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2007年08月18日
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カテゴリ: 小説
66
 明日はいよいよレースだった。僕は準備をするためにレース場に来ていた。隣には彼女がいた。
 「いよいよ明日だね。」
 レース用に改造されたフェラーリを眺めながらそう呟いた。赤いボディに白いラインが鮮やかだった。そして、そのボディに雲の流れていくのが映っていた。レースと言う危険な行為とはまるで別世界の光景に思えた。
 「そうだね。大河内君ががんばって準備してくれたんだから優勝しちゃおうかな。」
 無邪気な顔ですごい事を飄々と話した。その言葉がいかにも彼女らしかった。いつもはおっとりしているのに、いざとなるとかなり負けん気の強いところ、でも、本当は少し無理をしているところ、僕には全部わかっていた。その気持ちを少しでも楽にしてあげようとして僕は彼女の手を握った。
 「僕は友里が無事にレースを終えてくれればそれでいいよ。」
 彼女は驚いていた。
 「今、友里って言ったよね。」

 「そうだよ。もっと、君を近くに感じたいと思ったんだ。僕たちって付き合ってからそんなに経っていないけど、何か色々な事があっただろ。だからかな、もう何年も付き合っている気分なんだ。それなのに“友里さん”なんて言う、よそよそしいのは嫌だって思ったんだ。」
 彼女は本当にうれしそうな顔をした。
 「じゃ、私もこれから彰って呼ぶね。」
 レースと言う特殊な環境が僕たちを近づけていった気がした。

 彼女の言葉を聞いた瞬間、僕の意識は別の意識に支配された。僕が彼女に話してあげたかった事、してあげたかった事、それらを別の意識がし始めだした。

 「友里。ちょっといいかな。」
 少しふざけて僕に話しかけてきた彼女に、真剣な顔つきをさせられている僕が話しかけた。

 「なんだ。何を話す気だ。」

 そう思っても勝手に口から言葉が次々に出てきた。
 「もう、レースに出るのはこれで最後にしてくれないか?」
 急にそんな事を言われて彼女は戸惑っていた。

 彼女にとって、レースは生活の一部になっている所があった。それを急に最後にしてくれと言われても彼女はどう答えて良いかわからなかった。
 「実は前々から考えていた事があるんだ?」
 僕の理解もすでに超えていた。僕の中にいる別の意識はいったい何をしでかすのか、不安でしょうがなかった。でも、僕にはどうする事も出来なかった。そんな自分に息苦しさを覚えた。
 「レースが終わったら、僕と結婚してくれないか?」
 あまりに急な僕のその言葉に彼女は止まっていた。その言葉を聞いた僕も止まっていた。確かに彼女と結婚できればいいと漠然と考えてはいた。でも、僕は自分でその言葉を彼女に伝えたかった。こんな誰かわからない意識に勝手に話してほしくはなかった。

 「本当に?いいの?」
 頷いた後にもう一度確認の意味で僕に聞いてきた。
 「もちろん。」
 僕の顔が勝手に笑顔になった。僕の手の出せない所で、大事な話は進行してしまった。

67
 相変わらず、僕の体は僕じゃなかった。スタンドから凄まじい轟音と熱気の中で、彼女の車を見守る事しか出来なかった。

 「どうすれば、僕の体の自由は僕のものになる?」

 そう考えながら必死に足掻こうとしてもどうにもならなかった。

 何台もの車がコーナーに向かって走り出した。彼女の車ももちろんその中にいた。彼女の車がコーナーに差し掛かった時、彼女の車の前を、僕がいるスタンドの前を砂煙があがった。
 何が起きているのかは音でしか知る事が出来ないくらいに大きな砂煙。
僕は彼女の身を案じた。すぐにでも彼女の元へ走り出したいのに体が自由にならない。体は自由にならないのに、心拍数が多くなっていくのはわかった。
 心拍数はさらに大きくなっていった。もう心臓が弾けるんじゃないかと思った瞬間、彼女の車がスターティンググリッドに戻って来るのが見えた。

 「彼女は無事だ。」

 そう思いながら心の中で涙ぐんでいた。

 その後も何回も彼女の車はアクシデントに巻き込まれそうになりながらも、何とか切り抜けながら無事にレースを続けていた。
 その度に僕の心臓は早くなり、一生分の鼓動を打ち終わったのではないかと感じたほどだった。

 彼女の車にチェッカーフラッグが振られた。それと同時に僕の鼓動はゆっくり打ち始めた。
 そして、それを確認すると僕の体はスッと立ち上がった。きっと、彼女の所に行くのだろうと言う事は容易に想像できた。
でも、僕の体は僕じゃなかった。
せめて、お祝いの言葉だけは自分の言葉で彼女に伝えたいと思っていたけれど、その願いは叶わないものだと思っていた。
 目の前には、レースが終わり疲れ切っている彼女がいた。彼女を見つめている僕に気が付き、彼女は走ってきた。
 「疲れているのにそんなに走ったら駄目だよ。」
 そう優しい顔をさせられて彼女の肩を軽く抱き寄せた。彼女は無邪気な笑顔をしながら僕じゃない僕に話しかけてきた。
 「だって、彰がうれしい事言ってくれたから。今、レースは終わったけど、今からはもう一つのスタートをする訳だし・・・。」
 息を少し切らせて彼女は話した。そんな彼女を愛おしいと思った瞬間に、僕の手が、目が、口が少しずつ自分のものになっていくのがわかった。彼女へおめでとうの一言だけは、自分の言葉で話したい、その願いが通じた。

 「そうだね。でも、その前に一言だけいいかな。優勝おめでとう。」





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Last updated  2007年08月18日 13時02分42秒
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