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2006年04月07日
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えー、当時はまだドルがとてつもなく強かったですから、基地の周りには仕立て屋さんが何軒かありまして、兵隊さんの洋服などを作っておりました。
まあ、横浜や横須賀とかに比べると福生の横田基地周辺は地味ぃ~なところでしたが、ジェットが飛び交ったり、誇りっぽい道路をアメ車が横切ったりして、フェンスを隔ててちょっとした異国情緒を醸し出しておりました。
まさにフェンス沿いの国道にぽつんぽつんとお店があって、やってるのかやってないのかわからないような、これまた非常に地味ぃ~な佇まいをみせていたのです。

そんな仕立て屋の1軒に「ラッキー・テーラー」という、ソウル馬鹿御用達のお店がありました。オーナーは中国人のおっちゃんで、勿論裁断師も縫製職人も中国人でしたが、とにかくどんなデザインだろうがこなしてくれる重宝な店でした。
しかし、店といってもガラス張りのくせに中は生地(反物)が山積みされてて、店内は殆ど見えず、中に入っても同様に生地の山に囲まれて応接セットが無造作に置いてある、殺伐とした店でした。
テーブルの上にはアメリカの通販のカタログ(JCペニーとかね)が散乱していて、ソウル馬鹿たちはこのカタログの中から好みのデザインを見つけてはオーダーするといった趣向でした。

しかしこのカタログにも驚きましたね。
黒人専門のファッション誌みたいなものがあって、ジャンプスーツやら、オリジナルニット製品がこれでもかってくらいに載っていました。


冒頭にも書きましたが、ソウル小僧の御用達イコール全日本ディスコ協会御用達でもあるわけですから、どんなに奇抜なデザインを考案しようが、出来上がってこれを着て行く所は皆同じだし、結局は出何処は皆一緒みたいなもんで、とにかくアフロ小僧でこのラッキー・テーラーを知らないヤツはいませんでした。

この店のオーナーのおっちゃんがまた素晴らしいキャラクターでして、今ならさしずめバラエティ番組の天然ボケタレント顔負けでした。
店を入ると奥にあるカウンターデスクにでんと座ってお茶なんか啜ってましてね、客を客とも思わぬ態度なんですが、愛想だけはやたら良いんですね。(中国人っぽいていうのかなぁ)変な日本語だし、頭も結構禿げ上がっちゃったりしてるんだけど、とにかくニコニコしてるわけです。だからって客に媚び売るわけでもなく、福生=基地の前の店主って感じでした。(意味よーわからんぞ)

「おっちゃん、こんちわ~。ジャンプスーツ作りに来たよ」

「あ~、コンチワ。イイキジハイッタヨ、アタラシーノ」

「本当!?じゃそれ見せてよ」

「あ~、ソコネ、ソコノイチバンウエ、ソレソレ」(って座ったまま指差すだけ)

「おっちゃん、これってこの前来た時にも新しいのって言ってたんじゃん」

「あ~、エンバシーノヒト?」

「違うよ、俺らは新宿だよ」

「センシュウ、カツモトサンキタヨ」



「あ~、キョウカイノヒト?」

「違うっつーの。俺らはバッドチルドレンっていうダンサーズ!」

「あ~、カツモトサン、ダンサーズノユニフォームツクッタネ」

「えっ、そうなの?どんなやつだった」

「ソコノウエニアル、ソウ、ソノアタラシーキジツカッタヨ」



「あ~、アカノシャツトパンツノセットネ」

「ふ~ん、赤のユニフォームねぇ」

「ソウイエバ、キノウワジョージガキタヨ」

「誰だよジョージって?どこのヤツ」

「あ~、ミンナキョウカイノヒトジャナイノ?」

こんな無意味な会話のやり取りがあって、自分たちで絵を書いたりしてデザインが決まると、裁断のおっちゃんが呼ばれて型紙をどう作るか相談します。
このおっちゃんがまた変わり者で、無口な上に日本語が殆どわからない。(っていうかわからないから無口なんだろ)
ボタンの位置とかファスナーの位置とか細かに絵を見せて説明すると、ふんふんと聞いていて、数分沈黙の後、中国語でおっちゃん同士の会話、再び説明、沈黙、中国会話、こんなことを繰り返してようやくデザインの型紙が検討されます。

「あ~、ダイジョブ、コノヒトワハサミノプロダカラ、シンパイナイヨ」

「あのさ、ボタンはくるみにしてジッパーは横だからね」

「あ~、ダイジョブ、ダイジョブ、ライシュウカリヌイダカラ」

「本当に大丈夫かなぁ~」

「あ~、ホラホラ、チョットカンガエルジカン、コレヨンデ」

と、おっちゃんは、広げたデザインブックの間に挟まって見開いた小さなポルノ雑誌を手渡します。
一瞬にして商談の緊張が解け、アフロ小僧は目が血走ります。
おおーっ、スゲーってなもんで、その当時はこんな本は中々手に入りませんでしたから、急に無口になったアフロ小僧はカウチに腰をおろして雑誌に目が釘付けです。

しばらくして裁断のおっちゃんからオッケーの合図が出て商談成立です。

「あ~、コレネ、ココノジッパーノトコロガネ、チョットムズカシーネ、デモ、ロクセンハッピャクエンデイイヨ」

小僧は頭の中でガイジン女の裸が揺れてますから、はいはいってなもんです。

「あ~、ジャ、マエキン、ドースル?ハンブンハラウ?」

はいはいってことでお金払ってさようならみたいな感じです。

「あ~、ジャ、ライシュウ、カリヌイダカラネ、ワスレナイデネ、ハイ、アリガトゴザイマシタ」

いや~、さすがに中国人は商売の天才です。
今にして思えば、これってボケじゃなくて商売のテクだったのかもしれませんね。
とは言うものの、やぱりこのおっちゃんの人柄がみんな気に入ってたんでしょうね。





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最終更新日  2006年04月07日 08時59分22秒
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