大概ひと月出れば掘り出し物に巡り合えるんだけどなぁ ・・・
蔵に入っていくと伊万里の皿が在ったり、壺が在ったりする。
それを何かとうまいこと言って安く買って江戸に持って帰って道具屋に高く売りつけるとその利鞘でずいぶん儲けたもんだけど今回の旅はなんんんんにも出てこない。
骨折り損のくたびれ儲けって良く言ったもんだ。
今日はもういいやあそこの茶店で一服して宿を決めるか。
おい!ごめんよ
どうもお客様いらっしゃいませ
とりあえず一服させて貰うよ
どうぞお座りくださいませ
何かお持ちしましょうか?
酒と行きたいところだけど、昨夜の酒が残ってしまって
こういう時は甘味にするか、そうだな、団子でも貰おうか
かしこまりました。
どうでもいいけど、くたびれちまったなぁ
どうぞお待ちどう様です。
お!良い艶をしているねぇ。
俺は旅をしているからいろいろ団子なんか食べるんだけどな。
良い団子に出会ったときは旅の疲れを忘れるな。
うまい団子だなと思う団子もあれば、
食べてみるとどうやって作ったんだよって言いたくなるような団子もある。
数多く食べて来たから俺は色艶だけで大体うまいかまずいか分かる様になった。
もぐもぐもぐ
どうやって作ったんだよ!おやじ!!
えぇこれは餡子をこねまして・・・
そういう事を聞いてるんじゃねぇ
もう良いよ!向かい酒だ!熱燗で頼むぞ
ついてないことが重なるな、、、
商売にはならないし、入った茶店はまずい団子だ
・
・
・
ここまでついてないかな、、猫だ・・・
俺は猫なんか大っ嫌いなんだよ
そもそも、なんで食い物屋でこういうものを飼ってるんだ
お待たせいたしました。
・・・ぬるいよ!なんでこんなにぬるいの?
俺は熱燗って言わなかったっけ?耳が遠いのか?
もう良いよ!燗直ししてこなくっても、それよりもなんで店に猫がいるんだよ
あれだけは許せないよ
猫で御座いますか?
お好きでございますか?
目も悪いのか?
嫌な顔してあれだけは許せない!って言っているんだよ
なんで食い物屋で猫なんか飼っておくんだよ
失礼いたしました。
これ!どっかに行きなさい。
お客様がお嫌いなようだ、向こうに行きなさい
申し訳御座いません、ばあさんが猫を好きなもので。
この野郎、飼い主が行けって言っているんだから行けよ
本当に言う事を聞かねぇ猫だなぁ
おい向こうに行けってんだよ!しっしっ
痛い!!
おやじ血が出たよ
申し訳御座いません
すぐに手拭いを持ってきます。
この野郎!客がここで銭を落とすからお前もそうやって飯を食っていられるんだ。
それを客の手を引っかいて・・・どうして平然と飯を食っていられるだ?
・・・お前になんか飯を食わせたくないね。
また手を出すと引っかかれるから、この棒を使って、、、高麗?!!
そんな馬鹿なことは無い。いやでもこれは本物の高麗の梅鉢だ。
何だってこんな物があるんだ?
五枚一組だって千両はくだらない、一枚だって二百両は・・・。
成程な始めは五枚一組でお金持ちが持っていたんだ、
流れ流れて落ちぶれた奴が一枚、一枚と流してばらばらになってここに来たってんだな。
それにしたって知らないって恐ろしいな、こんな所で猫の皿になってるんだからなぁ。
しかしついて来たな。ここで上手く言ってこの皿を手に入れれば掘り出し物の五つや六つに値する。
どうもお客様お待ちどう様で御座いました。
手拭いを
おぉありがとう
しかし暑いなぁ
いいえそうでは御座いません
手の傷が・・・
あっ手の傷
引っかき傷、あぁこんなの大した事じゃない
そう言えばおやじ、思い出したことがあってうちの嬶(かかあ)が大の猫好きなんだよ
俺は嫌いだから我慢させていたんだけど、この前長い旅から帰ってきたらやっぱり寂しいと言うんだ。
だから猫の一匹でも飼っちゃくれないかと俺に言うんだよ。
まぁ間違いが起こるといけないし俺
の留守中だけ飼って帰ってきたら他所にやるんだったらいいかと思っていた矢先にこの猫だ。
どうだろう。ここで会ったのも何かの縁だ。
俺は嫌だけど嬶の為に一つ譲っちゃくれないか。
左様で御座いますか。
手前も猫が好きじゃ御座いません。
ただうちのばあさんが好きなもので奥のほうにいっぱい飼っております。
ですから私が差し上げるとかそういう事は・・・。
あぁばあさんがね。
そういう事なら話をつけ易い様にしようじゃないか。
ここに三両ある。それでそのこの猫を譲ってくれるように話を付けちゃくれないか。
お客様何を仰っているんですか?!
こんな猫に三両の大金なんて!!
いやいや三両あれば文句はねぇだろ
だからばあさんにそう言って譲ってくれないか?
文句がるとかではなく、これはお客様・・・
良いってことよ
確かに大金だよ、けどこの猫を持って帰って嬶の喜ぶ顔が見れるなら安いもんだ
とりあえず話だけでもしてみますが。
おう!どうだった?
どうもこうも御座いません。
もうばあさんは大喜びで動ければここまで来てご挨拶に来んでございますが、
あいにく腰を悪くしておりまして。
挨拶なんか構やしない
知っての通り俺は猫が大嫌いだから、かごに入れてくれよ。
それとな、近くの宿をとって泊まるだけど猫だって飯を食べなくちゃいけない。
食い付けないものではなかなか食わないし、女中に猫の器をと言うと嫌がるからな。
そこで食っている汚い皿を紙に包んで間に入れといてくれないか。
有難う御座います。お優しい方で御座いますね。
なんだかんだと言いながら猫のご飯まで心配して頂き。
今すぐ奥からお椀を持ってきますので、、
いや、いいんだよお椀は、そこにある皿を包んで
そのお皿は重う御座いますので、お椀のほうが綺麗で軽う御座います。
重さは関係ないんだよ、そこにあるんだからこの皿を持たせてくれたら良いよ。
それは駄目なんで御座います
なんで駄目なんだよ。良いだろこんな汚い皿。
お客様には汚い皿に見えるかもしれませんが、こちらは高麗の梅鉢と申しまして、
五枚一組あれば大変な価値が御座いますが一枚でも二百両はくだらない品物で御座います。
はぁ??こ、こ、高麗の、、二百、、、、
これがか、そんなわけないだろ??
嘘では御座いません、これはちゃんと調べて頂いております。
し、調べてもらってるの??(このじじい知ってやがるんだ)
来るなよこっちに、懐くなよ、もうお前に要はねぇんだから!
おい、なんでそんな高価なもので猫に飯を食わしてるんだ?
あぁそれで御座いますが、このお皿で猫に飯を食わしておきますと
どういう訳か、時々猫が三両で売れるんで御座います。
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