まずは、 3大ブラットパック作品から…
『アウトサイダー THE OUTSIDERS』(1983/米)
監督 は『ゴッドファーザー』シリーズの フランシス・フォード・コッポラ。
「そんな…!」と涙をこらえられなかったラスト10分のマット・ディロンの名演が脳裏に焼き付いている。さすがコッポラ監督、夕闇、夜の闇、そしてクライマックスでは闇を照らす炎の描き方が秀逸。少年たちの人生における一瞬のきらめきをが余韻となって胸に残る。
主役 のポニーボーイを演じた ?・トーマス・ハウエルは『トスカニーニ』(88)あたりまでは注目されていたが、いつの間にか消えてしまった。心優しいジョニー役の ラルフ・マッチオも、カンフーボーイ役で一世を風靡した『ベスト・キッド』(84)シリーズのヒット以降は消息不明。
人気に火が点いたマット・ディロン
一方、最も強烈な印象を残すジェームス・ディーン的な雰囲気を持つ不良グループのリーダー格ダラスを演じた マット・ディロンは、この作品以前から同じ原作者の映画化作品に出演して気に入られたりと、名は売れていたが『アウトサイダー』の大ヒットにより青春映画スター、ナンバーワンの地位を確立。その後も数々の青春映画に主演し、ヒット作を生み出した。
ところが89年、20代後半から突然それまでの青春映画路線に別れを告げる。ドラッグ中毒で無謀なことばかりしていたツッパリあがりの青年が改心する 『ドラッグストア・カウボーイ』(89)への出演により、まるで映画の主人公とリンクするかのように青春スターから大人の性格俳優への鮮やかな転身で高い評価を得る。
その後『死の接吻』『シングルス』『最高の恋人』といったメジャーではないが質の高い作品を選び『誘う女』(95)『アルビノ・アリゲーター』(97)『メリーに首ったけ』(98)など強い印象を残す脇役をこなし、 『クラッシュ』(04)では助演男優賞にノミネートされるなど、常に気になる俳優としての地位を守り続け、2007年に主演した『酔いどれ詩人になる前に』でついに主演級俳優として完全復活。昔からのファンを喜ばせた(ちなみに私もそのひとりである)。
ブラットパッカー勢揃い
またポニーボーイの兄役で パトリック・スウェイジ(『ゴースト』)と ロブ・ロー(『栄光のエンブレム』)が、グリースの仲間として エミリオ・エステベスと トム・クルーズが、更にチェリー役で ダイアン・レイン(『トスカーナの休日』)が脇を固めており、彼らもまとめてブラットパックとみなされた。
日本版チラシでは、 ♪ YAスター大結集/今、時代は熱くダイナミックに突っ走る!♪ という、今見るとちょっと笑えるキャッチコピーが付いているように、主なブラットパッカーが総出演しているので、 ブラットパック入門として絶対に見ておくべき一本 だ。
【胸キュンポイント】
少年たちのマドンナ、チェリーへの恋心よりも、逃亡する3人の少年及びグリースの仲間たちの絆に胸が切なくなる。ワルぶっていても、友達を想う気持ちは人一倍強い彼らの友情、そしてラストのダラス(マット・ディロン)の衝撃的な行動には涙が止まらない〜
『セントエルモス・ファイヤー St Elmo’s Fire』(1985/米)
監督 は『バットマン・フォーエバー』(95)『オペラ座の怪人』(04)の ジョエル・シュマッカー。
名門大学を卒業した仲間である7人の男女が社会に出て人生の壁にぶつかる姿を描いたこの作品は、鈴木保奈美、唐沢寿明主演のトレンディ・ドラマ「愛という名のもとに」の原点として有名。
男性陣では『アウトサイダー』に続き出演の ロブ・ローと エミリオ・エステベスのほかに『マネキン』(87)の アンドリュー・マッカーシーと ジャド・ネルソン。
無個性の個性、アンドリュー・マッカーシー
出演作のほとんどが青春映画というアンドリューは、数多くいるバックパッカーの中で「個性のないのが彼の個性」といわれるような目立たない俳優だったが、シャイな眼差しとどこか寂し気なたたずまいがキュートで私の一番のお気に入りだった。しかし、マット・ディロンとは対照的に青春映画から脱却できずに90年代に入り徐々に主演作が減り、98年以降ほとんど映画界から姿を消したと思われていたが、2008年テレビの『リップスティック・ジャングル』への出演で中堅俳優の座を確保し続けていたことが判明。ファンとしては嬉しい発見だった。
大ブレイク前のデミ・ムーア
女性陣ではなんといってもこの作品の5年後に『ゴースト』で大ブレイクする デミ・ムーア。この作品の中では強そうに見えて実は脆い少し危なっかしい女性を演じていて、追い詰められて部屋に閉じこもり、凍えている姿が印象的。彼女の「ほんの20年しか生きていないのに、なんでこんなに苦しいの?」というセリフは私の名台詞ベスト10に入るだろう。
そして『ショート・サーキット(86)』の アリー・シーディと メア・ウィニンガムの合計7人の男女が、仲間内での恋愛や仕事、人生の悩みなどに立ち向かい何とか乗り越えて友情をつなげていくという、青春群像劇の代表のようなこのヒット作は、80年代バリバリのファッションだったりするけれど、確かに 永遠の青春を描いた普及の名作だといえる。
個人的には何かあれば「St,Elmo’s Fire」というカフェに集まる仲間がいる、というのがとても羨ましい。自分に似たキャラを見つけることで「悩むのが青春の特権だったあの頃」を懐かしんでみては?
【胸キュンポイント】
感情に正直な若者たちの中でも、恋心をひた隠しにしているアンドリュー・マッカーシー。彼の切羽詰まった告白にノックアウトされました、私
デミとセクシー・ロブの友達以上恋人未満的なナチュラルな関係にも憧れます。そして、大丈夫なフリをしてつっぱっているデミが、やっぱり可愛い
『ブレックファスト・クラブ The Breakfast Club』(1985/米)
監督 はブラットパック映画の火付け役、 ジョン・ヒューズ。
エミリオ・エステベス、アリー・シーディ、ジャド・ネルソンの3人が『セントエルモス・ファイヤー』にも出演しているが、それぞれ全く違う役柄で面白い。あちらが大学卒業後の仲間を描いたのに対し、こちらはある一日を通して仲間になる高校生を学校を舞台に描く。
80年代のアメリカの高校生 ってこんな感じだったのね〜、と彼らのファッションや態度から、アメリカのハイスクール・ライフが想像できて興味深い。何だか急に大人へと成長してしまったかのような高校生たちの青春が、密度の濃い一日にギュッと凝縮して描かれているところも、ジョン・ヒューズ監督ならでは。
環境も個性もバラバラの5人に芽生える友情と恋が等身大で描かれ、学校モノの中では群を抜いている。何だかキャストのプロモーションビデオのようなサービスショットが満載。軽いノリとジョークのようなユーモラスな会話が楽しい。コメディチックなドタバタの中にホロリとさせるエピソードが混ぜてあり、引き込まれる。
この人もブラットパッカー
トレードマークとなるピンクを着こなすお嬢様役の モリー・リングウォルドが可愛らしい。若い女の子にとっては当時のアイコン的存在。彼女の『プリティ・イン・ピンク』は一斉を風靡した。
また、3大ブラットパック映画全てに出演している筋金入りのブラットパッカー、 エミリオ・エステベスは『地獄の黙示録』のマイケル・シーンの息子であり『プラトーン』のチャーリー・シーンの兄でもある。
【胸キュンポイント】
何といっても彼らが見せるノリノリのダンス!時代を感じさせるフリに、思わず吹き出してしまうこと請け合いでも、弾ける若さがとってもまぶしくて胸キュン。モリ—の「どんだけブローしたの?」と聞きたくなるようなフワフワの髪にも胸キュン。青春真っただ中ゆえに素直になれないもどかしい恋にも胸キュン
★次回は、ブラットパック映画の牽引役ともいえるジョン・ヒューズ監督のその他の作品を紹介します。
『ブラットパック全盛期を作り上げたジョン・ヒューズ作品』は こちら へ。
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