インターネットの通販サイトに記載してある格安の「お試し価格」で1回限りの注文をしたつもりが、通常料金で定期購入契約をしてしまうトラブルが急増している。国民生活センターによると、2017年度のネット通販での定期購入に関する相談件数は、一昨年度から2.8倍に増えた昨年度を大幅に上回っている。
出典:毎日新聞 2018年1月8日
「『お試し価格』よく確認を 契約トラブル急増」
これはここ最近よく見かける話題でしたが、相変わらず急増中とのことです。
上の記事で問題になっているのは健康サプリメントのようですけれど、健康や美容に関する商品に、このようなことが多いのではないでしょうか。
今日は定期購入に関わるトラブルと、通販のクーリングオフについてのお話です。
結論から先に言いますと、 通販は基本的にクーリングオフができませんので、もし一定期間内なら無条件でできると思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度読んでいただきたいと思います。
通信販売の種類
・ネット通販
・テレビショッピング
・カタログ通販
・チラシ
・ダイレクトメール
・(ネットオークション)
・その他
これらで選んだ商品を、電話・郵便・FAX・ネットなどを経由して申込み契約することを、 通信販売といいます。
通信販売のクーリングオフ
特定商取引法では、訪問販売や電話勧誘などによる購入のクーリングオフ制度が設けられています。
でもこのクーリングオフ制度は 「通信販売」には適用されません 。
ただし販売者側が「 返品特約」で「○日以内なら返品可能」などと明記している場合は、その限りではありません。
また、返品特約について何も書かれていない場合には、商品到着後8日以内にキャンセルの意思表示を伝えることで、クーリングオフが可能になります(送料は購入者負担です)。
特定商取引法では返品特約を明記することが義務つけられていますので、基本的には「何も書かれていない」ということは無いんですけどね。
返品特約に「返品不可」だけしか書かれてないことはあまりないでしょう。
結果的には「返品不可」とほぼ同じことにはなりますが、初期不良・破損・販売店側のミスなどについては返品を受け付けていることがほとんどで、その際の返品期間が書かれています。
この期間部分だけをサラッと読んで、勝手に「返品可能期間」だと思わないようにしてください。
「」は、けっこう多いです。
また、返品可能であっても「3日以内」などの短い期間設定をしているお店もありますから、商品到着後はすぐに開封して、商品内容を確認してくださいね。
人間だれでも間違いはあるので、時には「勘違いして他の商品をクリックしてしまった」「注文数を一桁多く入力してしまった」「贈答品の注文で、間違えて送り先を自分の住所にしてしまった」などといううっかりミスも有り得ます。
でも「返品不可」と書いてある場合は注文直後でも変更やキャンセルを受け付けてもらえないかもしれません。
特に、注文ボタンを押した後に確認画面が出てくるなどシステムがしっかりしている場合ほど、販売店側の非が少なくなるので相対的に購入者側の過失が大きくなり、不利です。(それでも一応、問い合わせてみましょう)
返品特約については、販売ページの下の方に書かれていることが多いです。
定期購入について
私も定期購入している商品はありますし、定期購入自体が悪いわけではないです。
ただ、定期購入の申し込みをしたつもりは無く、1回きりのお買い物だと思っていたのに、実は定期購入だった・・・というパターンは困りますよね。
ましてやすぐに解約できない定期購入なら、なおさらです。
購入者も注意深く読まなくてはいけませんが、非常に分かりにくい書き方をしている販売店もありますので、注意が必要です。
定期購入って、昔からありましたよね。
カタログ通販の千趣会では、同じシリーズの商品が毎月届き、12回分揃うのが嬉しかったです。
形は違うけれど祖母は女性誌を定期購読していて、定期購読の人だけがもらえる新年号のお年玉付録を楽しみにしていました。
販売側は"定期購入できること"をウリにしていたし、私たちも"定期購入であること"に価値を感じていました。
うーん・・・
なんで化粧品や健康食品だとこうなってしまうのでしょうか^^;
分かり辛く書いている販売店が多いということなんですかね。
「最低○回のお約束」の罠
定期購入は「いつでも解約・変更OK」「回数縛りはありません」などと書かれているものもあれば、「○回以上のお届けが必要です」「○回以上のご購入のお約束です」などと書かれているものもあります。
後者の 回数縛りがある場合ですが、たいていは初回の購入額が激安に設定されています。
「初回に限り90%OFF!」のような広告ですね。
そこまで割り引かれていなかったにしても、50%以上の割引は珍しくありません。
回数縛りに気付かずそのような商品を買った時の流れとしては、
1.90%OFFの商品を買う(例:定価1万円の商品を千円で購入)
2.翌月にまた商品が送られてきてびっくり、しかも高額(定価を超えることはないですが)
3.慌てて調べたり問い合わせをする
4.お約束の回数を満たしていない期間の解約ということで、初回商品の差額分を支払うことになる(例でいうと、あと9千円のお支払い)
5.千円だから買っただけなのに、1万円なら買わなかった>< と、後悔
6.または、渋々とお約束の最低回数分を買い続ける
販売価格が「初回に限り激安」だった場合は、 定期購入が前提だったり 回数縛りのあるパターンが多いです。
それらを分かっていて継続するつもりで買うのなら全然構わないのですが、1回だけ買うつもり、または定期であることは分かっていても回数縛りは無いと思って購入すると、面倒なことになります。
※商品が本当に「お試し品」(3日〜2週間分くらい)だった場合は、単品購入(定期購入ではない)のことの方が多いですが、一概には言えません
回数縛りのある販売方法は疑問視されているものの、そういう方法が多いことを知りながら広告を読むと、分かりやすく書いてある販売店の方が多いです。
たまにものすごく小さくしか書かれていなかったり、分かり辛い書き方をしている場合もありますが、回数縛りの無い商品はそれについてアピールしてくるため、もし「いつでも解約OK」の文字が見当たらない場合は「どこかに回数縛りについて書いてあるだろう」と疑って、穴が開くほどキッチリ販売ページを読んでみてください。
さすがに、回数縛りがあるのにそれに全く触れていない販売店というのは、今まで遭遇したことがありません。
回数縛りが無くても安心できない
定期購入で「いつでも解約OK」の時ですが、たいていの場合は「次回お届け予定日の○日前までに連絡下さい」と書いてあります。
多いのは、「7日前」とか「10日前」など。
この契約が定期購入だと分かっている場合はその期限に合わせて解約の連絡ができますが、定期購入であること自体に気づいてないと、それすらできませんよね。
翌月2回目の商品が届き、やっとそこで気付きます。
2回目の商品価格は、定価か10%くらいの割引価格になっていることが多いです。
「定価1万円の商品が千円だから買っただけ」「長く使い続けるつもりはなかった」という人だと、2回目の価格が仮に30%OFFで7千円だとしても、高く感じるでしょう。
初回割引の商品を検討する時は、まずは 定期購入なのかそうでないのかを確認する癖をつけてください。
「いつでも変更・休止OK」という表示
定期購入でもこのように書いてあるとちょっと安心してしまいがちですが、 「いつでも解約OK」とは別物と考えてください。
変更や休止というのは、「お届け周期を変更」「個数を変更」「旅行に行くので今月はお休み」などというだけです。
回数縛りが明記されている場合、変更や休止はできても回数縛りは有効な状態です。
つまり、 解約をすればそれなりのペナルティがあります。
せっかく「定期購入かどうか」「定期購入の場合は回数縛りがあるかどうか」に気を付けて販売ページを読むようになっても、「いつでも変更・休止OK」を「いつでも解約OK」と解釈してしまうと、自分の意に沿わない買い物をすることになってしまいます。
最近のトラブルの傾向
健康食品のトラブル相談について、元々は高齢の顧客が多かったのですが、スマホの普及と共に、2015年からは10代〜20代が急増しています。
パソコンでもそうなのですがスマホだと特に、「価格の安さ」と「著名人の名前や写真」などが目立ちすぎて、定期購入であることや回数縛りに気付きにくいのです。
トラブルにならないための対策
返品特約がある限り、販売店側の違法性を問うのは難しいです。
以下のことを理解し、気を付けるようにしてください。
・通信販売は基本的にクーリングオフ制度で守られていない(返品特約に明記されているルールに従う)
・お買い物の際はその契約が定期購入かどうか確認する
・定期購入の場合、回数縛りがあるかないか確認する
・初回のお試し価格が激安の時ほど、定期購入と回数縛りに注意する
・スマホでのお買い物は特に文字が小さくて分かり辛いため、トラブルが発生しやすい
最近の通販トラブルに関する取り組み
消費者庁の改正法が、平成29年12月1日から施行されました。
平成28年6月3日に「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第60号)が公布されました。
本改正法は、平成29年12月1日から施行されました。
※ただし、改正法第2条の規定及び附則第3条の規定は民法の一部を改正する法律の施行の日から施行されます。
出典: 消費者庁
この改正により、
・申込みボタンから近い位置に「定期購入であること」を明記する
・最初の格安商品を買ってその契約に回数縛りがあった場合、最終的に何回購入していくら払うのかを分かりやすく明記する
・申込みの最終画面で取り引きの全内容が分かるようにする
などが義務付けられ、今までの「気づかなかった」に対応されるようになりました。
困った時のお問い合わせ先
・ 独立行政法人 国民生活センター
・ 公益社団法人 日本通信販売協会JADMA
・ 一般社団法人 ECネットワーク
まとめ
上の方でも書きましたが、定期購入(定期販売)そのものは悪くないです。
ただ、消費者庁が禁止行為としている「消費者が意図せず申し込みをさせる行為」が駄目なんですね。
それについては取り組みが強化されていますので、今後はトラブルが少なくなっていくかもしれません。
でもその分、今後は「気づかなかった」じゃ済まされなくなるというか、販売店側が明確にすればするほど、販売店側の過失は少なくなります。
つまりは、トラブルがあった時に顧客側の責任が大きくなっていくのです。
元々通信販売というのは自宅でゆっくり吟味できるのがメリットのひとつで、だからこそクーリングオフ制度の適応外という道を歩んできました。
「初回に限り○%OFF」「お試し価格」という激安商品の場合は、くれぐれも定期購入と回数縛りに注目してください。
最後に、すごく個人的な意見ではありますが・・・
すでに改正を受けて、指示通りの販売ページに訂正しているショップもたくさんあります。
最近、「なんか書き方変わったなぁ」「分かりやすい!」と思っていたら、そういうことだったのですね。
まだ施行されたばかりなのでページの訂正が追い付いていないショップもあるとは思いますが、これからしばらく経っても内容が変わらず、いつまでも分かりにくく小さな文字で書いてあるような販売店だとしたら営業姿勢に問題がありそうなので、私は避けていこうと思っています。