やってきた熱々のうどんを頬張ると淡いうまみが広がった。
ハッキリした味が多い韓国料理にしてはめずらしい味付け。
他の客はみんな「餃子入りうどん」や「茹で餃子」を食べている。
うどんもおいしいらしいが、餃子が人気の品のようだ。
日本人好みのダシの効いた味で、熱々のスープがたまらない。
「これ、適当に入れて食べて」
目の前に塩漬けの青菜とキムチの壷が陣取っている。
客は好きなだけとって、食べていいらしい。
「オイシイなあ」
なにげなく日本語でそうつぶやくと、他の客が反応した。
「オイシイデスカ?」
「あれ? 日本語わかるんですか?」
「少し勉強したことがあります。でもムズカシイネ」
「それなら同じですよ。ハングルむずかしいね」
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正面に座って、ビビンパをつついていたオンナのコが上手な日本語で受け答えしてくれた。
こちらの話を他の客や店のオバチャンに説明している。
「オイシ〜?」
変なイントネーションで店のオバチャンが話しかけてくる。
「マシソヨ〜。マシソヨ〜」
おばちゃんの問いかけに片言のハングルで答えると、かなりウケたようだ。
つられたのか、隣の年配夫婦も餃子をつつきながら、声を出して笑っている。
カメラバッグを担いだヘンな観光客を失笑しているのか、
おかしなハングルの発音がウケているのかはわからない。
少なくとも食事のテーブルは楽しい雰囲気に包まれた。
「ここでビビンパ出しているんですか?」
「いえ、ビビンパはとなりの店からもって来ました」
その辺はおかまいなしらしい。
この辺りが韓国スタイルだ。
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「このスープがおいしい、とアジュンマ(おばちゃん)に伝えてください」
彼女に告げると、そのままオバチャンに訳して伝えてくれた。
「この店のスープの味はおばあちゃんからの味だソウデスヨ」
「チョンマル・マシソヨ〜。タン?クッ? イゴ マシソヨ」
(ホントにおいしいです。ツユ?汁? これがおいしいです)
と片言かつ文法的にデタラメなハングルで感激した味の感想を述べた。
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「うれしいわねえ〜。ホラ、コレ」
ヘンなハングルをしゃべる外国人に気をよくしたのか、
茹で上がったばかりの餃子を3つばかり、食べかけのドンブリに放り込んでくれた。
「え〜、ギョウザ頼んでないですよお」
「サビスヨ。オバアチャンの味、オイシイといってくれたから」
「サービスって言ってます、食べてください」
「今のはわかりますよ〜」
「通訳イラナかったですね〜」
「アジュンマ〜、カムサハムニダ〜」
カウンターがみなの笑い声に包まれた。
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