいに来て、掃除機をかけたり拭き掃除をしたりする方である。

4月も中旬を過ぎた頃。
私が娘を迎えに行くと、あちらから声をかけて下さった。
聞けば、娘は、この方に抱っこをせがんで抱っこしてもらっているらしい。

お忙しいのに、と、お詫びを言うと、とんでもない、と、かぶりをふった。
この子が可愛くて可愛くて…
抱っこすると、ぎゅーっと抱いてくるのよ…
こんなに可愛いんだから、お母さん、きっと大丈夫よ…
もう、本当に可愛くって可愛くって…
私を見上げて、ニコーって…
彼女は、何度も何度も、目元を持っていたタオルで拭いながら話してくれた。

彼女たちに対して、
娘は、ただ娘であっただけだ。
何かを特別にした、というわけではないし、そんなことも出来ないだろう。

それなのに、彼女たちは涙を流した。
それが、ただ単に同情だとしても、
流す涙にはストレスを解消させる、という効力もあるようだし、
少なくても、何かしら彼女たちに大なり小なりの影響を与えたわけだ。
それも、おそらくは、良い影響を。

娘の絶対的価値は分からない。

でも、少なくても相対的価値だけでみたら、私より、はるかに上ではないのか。

こういった存在が世の中には必要で、
故意にこの世にもたらされている…というのは、考え過ぎだろうが、
何かしらのパワーをもらっている人もいるのではないか…。

…これも考え過ぎだろうか。





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Last updated  2005.05.20 01:14:04
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