実現すれば、2014年に武器輸出三原則を緩和し「防衛装備移転三原則(総合2面きょうのことば)」を定めて以降、初の本格的な日米共同開発案件になる。これまで個別に例外を認めてきた。新三原則のもとで共同開発を進めやすくなったことが背景にある。政府は米国の同盟国や友好国などへの輸出を通じて参画する企業の利益の底上げにつながると期待する。
防衛装備品は各国の共同開発が主流になっている。技術が高度になり、開発や生産にかかる費用がかさむためだ。トランプ政権は巨額の対日貿易赤字の削減のために日本に高額の防衛装備品の購入を迫る。
今回の共同開発構想は6月に開いた日米防衛当局の次官級協議で議題にのぼった。年内にも合意する見込みで、まず共同研究に着手し5〜10年後の量産化を目標にする。19年度以降の予算に調査費を計上する予定だ。
次世代レーダー開発を探る米側が「ガリウムナイトライド(窒化ガリウム)」と呼ばれる半導体素子を使った三菱電機などの技術に着目。米側から共同開発を打診した。
従来の「ガリウムヒ素」半導体に比べ出力が大幅に高まり、より広範囲の探索が可能になる。米国企業も同様の技術を持つが、この分野は日本が先行しているとされる。
日本の海上自衛隊のイージス艦は米ロッキード・マーチン製のSPY1レーダーを採用している。米海軍は今後、米レイセオン製の最新鋭レーダーSPY6を搭載予定だ。探知できる距離はSPY1の2倍以上の1000キロ超とされる。
今回、開発するのはさらに次の世代のレーダーだ。小型化し、捕捉できる範囲を広げる。日本海側に展開するイージス艦で朝鮮半島全域に加え中国の東側の一部の地域も捉えられる。
高性能レーダーでミサイルなどの複数の目標物を同時に探知し撃ち落とすイージス・システムは米国の技術を集めた仕組み。関連ソフトや部品などの輸出は事例がある。システムの核心ともいえるレーダーに日本が関わるのは米国との安全保障協力の深化を意味する。
これまで軍事技術で優位に立つ米側が核心部分を担ってきた。今回は日本の技術力の根幹ともいえる半導体を軸に据える点でも異例だ。日米共同開発は兵器や関連技術の輸出を原則として禁じた「武器輸出三原則」の例外としてきた。新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」のほか、F2戦闘機で実績がある。
2018/7/6付日本経済新聞 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32679440V00C18A7MM8000/
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