設計と一口に言っても、皆さんのイメージする設計とはどういうものでしょうか?平面図を作るのが設計と思っている方が多いと思いますが、それは設計の中のほんの一部に過ぎません。
平面図を作ることは、設計全体で言えば5%の比重もないのではと思います。どのような工法で作ったら良いか、断熱性のこと、高齢化について、コミュニティーとのかかわり、また、将来の維持管理費、その時の各々の建築資材の相場までを考え図面をつくるのが設計です。
例えば、事業物件として集合住宅を建てるとき、通常は、鉄筋コンクリートか鉄骨造で検討しますが、その時の職人の不足具合で、工法が変わってきます。近い例で言えば、東日本大震災で、東北地方に職人が必要になったため、2013年ころの東京では、型枠職人や鉄筋の職人が不足していました。求人倍率が7倍程度と、薬剤師と同じ位高い求人倍率となり、このことが原因で、鉄筋コンクリート造の建設費が、まず高騰。そして、少し遅れて、鉄筋コンクリートの建設費が高騰したことから、鉄骨造での建設が増え、鉄骨造の建設費が高騰したのです。
こういった場合は、一例として、木造で計画を考えことも考えられます。敷地が広ければ、木造の戸建住宅のような建物をいくつも建てることで、集合住宅と同じような収入を得られることが可能になります。木造は、正しく、断熱・気密等の設計を行えば、100年以上も持つ工法ですので、資産価値は十分です。
これが、設計料無料のサービス的な設計の場合は、鉄骨造が高い時でも鉄骨造で、鉄筋コンクリートが得意なゼネコンであれば鉄筋コンクリート造が高い時でも鉄筋コンクリート造で設計を進めてしまいます。なぜなら、建物を建てることが仕事の会社は、自社の工法で建てることしかできないからです。
このような決まりきった設計は、経済が、一様に成長し続けた社会状況や、変化の少ない社会状況の中では、問題がないのかもしれません。しかし、常に変化し続け、更に成長が見込めない現代においては、常に変わる市場に柔軟に対応する設計が必須となります。施工会社に雇われた設計者が行う設計では柔軟な対応が困難になのではないでしょうか。
設計者は、その時の建築相場を見極め、構造形式と建物の性格に見合った設計を柔軟に行い、最終的に建て主に利益をもたらす提案をする必要があります。その、作業には会社の事情で特定の工法で行う設計ではなく、独立した立場で、建て主の利益になる提案をする設計者が必須になるのです。施工会社に雇われた設計者が行う無料の設計が、如何に危険であるかお分かりかと思います。
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