確定申告で所得税が軽減できたとしても、住民税ではかえって負担増に繋がり、住民税を元にする介護保険料等の負担増を招きかねません!
昨年までは、「住民税不申告制度」によって住民税では確定申告と異なる課税方式が選択できましたが、この制度が廃止されたため、住民税は、確定申告と同一課税方式によって算定されることになりました。
このため、株式等の譲渡所得や配当所得の税軽減のための確定申告される場合は、同じ課税方式によって所得が認識されるため住民税等への影響を勘案して課税方式を選択するように留意する必要があります。
1.住民税の「不要申告制度」が廃止されました!
昨年までは株式等運用に関わる節税のための確定申告をした場合、住民税では確定申告と異なる課税方式(総合課税方式か分離課税方式)が選択できたので住民税への影響を気にせずに確定申告ができました。
しかし、昨年の税制改正で、住民税は確定申告と同一の課税方式が適用される事になったため、住民税への影響を考えて所得税の確定申告を行なう必要があります。
2.株取引に伴う確定申告が住民税等では負担増を招く場合があるので注意が必要です!
所得税と住民税では、所得に対する課税の考え方が異なる部分があります。
国税と地方税の背景が異なり、株式等の譲渡所得や配当所得の捉え方に大きな差異があります。
所得税法では、株式等取引で生じた過去の損(=「繰越控除」)でもって本年の利益(譲渡所得+配当所得等)を圧縮して株式等取引に伴う所得税を節減できます。
しかし、住民税では、過去の損による利益圧縮は認められません。
また、住民税での所得を算定基礎とする「介護保険料」や地方行政サービス費などでも、過去の繰越控除との損益通算による利益圧縮は考慮されません。
2)住民税は確定申告で選んだ課税方式で算定される
今年度より住民税は確定申告で選んだ課税方式(総合課税方式か分離課税方式)で算定されることになりました。
3)所得税と住民税の税率の違いに注意が必要!
株式等取引に伴う収益(譲渡所得+配当所得)に対しては、所得税が15%、住民税が5%、復興特別所得税が0.315%の税金がかかります。
一方、給与等の収入には、所得税は、年収650万円までは税率10%、それ以上の年収の場合は税率が高くなる累進税率が適用されますが、住民税は収入に関わらず一律10%の税金がかかります。
4)所得税で節税できても住民税で負担増に繋がる可能性がある
住民税が確定申告と同じ課税方式で算定されるため、確定申告で「分離課税方式」を選択し損益通算によって節税できても、住民税では、分離課税において損益通算のための過去の繰越控除は認識されず本年度の譲渡所得(含む配当所得)のみが認識されることになるため、住民税では税負担が増大することになる場合が出て来る場合があります。
逆に、確定申告で「総合課税方式」を選択して「配当控除」を受ける場合、住民税では、配当所得によって課税対象金額が増えて負担増になる場合が出て来る場合があります。
5)確定申告での課税方式の選択は住民税への影響を考慮して決める事が重要不可欠!
上述の3)のような事が起こり得るため、株式等の譲渡所得や配当所得を確定申告する場合は、住民税への影響(跳ね返り)を見極めて課税方式を選択することが不可欠となります。
このため、ややこしい場合は、e-Taxを利用して、両方の課税方式でどちらが有利かを試算されることをおすすめします。
3.住民税の節減は介護保険料等の節減に繋がる!
確定申告が所得税ばかりでなく住民税の節減に繋がれば、住民税を基に算定される介護保険料等の節減につながります。
但し、 介護保険料の算定においては、過去の損失(繰越控除)との損益通算は認められずに、今年度発生した利益(譲渡所得+配当所得)のみが所得に加算されることにより、かえって介護保険料負担が増す可能性があるので注意が必要です。
4.最後に
所得税と住民税の算定では、株等の譲渡・配当所得等についての捉え方に若干違いがあり、今年度から確定申告で選んだ課税方式が住民税でも適用されることになったため、株等運用の節税で確定申告する場合は、住民税への影響を勘案して課税方式を選択する必要があります。
住民税の算定所得は介護保険等へ用いられるため確定申告での課税方式の選択には注意が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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