政府はすでに、米製薬企業のファイザーと独バイオベンチャーのビオンテックが開発中のワクチンについても1億2000万回分の供給を受けることで合意している。アストラゼネカが開発中のワクチンと合わせると、2億4000万回分のワクチンを確保したことになる。
米バイオ企業のノババックスも、開発中のワクチン「NVX—CoV2373」の日本への供給に向けて武田薬品工業と提携した。武田薬品は、同ワクチンの承認申請や製造、流通を担う。厚生労働省から約300億円の助成を受けてノババックスから技術移転や生産設備の整備を進め、年間2億5000万回分以上の生産能力を構築する見込みだ。
—核酸ワクチンに注目が集まる理由は。
「従来のワクチンより安全性が高い可能性があるのが一因だ。生ワクチンや不活化ワクチンの場合、元のウイルスに感染してしまう懸念がある。こうした有害事象を防ぐため厳しく安全性評価を行うが、新型コロナワクチンは開発の緊急性が高く、時間や人が足りない。核酸ワクチンは細胞内で新型コロナのたんぱく質が作られて抗体ができる仕組みなので、接種しても新型コロナ感染症にかかる心配がない。安全性の高さから、迅速な開発が可能な核酸ワクチンが選ばれているのではないか」
—核酸ワクチンの弱点はありますか。
「感染過程を再現できないことだ。核酸ワクチンの場合、細胞内で自分以外のたんぱく質が作られるという現象の再現はできるが、体内に侵入した異物に対する免疫応答は起きない。核酸を打ち込む技術は以前からあったが、体内への侵入を再現できず免疫の誘導が不十分で有効性が低いといった課題があった」
—ワクチンによる有害事象の懸念は。
「ADE(抗体依存性感染増強)の懸念が大きい。ADEとは、ウイルスを中和できない抗体がウイルスにくっついてしまうことによって免疫細胞の中でウイルスが増え、感染が広がる現象だ。同じコロナウイルスの重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発も、ADEによって頓挫している。ADEを抑えられるような抗体を作る工夫が必要だ」
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image