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2005年11月09日
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委員長自身もこうなることを期待していたようなところがあったのかもしれません。
もちろんK氏にしても理由なんて何でも良かったわけで、お互い爆発させるきっかけを待っていたという感じでした。(待ってましたってとこですか)
K氏とDJブースの中で口論となった委員長は、K氏が促すまま後についてフロント横の非常口から外に出ました。
非常口裏のやや広めのスペースはまだ工事終了後の清掃が完了しておらず、ブロックやら鉄パイプやらが散乱していました。

「こんなとこに連れ込んでどうしようってんだ?えっ?」

だてに不良をやってきた委員長ではありませんから、喧嘩になっても勝てそうなヤツとしか揉めないという鉄則は守っています。
(勝てそうも無い相手だったらハナから口答えなんかしてませんね)
はっきり言ってこのK氏ってのは、まさに「お水かぶれ」って感じの若造で、年も委員長と対して変わらなかったし、正月は紋付袴で出勤して来て悦に入っているようなお祭り野郎でしたから、仮に力ずくになっても絶対に勝つ自信があったので余裕の委員長でした。



ヒロシが委員長の後ろでオロオロしてます。

「そんなこと言うためにこんなところに連れて来たのかよ」

喧嘩っていうのは勢いのあるうちに始めてしまえば、喧嘩を売った方が幾らか有利に働くのですが、こういうふうに間を空けてしまうと売られた側に臨戦体制を調える猶予を与えてしまいますから、どうしても相手を呑み込んだ方に勝機が傾いてしまいます。

「いくら菊○店長が許可したからってお前らの好き勝手にはさせんぞ」

「ごちゃごちゃ言ってネェで早く始めようぜ、そのつもりでこんなとこまで引っ張り込んだんだろ」

そう言って委員長がにじり寄ると、向こう意気だけでここまで来てしまったもののまさか委員長が本気で向かってくるとは思っていませんでしたから、意外な展開に顔面蒼白で目が怖気づいています。
もうこなったらこっちのペースで、さあてどう料理してやろうかなってなもんです。
チョーパン入れたら一発で決まるだろうけど、鼻でも折ったら後々面倒だし、鼻血で返り血なんてのも汚いしなぁ、それとも先に蹴りでもぶち込んでから二、三発ぶん殴ったろかい、などと余裕の計算をする委員長。こういうときはアドレナリンが体内に充満していますから、意識は意外なほど冷静で驚くほど瞬時に計算が働きます。

「なんだっ!手ぇ出すんなら出してみろっ!」(ってお前はここでお喋りでもするつもりだったんかい)

もう面倒臭いからやっぱりチョーパン一発で決めちゃおうと思って間を詰めたところで、菊○店長、H副店長がダーッと飛び込んできてレフリーストップです。(どっちにしろ間に合って良かったね)

「一体これはどういうことなんだ?」


(今更間の抜けたこと聞くなよおっさんって感じですね)

「店長、すみません、どうもこいつとは上手くやって行けそうもないので辞めさせてもらいます」(短い間でしたがお世話になりました)

委員長は菊○店長に軽く頭を下げてヒロシに出るよう促しました。
更にK氏に向けてカッコ良く捨て台詞を決めて店を出る委員長でした。

「しばらくは一人で出歩かない方が良いぜ。さらわれちゃうかもしんねぇからな」



こういう啖呵は先に切った方が勝ちで、売り言葉、買い言葉でも後から言えば負け惜しみにしか聞こえません。
ヒロシは興奮冷めやらず非常に憤慨しておりました。

「このままじゃ収まんないすよね。何なんですか、あの野郎は」

「オレやお前が今までやってきたことそのまんま、やり返されただけのことさ」

正直言ってこの時の委員長は驚くほど冷静で醒めていました。
結局は自分たちがやってきたことのツケが回ってきただけのこと。
そう素直に思えたのも、この一年というもの自堕落な生活をしつつも、常に自問自答を繰り返して来た答えだったからかも知れません。

「そこでお茶でも飲んでいくか」

ヒロシを誘ってマジックの目と鼻の先にある喫茶店に入りました。
そこはマジックの従業員たちが頻繁に利用する店でもあったのですが、敢えて委員長はここでお茶を飲むことにしたのでした。

何故かと云うと、もし仮にK氏がメンツを気にするようなヤツであれば、従業員が取り囲む中、委員長にあんな捨て台詞をかまされてその場に甘んじているわけは無いはずで、すぐに追いかけてきて決着をつけたがるだろうし、周りの従業員の手前そのまま店に残るようなことはせず、「あの野郎生かしちゃおかねぇ」くらいの恰好だけでもつけてくるだろうと思ったからでした。
もし自分だったらそのくらいのハッタリをかますだろうし、そんなハッタリもかませない野郎では所詮水商売で生き残っていくのは難しいでしょう。

ということで、もしヤツが追っかけてきた場合、こんなとこで余裕かまして茶を飲んでいる委員長を見たら更に動揺してビビるだろうことも計算ずくのことでした。
まあ、よしんば本気でやりあうことになったとしても、言ったようにこいつには絶対負けない自信がありましたからその時はその時で出たトコ勝負ってなもんでした。
(素人の喧嘩はこういうハッタリと駆け引きで八割方勝負が付いてしまうんですね)

できるだけ表通りからガラス越しに目立つテーブルに着いた委員長は落ち着いてコーヒーなどを飲んでいましたが、ヒロシは相変わらずひどく動揺していて「こんなとこでお茶なんか飲んでて良いんですか」と落ち着きません。

「まあ、心配すんな。どうせチンケな野郎だからそのうちきっちりケジメ取ってやるから」

とさらにハッタリの演技でコーヒーをずずずっと啜る委員長。

「ボク、ちょっとジュリーさんに報告してきますよ」

「ああ、やっちゃったもんはしょうがないから、よく謝っといてくれよ」

小一時間ほどここでヒロシとお茶を飲んでいましたが、結局委員長の思ったとおり何事も無くこの事件は終了しました。
真冬の六本木、自分が犯した今までの罪の償いを受けるかのごとく顔を刺し貫く凍った風を、委員長は真正面から受け止めるようにして歩いていました。

その日はまっすぐ高円寺亀屋マンションに戻り、ゆっくりと湯に浸かってこの1年間を振り返りました。
トゥモローUSAが人手に渡ってからというもの、心の整理もきちんとできぬまま成り行きで流され続けてきた自分、この先何をすれば良いのか、何がしたいのか、明日の見えないつらい日々は一体いつまで続くのだろうと、相変わらず他人事のように他力本願な委員長でしかありません。
未だに漠然とした「夢」のような何かに期待しているだけで、自分の意思で何かを起こそうと云った気力もなく、ある日突然目の前に素晴らしい世界が現れてくることだけを夢見て、またしても時代に流されていく委員長でありました。





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最終更新日  2005年11月09日 06時52分25秒
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