おう、おはよう
どうも昨晩は厄介になりまして有難うございます。
なぁに、またこっちに来たらね六部さん泊めるよ
私はさんざん親に不幸をさせたからお前さん方の面倒を見るんだよ
来たら泊まってご飯でも食べて行っておくれ
どうも有難うございます。
しかし六部さんは方々歩いているから珍しい者を見やしないかね
私の方見世物をやっていてね
でも最近のお客は見世物が見慣れてしまって刺激が足りないんだ
左様でございますな
あまり在りませんなぁ
なんか無いかな
私はね、ネタが欲しいんだ
こういう者が在るって聞いたらそこに行って人間を買って来て
動物でもいいんだ
足がないのに駆け出すとか、臍でものを食べるとか
変わってれば見世物になるんだよ
さぁあまりそういう者はみませんな
方々歩いているんだから何か無いのか
ありませんなぁ
お前だってうちに泊まるんじゃないか
私の方はお前を泊める義理は無いよ
けどうちに泊めるんだから
そう言われましても
そうか無ければしょうがないね
え?あぁお茶なんか入れなくってもいいよ
御飯もいいんだ帰ってもらうんだから
そう御腹立ちでは困ります
そう言えばこんなことが御座いましてな
どんなこと?
ちょっと凄いことで
そうかい
お茶を早く入れな
御飯はまだ用意できないのか?
どういう事なんだい?
私が江戸から東へ三日ばかり参りまして日が暮れてしまい
宿をとることが出来ないと思って居りました
ある森の中へ入って一服吸って居ましたら後ろの方から
「おじさん、おじさん」と声がしました
何だろうと思ってひょいっと振り返ってみますと五歳か六歳くらいの女の子
傍にかけて来たからかわいい子だなと思い顔を見ますと
一つ眼なんです
真ん中に眼が一つしかない
・
私はゾォーっとしましてそこを夢中になって駆け出してようやく町に出まして
宿を取りましたが当分の間は一つ眼の女の子の顔が眼に焼き付いて離れなかった
寝てもうなされてしまう始末でして
おぉ!!一つ眼か!良いね!
見世物にするといい金になるな
江戸から東へ三日行くと森になるのか
・
ちょっと幾らか包んでこの六部さんへお渡しな
またこっちに来たら寄んなさいよ
いつでも世話しますからね
支度をしまして六部さんが言った通り江戸から東へ東へ三日ばかり歩きましたが
一つ眼の子供に出会わない
あの六部のやろう
人が怒ったものだから出鱈眼を言いやがったな
三日も歩いたのに全然合わないじゃないか
あぁ損したな
・
・
あれ、あそこに森が在る
おじさん、、、おじさん
振り返ってみると五歳か六歳くらいの女の子がいました
良く顔を見ると眼が一つしかない
あっ!っと思い飛びついて駆け出すと
女の子が声の限り泣き出した
急いで駆け出すとブーっと法螺の音がする
お百姓たちは鍬(くわ)をもって「この人さらいめ!!!」
道が不案内であっという間につかまってしまった
不定野郎だ!こん畜生め!
ぼこぼこにされた挙句縛られてしまった
奉行所にて調べという事になる
おい、その方は小国はどこだ?
貴様はなぜ子供を黙ってさらう
さらわれた親の心配は一通りではない
子供が欲しいなら親に訳を言ってもらわないんだ
不届き至極な奴め
申し訳ございません
顔を上げて見たらお奉行は一つ眼
(おや、お奉行だけでなくまわりの家来もみんな一つ眼だ
一つ眼ばかりだな、、一つ眼の国だ)
面を上げろ
へい
うん??!!
こやつは眼が二つある!
おい眼が二つあるぞ!みんな見ろ!珍しいな
余りに珍しいから調べは後回しにしてこの方を見世物にだそう
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