
設計事務所による配筋検査
横浜の傾きマンションを始め、欠陥マンションは何故できるのでしょうか?
近年問題になった欠陥マンション、公になったもので、思いつくだけですが
等の問題がありました。いずれも、大手のディベロッパー、施工会社がかかわっていた物件です。
建物の中には人が生活し、仕事をしています。考えられる災害等から人命を守るというシェルターとしての大切な役割があります。ましてや多くの家族が住むマンションは、土地が幾重にも積み重なり、建物そのものが町を形作っているようなものです。その安全性については、慎重の上にも慎重を重ねなければなりません。
そのマンションで、ここ3年間だけで、3件も構造上の欠陥が発覚しています。冒頭でも、言いましたが、たまたまなのか?という問いに対しての私の考えは、「傾きマンションのような欠陥は、たまたまの事例ではなく、マンション建築では氷山の一角に過ぎない。」のではないか?ということです。
なぜなら、いづれも場合も、単なるミスでは無いからです。人間だれしもミスをします。もちろん建築という人の命を預かる構造物にミスはあってはならないのは当然ですが、そんな建前ばかりをごり押しし、ミスはあってはならないという風潮が、現場を委縮させ、問題を隠蔽し、更に深刻にしてしまうのだと思います。
ミスではないというのは、横浜西区のマンション、東京青山のマンション、いづれのケースも、梁に配管用の孔を空け忘れて後から孔をあけている点です。コンクリートの梁は一度打ってしますと、後から孔をあけることはできません。それは、構造上大切な配筋を切ってしまうからです。それなのに穴をあけるというのは、危険を承知で行っている確信犯と言えます。 建物の基礎の配筋を切るということは人間でいえばアキレスけんを切るに等しい
ような恐ろしいこと、建物からの悲鳴が聞こえてきそうで、わが身の足元に痛みさえ覚える感覚です。
また、杭の長さが不足していたという横浜都筑区のマンションでは、杭を打った時支持地盤に到達しているか否かは、杭のオペレーターがわかるはずです。オペレーターが用意した杭では長さが足りないとわかれば当然現場監督に報告することになります。それなのに、杭の長さが不足したまま工事が進むと言いうことは、これも良くないことを知っていながらの確信犯と言えるのではないでしょうか。
更に、近年、感じるのは、現場監督の技量不足です。バブル崩壊後の失われた20年のゼネコンにどのような影響を与えたかを考えると、現場監督の待遇を落としに落としてきた20年と言えます。経験豊かな40~50代の現場監督は人件費が高いということでリストラされました。
そして、建築の需要が戻ってきて、業界全体で現場監督が不足した結果。次代を担う20~30代の現場監督も経験豊かな先輩から仕事を十分に教えてもらえず経験の浅いまま現場に出ていく。あるゼネコンでは、建築学科の求人が間に合わず、大学の文系出身者を採用し、現場監督に育てているというところもあるといいます。建物の質は現場監督で決まると言っても過言ではありません。そんな重要なキーマンが、経験不足であったり、オーバーワークで疲弊していたりしていてはちゃんとした建物ができるわけがありません。 現場監督の粗製乱造は建物の粗製乱造を意味します。
バブル崩壊後の我が国の現場は、他の産業と同様に、規格と審査によって質を保つように仕組みが整えられてきましたが、規格と審査さえクリアしていれば、問題の本質には目をつぶるような風潮が幅を利かせてきました。検査だけでも
等があります。以前は確認申請だけでしたので、制度の屋上屋を重ねて安心を買っているつもりが、単なる気休めにしかなっていないケースが多いと感じます。
ホントの問題に目を向けず、審査の証明書を付けることで前に進んでしまう安直な風潮。それを許す各社のコンプライアンス規定。エネルギーをかける対象が、問題の解決ではなく、書類上の整合性をとること。こんな、不合理で矛盾に満ちた現場を何度も目にしてきました。
彼らの立脚点が、安全な建物を作ることではなく、書類の整合性をとること、スケジュールを守ることでなりがちです。こういった呪縛のなかで委縮してしまって、盲目になっているのでは、欠陥マンション問題が無くなることはないと思います。
私が、設計監理を行った物件では、そういった委縮した現場監督に対して、問題点を直視することを何度も何度も言い。目の前の建物の質を確保することを徹底していきます。私自身も、配筋検査は現場監督に任せず、設計者側の目で、一本一本確認して、建物のアキレスけんを切るようなことを未然に防ぐ配慮を徹底しています。
かなや設計
環境建築家 金谷直政
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