Accel

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February 4, 2014
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 ラマダノン城。
 白い石で城壁が築かれ、城内には赤く美しい絨毯が敷き詰められ、見事な装飾が壁やら柱やらに施され・・・
 まるでもって、絵に描いたような城であった。

 城内は大変に広く、たぶんここは大広間なのであろうか・・・
 貴人や、庶民的な格好の人も大勢に溢れている。
 中には軽装の兵士のような者もいるが、物々しい雰囲気はなく、人々はまるで大きな市場にでもやってきたかのような活気である。
 知り合いの者同士が出遭うと、声をかけあったり、小さな子供は駆け回ったりと・・・
 はて?これが城の中?
 と、目を疑うような光景であった。


 いや、紛れていたのではない。
 一応、承諾は得ていた・・・
 と、思う・・。
 であるのに、少年達は、微妙に不安げである。

 事がうまく運びすぎ?
 というか、商人の馬車に乗せて貰い、夜が明けて朝になり、馬車から降ろされたら既に「ここ」だった・・・
 ついでに、夕方同じ場所に馬車で乗り付けるから、帰りも送ってくれると、商人は申し出たのだった。

 長髪のレガンは腕組みをして唸るしかない。
 こういう事態は彼にとって初めてであった。
 普通の人たちが沢山いる、しかも城の中・・・。


 茶色の瞳の少年は、少年の集団を軽く端に集めると、決心した表情で話し始めた。
「商人がここが城だというなら、きっとそうに違いない。
 俺は、実は、エルダーヤの城の事は、少しは知っている。
 あっちの大陸の王様も、一応知っている。
 けれど、こっちの事は、また事情が違うようだ。

 都合よく、そこらへんの平民もいるみたいだ。
 民衆に紛れて、王様の情報とか手に入れよう」

 ルッカが、軽く頷いた。
 そして、少年達に目を配って話しはじめた。
「よし。
 では、レガンは纏め役になれ。
 俺とまずは二手に別れよう。
 俺はあまり交渉には自信がない。
 セルヴィに、俺についてもらう。
 リュー、オガラ。
 お前らはレガンに。
 チルセは俺についてこい。
 とりあえず、昼時まで情報収集だ。
 それでどうだ」
 少年達が頷くと同時に、2組は分散した。

 ルッカは、チグハグな格好に、日に焼けた顔が勇ましい、そろそろ青年という風貌である。
 チルセは、ややあどけない雰囲気を醸し出しているが、目つきはやはり鋭い。
そのチルセは、銅の胸当てだけが防具らしいものである。
 セルヴィシュテは、ルッカの斜め後ろにつき、にこやかにあたりを見回していた。
「ルッカさん、あの剣士っぽそうな人どうです?
 俺らは剣士として雇い先を求めている、とかって話しかけるといいかも」
 と、素早くルッカは訂正した。
「いや、あれは駄目だ。
 あいつは、格好だけの剣士さ。
 もうすこし剣が使えなきゃ話にならん」

 言われたとたんにセルヴィシュテはムーっとふくれて言った。
「もう、駄目なのはルッカさんですよ!
 そうやって、えり好みするから・・・
 じゃあ逆に考えてください。
 その、駄目駄目剣士が、いっぱしの剣士と”思われたら”、得意になって、色々話してくれるかもっ」
「ん?ん・・・・んん~・・・・」


 2組に別れた少年達が、それぞれに4、5人と話を交わしていた時。


 ゴーーーーン・・・
 ゴーーーーーーン・・・

 と、厳かな雰囲気の鐘の音が、響き渡ってきた。
「?」
 ナイーザッツから来た少年達が、目線を上に上げ、音の正体を確かめようとすると、周りの人々が一斉に、城の壁際に寄り始める。
 少年達も、それに習い、壁に寄った。

「なにが始まるんですか?」
 思わず小声になって、今まで話をしていた婦人にリューは言った。
「あら、知らないの?
 王のおでましよ」
「・・・・・!!」

 一方、セルヴィシュテ達も、全く同じ会話を交わしていた。
 王が・・・
 どこに?
 なぜ?

 わからないことばかりのまま、まだ鐘は鳴り響いていた。


 おおお・・・
 人々の歓声が僅かに上がった。
 なにかの楽器が吹き鳴らされ、爽やかな曲を奏でていた。
 どうやら、この雰囲気は、王が姿を現したのであろう。

 王と思われる者が、語り始めた。
 その声は、丸い天井に反射されているのだろうか。
 よく響いたが、穏やかで、透き通った声であった。
「皆のものよ。
 本日も、よき体、よきこころで過ごしておるかな?
 さあ、いつものように、変わりのあったもの、つらき思いをしたもの・・・
なにかあれば、遠慮なく、我が前に来るがよい・・・」
 楽器の音が低い音から、高い音に。
 単調ともいえる、静かな音・・・
 なにが、その音を奏でるか・・・

 壁際の人ごみから、誰かが王の居ると思われる方へと出て行った。

「・・・・
 王様が、謁見しているんだ・・・」
 セルヴィシュテが、思わず呟いた。
「すごい。
 こんな・・・こんな・・!
 謁見があるなんて・・・!!!
 聞いた?
 さっきのは王様が言ったんだよね?きっと?
 いつものように、って言っていたよ・・・
 毎日、やっているのかな・・・」
 ごくり、と思わずつばさえ飲み込む。
 目の前には民衆が立ちはだかり、謁見がどのように行われているのか・・・
 王がどこにいるのか・・・
 定かではない。

 セルヴィシュテが思わず足を踏み出したのを、ルッカが軽く留めた。
「・・・まさか、行くのか?」
「・・・・い、行かないの?」
「・・・・・」
 ルッカ、チルセは、不安げな表情を隠しもしていない。
 彼らは、剣での戦いは何度もかいくぐって来たが、このような状況は全く初めての事・・・
 未知というのは、まさになによりも恐怖なのである。

 セルヴィシュテは二人の方に自分の手をそれぞれ置いて、大きく頷きながら言った。
「大丈夫ですよ。
 行くだけ行こう。
 こんな機会を逃したら、直接お会いするなんて、ないかもよ」
 単調な音楽が、高くなり、低くなり、滑らかに流れ続けている。
 渋い顔のルッカが頷くまでに、6人の者が王の所に行った。


 目の前の人々の壁を少しだけ押しのけ、若々しい少年3人が人垣の前に出た。
 そして、仲間を探す・・・
 勿論、レガン達をだ。
 彼らは直ぐに見つかった。向こうがこちらを見つけたからだ。
 そして、ルッカは、レガンに合図を送ると、恐る恐る、広間の前へと足を出した。 

 ややぎこちない動作で・・・
 数人の少年が、広間の真ん中に、恐る恐る、歩み寄る。
 そして、彼らは前方を見た。
 王が居るであろうと思われる方向を。
 壁際には、沢山の人々がひしめいて立っている。
 赤い絨毯が、真ん中だけ、残っている。


 その絨毯の先・・・・
 階段が、5段。
 あまり高くない階段である。
 その階段にも、赤い絨毯が敷いてあった・・・・
 階段の先は・・・・
 よく、見えなかった。
 半透明の布が、天井から垂らされ、天蓋のようになっている。
 階段から向こうと、こちら側は、その布によって、一応遮られているようである。

 さっ、
 セルヴィシュテが、躊躇なく一歩踏み出した。
 その後ろについていくように・・・・
 ハーギーであった少年達が、ちょっとした萎縮感のようなものを感じながら付いていく・・・・
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Last updated  February 4, 2014 06:56:09 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
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