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2005年11月28日
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バンドをやりたいなどと言い出すヤツは元々自己顕示欲の塊みたいなものですから、隙あらば目立つことばかりに気を取られて、肝心の楽器演奏とか歌唱とかの音楽技術は二の次というか、まず腕が無いのがほとんどで自分の技術は棚に上げておいて、見てくれとか他のメンバーが悪いとか思い込んでいるヤツらですから中々始末に悪いものです。

赤坂港荘に集ってイメージだけで好き勝手に夢を膨らませた究極のDJバンドはどうかというと、自分たちが働いているディスコとは相当に程遠い実力しか持ち合わせていないにも関わらず、やりたいことだらけでお腹一杯、胸一杯といったような状態でした。
まずメンバーのバック・グラウンドがこれほど違うのも珍しいくらいで、現職のDJってことだけで繋がっている関係ですから、実際に本人たちが志向する音楽傾向はまったく違うわけで、何を以ってしてDJバンドなのか当の本人たちにもそこら辺のことは判るはずもありませんでした。
いつもの通り道楽者の勢いに乗って、何だかわからないけどとにかくやろうぜみたいな、皆でやれば何とかなるだろうくらいの非常にチープなドリームでありました。

究極のDJバンド・・・ごっこ。

ドラムス:モンチ田中
プロ・バンド「めんたんぴん」のボーヤをやっていたという、そのたったひとつの事実だけで業界人扱いされたサウスポーのドラマー。左利きのクセに右利き用のセットを使うので、左スティックでハイハット、右スティックでスネアを打つ姿はまるで玩具の「おサルの太鼓叩き」のようでした。
身長160cmの彼はステージでその姿が見えず、無人ドラマーとして話題になったことがあるそうです。


ジミー・ペイジに憧れバンドを結成。高校生でアマバンド・コンテストに入賞して注目を集め町内の人気者となるが、思春期の栄光に浸りすぎシンナー遊びで身を持ち崩してしまい高校中退。アンパン小僧の異名を持つ。その後ディスコ業界にDJとして紛れ込んだが、ディスコではハードロックがまるで相手にされていないことに落ち込み、愛用のギター、グレコのレスポールのヘッドに「れすぽーる」とイジケた掘り込みをしてしまったちょっと暗めの未成年ギタリスト。腕は中の上。

ギター&ヴォーカル:ユウジ
大分県出身のフォークシンガー。浜田省吾を聞いてフォークロックに目覚めた少年は高校を卒業と同時に上京。その童顔を生かし一度はジャニーズ事務所なども目指したが、持ち前の気の弱さから結局はマイナー路線でディスコ業界へ突入。マイケル・ジャクソンのプロモを見て心酔し、フォーク路線からソウル路線へと方向転換したものの、時代はすでにユーロ系へと変わりつつあった。
地元の青年団ではカラオケ自慢で通るも、東京では何処にでもいるアイドルもどき。
腕は下の上。

ベース&ヴォーカル:シンジ
清水港からやって来たロックバンド「ばびぶべぼうず」のメンバー。プロバンドの道を目指すもバンドメンバーの相次ぐ脱退で解散。後に立川でディスコデビューし、SOUL&FUNKの洗礼をモロに受けチョッパーベースもマスターする。演歌からロック、Pファンクまで無節操ながらこよなく音楽を愛する温厚派。腕は中の中。

ヴォーカル&パーカッション時々ギターや鍵盤楽器など
自称マルチ・ミュージシャン。楽器を沢山持っていることがマルチだと思っている大勘違い野郎。FUNKロックのようなバンドをやりたがっているが、自分の実力を棚に上げて自分以外のメンバーでは実現不可能だと思っている。ハッタリだけで世渡りをしてきた似非ミュージシャンと言える。腕は中の下。

こんな末期的症状の馬鹿野郎達が集まっては夜な夜な夢を語り明かす赤坂港荘でしたが、このバンド結成のニュースを聞きつけて更なる馬鹿野郎が集結してきたのでした。

まずは赤坂シンデレラでウェイターをしていた五郎という青年が「ボクもまぜて下さい」とやって来ました。彼は赤坂シンデレラでダンサーを務めるヒロシと共に大阪からやって来た歌手志望の青年でした。ナオ同様に未成年で19歳。身長178cm、ルックスは野口五郎と沢田研二を足して二で割ったような中々の男前でしたが楽器は全くダメ。自信があるのは歌だけという彼が目指しているのは所謂ハードロック系で、映画「ローズ」を見て感動し、この道を目指すようになったということでした。



「ボクはエタなんです」

「ふ~ん。で、エタって何?」
軍団の長である物知りロニーですら何を言っているのかわかりません。

「えっ!? エタ知らないんですか?」

「病気かなんかの一種?」



「エタ非人?知らねぇなあ。非人って人に非ずってこと?」

「ウチは代々肉屋やってたエタなんです」

ここでシンジが大笑いしました。
シンジは突然ワケの解らないことを言い出す五郎が気に入ったようでした。
無教養な道楽者にとっては話が飛びすぎていてジョークとしか取れないようです。

「エッタ・ジェームスなら知ってるけど」

ということで仲間にまたバカが一人増えただけのことでしたが、五郎君言うところのエタとは穢土の民という昔の部落民のことでした。
地方ではこうした差別が未だに根強いようで、そんな自身の差別体験を話すつもりだった五郎君でしたが、相手をみてからモノを言え、というような感じでトンチンカンな道楽者軍団には彼の告白もまったく意味を為しませんでした。

普段は酒浸りのアル中で、歌を歌う以外に能のない天才シンガー、ジャニス・ジョブリンの自伝的映画「ローズ」を何十回も見たという五郎君は、スクリーンの中のベッド・ミドラー演じるローズに相当憧れていたようでした。
雰囲気的にはナオと気が合いそうでしたね。(ハードロック二人組みって感じですか)

さあ、そしてまたまた変なヤツ登場です。
あのダンサーのニックが舎弟のキクゾーを連れて押しかけて来ました。

「ロニーさん、俺等も入れて下さいよ。このままじゃジャパニーズに負けたままで悔しいっすよ」

「そんなこと言われてもなぁ、どんなバンドになるか未だわからないし、ダンサーなんて考えてもいなかったからなぁ」

「いや、オレもこの漫画見て勉強しましたから、何でも良いから混ぜて下さいよ」

そう言ってニックが委員長に差し出したコミックスは「ラグタイムブルースバンド」という漫画本でした。
彼の思考回路がどのように作動しているのかまったく理解できない委員長でしたが、その漫画を読み始めたユウジは何故か妙に感動したりしていました。

「オレ、永ちゃんのコンサートも見てきましたから」

更に食い下がるニックは永ちゃんの物真似を始めました。
ニックの物真似に異常な反応を示す道楽者軍団は調子付いて「黒く塗りつぶせ」の大合唱です。
道楽者が集う赤坂二丁目港荘の夜は黒く塗りつぶされていったのでした。





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最終更新日  2005年11月28日 06時46分55秒
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