関本洋司のblog

2004年10月16日
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テーマ: 戦争反対(1190)
カテゴリ: コラム
1、攻撃性の内面化としての文化(=憲法9条) 

 フロイトの『文化への不満』に「人類の運命的課題」を論じた興味深い一節があります。

 「人類の運命的問題とは、文化発達にとって、人間の攻撃衝動、および自己否定衝動による共同生活の障害を克服することが、はたしてうまくいくかどうか、また、どの程度成功するだろうか、ということのように私には思われる。この点に関しては、ことによると、まさに現代こそ特別な興味をひくに値するのかもしれない。今日、人々は自然力に対する支配をきわめて広範囲にはたしているので、自然力の助けをかりて最後の一人にいたるまでたがいに絶滅させあうことができるようになった。彼らは、それを知っている。彼らの現在の動揺や不幸や不安の気分は、大部分そこから生じているのだ。」

 これはフロイトが珍しく個人を越えた共同体に対して精神分析をあてはめた記述です。
 そうしたフロイトの考察に加え、現在近畿大学で教鞭を取る柄谷氏は「永遠平和について」の著作で知られる、国連をめぐる議論でも引用されることの多いカントをつなげて考え、以下のように解説しています。

 「カント=フロイト的にみれば、世界平和への道筋は「文化」、すなわち攻撃欲動の内面化を強化することである。」(柄谷行人「死とナショナリズム」『ネーションと国家』より)

 カントは後年の「世界大戦」といったものは経験していなかったせよ、ロシアとの国境近くに住み国際政治を身近かに感じていた人ですし、フロイトは世界大戦を体験しそれを冷静に分析した知識人です。そうした両者の考察を経たのち、柄谷はよりアクチュアルな考察に移っています。
 そして、柄谷は憲法第9条こそ「超自我」に他ならないと言うのです。
 柄谷によれば、それはアメリカから来たものでも、アジア諸国から来たものでもなく、自らの内面から超越論的に生まれてきたものだと言います。

 ベトナム反戦運動の時、脱走兵は、この日本の平和憲法に感動し、世界憲法にしたいと考えたようです。ベトナム帰還兵のアレン・ネルソンさんもまた同様の意見を持ち講演活動を行なっっています。ただ、肝心の現代日本人にとっては、そうした憲法9条の意義がまだ広く自覚されていないかも知れません。

2、攻撃性の内面化としての文化(=エイサー)  

 話が飛ぶようですが、僕は、そうした攻撃衝動が内面化した文化の具体例として、僕は沖縄のエイサーを挙げたいと思います(*)。

エイサーA

エイサーB

 これは文字どおり、具体的な生きた「文化」です。
 エイサーを踊る集団は、僕には「武器を持たない軍隊」に見えます(普通は本土で言う盆踊りに対応すると目され、比較される)。太鼓を持って踊る彼らの身体は鍛えられ、集団の規律を守ることが出来、それに加えて個人の技量も発揮することができる(しかもその集団は外に開かれている)。そのリズムは多くの場合四拍子だが、そこにはポリリズムがあり、複数の身体が前提となっている芸能なのです。
 そこで思い出すのはブラジルのカポエイラです。カポエイラは奴隷が反乱を目的とする格闘技の訓練にはじめたが、支配者からの眼を盗むため、ダンスの外装を施したものだと言われています。それと似た感覚をエイサーにも感じます(喜納昌吉さんの主張する「すべての武器を楽器に」は、ブラジル人の奴隷や沖縄市民の手で、すでに実行されていたということです)。
 エイサーを見た為政者は、内の者であれ外の者であれ、彼らを支配しようとは思わないでしょう。
 その理由は、為政者側が軍事的な戦力として彼らを恐れるからではなく、(僕が為政者だとしても)彼らの踊りを、その美しさをもっと見ていたいと思うだろうからです(*)。



写真は、今年東京調布で開催された「アースデイ調布」におけるエイサーの模様です。
ちなみに東京、特に西東京には沖縄の情報文化を伝える「基地」が沢山あって、情報を発信しているようです。三鷹の「はちのこ保育園」でも沖縄関連の講演会が開かれていました(また御報告します)。僕の住む横浜の商店街にも最近沖縄ショップが出来て好評です。こうした「基地」なら諸手を挙げて大歓迎するのですが。


究極的に言えば、世界中みな一緒に踊れば平和になるということでしょう。ただし、そのためには共通のリズムが必要になりますが・・・





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最終更新日  2004年10月16日 00時28分10秒


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